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ママ友の執拗なダメ出し、夫への不穏な通知…もしかして不倫?!【わたしの糸をたぐりよせて 第5話】

  • 2020.1.22
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前回からのあらすじ
幼稚園のママ友に誘われたお茶会は家チェックの場だった! さらにクラス委員長からの提案がさらなるLINE通知を加速していく…。そんなある日、幼稚園を休んだ友里は買い物中、背後に気配を感じるが…。
「幼稚園ママの詮索についていけない…夫があきれるママ友つきあい」

●登場人物●
友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友。

※このお話はフィクションです


■もしかしたら外出先をチェックされていた!?

家に帰ってひと息ついていると、カオルさんからグループLINEのほうにメッセージが来ていることに気がついた。

『今日、幼稚園休んだんだって? 朝見かけなかったから心配になったけど、なんかあった?』

予防接種のことは園に伝えてあるから別に問題ないはず。そう思ってありのままを伝えてみた。そうしたら…。

『あのさー、幼稚園とはいえ学校なんだよ。自分の都合で休んじゃダメだよ。土曜日混むからとかどうせそんな理由で平日に予約入れたんだろうけど、それは我慢しなきゃ』

私はドキッとした。

『そうですよ。先生だって内心快く思ってないかもしれないですよね。それに、帰りに買い物なんてしてたらあんまりいい気持ちしてないと思いますよ』

そう追い打ちをかけてきたのは、先日のお茶会で突然お邪魔させてもらったママさん。
たしかに、そう言わればそうかもしれない。

先生は、いいですよなんて言っていたけれど、あからさまに反対できる理由でもない。私は、グループLINEのなかで、以後気をつけますと送信した。

翌朝、またいつものように悠斗を幼稚園に送り届けると、カオルさんが背後から話しかけてきた。

「ちょっとあんたに話したいことがあるんだよね。いろいろ問題が起きないうちに伝えた方がいいって思ってさ。立ち話になるけどいい?」

少しならと言って、カオルさんに連れられた公園には、マキちゃん以外のこの間のお茶会メンバーがそろっていた。


「あんたさ、建前と本音の区別、ついてる?」

カオルさんに指摘され、私は口ごもってしまった。たしかに、相手の言葉を額面通りに受け止めてしまうところはある。短絡的な思考を自覚しつつも、苦手なところに目を背けている部分はあった。

「幼稚園としては、『親の都合で休んでも構わない』って言ってるけど、それは建前でしょう? 本音では、休んでくれるなってこと。そんなことも理解できないの?」

私はいくつもの冷たい視線に晒され、何も反論できないまま、ただただカオルさんから幼稚園で過ごす上でのルールや「母親とは」という理想論にうなづくしかできなかった。

結局、解放されたのは迎えの時間ぎりぎり……。

こんなことがあってからというもの、私は次第に周りの顔色をうかがうようになってしまった。

そうして、フルに幼稚園に預ける日々が始まったけれど、何かしら理由をつけられ、カオルさんたちに呼び出されては愛想笑いでダメ出しを受けるなんてことを繰り返すようになっていった。



■夫のスマホに現れた不穏なメッセージ

ある日の夜。
悠斗を寝かしつけたあと、缶チューハイ片手に亮の帰りを待っていた。

(ここのところ、ちょっと帰り遅いよね……どうしたんだろ)
と、思っていたらちょうどよく玄関のドアが開いた。

「ただいま~。今日は飯食ってきたからいらない。お風呂沸いてる?」

そう言って、亮はスマホを無造作にテーブルの上に置くと、そそくさとお風呂に入っていく。

(ごはん食べてくるならそう言ってくれればいいのに……)
用意してある食事を片づけようと席を立った途端、亮のスマホの画面が光った。


『先輩、今日はお食事ご一緒できてよかったです☆また今度……』

(なんなの……これ? 、もしかして……)

動揺しているところに、亮がお風呂から上がってきた。

「ねえ、ビール出してくれない?」

私は、いま見たことを切り出すわけにいかず、悶々とした気分が拭えない。


■夫と入れ替わりに目の前に現れたのは…

――朝起きると、亮がベッドにいなかった。

あれ? と思い、リビングのカレンダーを見ると「大阪出張」と書かれてある。

(昨日まで書かれてなかったのに……)
悶々とした気分のまま、私は悠斗を幼稚園に送り届ける。

悠斗は「あのね、きょうもひまりちゃんとあそぶんだよ~」と、上機嫌。

「そっか~、よかったね」と私は話を合わせるけど、心のなかはまるで、ポケットに入れたまま洗濯してしまったハンカチみたいにぐちゃぐちゃだ。アイロンを使ってもどうしてもこのしわは消えそうにない。

カオルさんと目が合う。
彼女が満面の笑みで近づき、まさに口を開こうとした瞬間、私のスマホが鳴った。

慌てて電話を取ると、亮からだった。

「ごめーん、悠斗送って行ったばかりだと思うんだけど、リビングに封筒忘れたんだ。今日、大阪出張で使うやつなんだよね。あと1時間は駅で待てるから、悪いけど届けてくれない?」

私はあいさつもそこそこに慌てて自転車に乗り自宅へ戻った。
駅の新幹線口には、亮が困った表情を浮かべて立っていた。

「ごめん、遅くなって」

私は亮に封筒を手渡す。

「助かったぁ……ありがと。それじゃ」

と亮があっさりと封筒を受け取りホームに行こうとしたので、慌てて私も入場券を買って新幹線を待つことにした。だって昨日のことをまだ聞き出せていないから……。

春の空気は、まだまだ冷たいときがある。のぞみが通過するたびに、びゅううっと風が吹いて、薄手の服ではまだまだ鳥肌が立ちそうだ。

しかも、そのたびに話は遮られ、何を話せばいいのかわからなくなる。

「なんだよ、友里」

「……」

亮が乗るひかりが着いた。
ドアが開くと、次々と人が下りてくる。

「じゃ、見送りありがと。行ってくるね」と言いながら亮が乗り込むとき、鮮やかな色彩の服に身を包み、柔らかなフローラルの香りをまとった男の人とすれ違う。


そして、新幹線は、発車ベルとともにホームを離れた。

「行っちゃった」

私が、踵を返したそのとき、さっきすれ違った男の人と目が合った。

「……あれ? ねえ、友里ちゃんだよね!!」

その言葉に思わず私は立ち止まって、彼の顔を見た。
まじまじと見ると、急に懐かしさが込み上げる。

「あ……もしかして、イナガキ君? 久しぶり」

――小学校6年間、高校3年間をともに過ごした友だちと、こんなタイミングで再会するなんて思ってもみなかった。

込み上げる思いを抑えつつ、しばらく心地良い会話を交わした。まだ春のはずなのに、どうしてだか澄み切ったセルリアンブルーの青空が広がったような気がした。あの日、たしかにすぐ隣にあった青い糸で結んだ絆を密かに感じながら。
次回更新は2月4日(火)を予定しています。
イラスト・ぺぷり

(宇野未悠)

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