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相続税の基礎控除とは?《事例別》計算方法&をFPが徹底解説します

  • 2020.1.18
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日本の高齢化が進む中、将来の相続について考える方も増えているのではないでしょうか。相続対策を考えるにあたって非常に重要な位置づけとなるのが相続税です。

相続税はすべての人に課税される税金ではなく、基礎控除額を上回った場合にだけ課税されます。そこで本記事では、相続税の基礎控除の計算方法や相続税申告に関連する基礎知識について詳しく掘り下げていきたいと思います。

相続税とは?

相続税とは相続等によって取得する財産に対して課税される税金で、亡くなられた方が持っていたあらゆる財産について課税の対象となります。

具体的には、土地や建物などの不動産や現金、貯金、株式、投資信託、仮想通過、金、ゴルフ会員権など資産としてプラスになるものはもちろんですが、故人が残した借金についても相続の対象となるため注意が必要です。

マイナスの財産を忘れる人が多い

相続が発生した人から相談を受けた際に、「遺産はそんなに多くないので、調べるのは簡単です」という人がいます。ですが、プラスとなる資産については比較的楽に調べてまとめることができるのですが、借金については書類がちゃんと残っていないと相続人でも気が付かないことがよくあります。

マイナスの財産を見落とすと、本来払う必要のない相続税を支払ってしまうこともあり得るのです。また、あまりにも借金の方が多く残っている場合については、相続するのではなくて相続をしないという手続きである相続放棄

相続放棄は相続が開始してから3ヶ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをしなければならず、そういった手続きをしないまま3ヶ月以上経過してしまうと相続によって借金を背負うことになってしまうため注意しましょう。

相続税の基礎控除額とは?

相続税の基礎控除の額とは、相続税が課税される金額から差し引くことができる金額のことで、原則としてすべての相続人について適用ができる相続税の控除制度の1つです。

冒頭で相続税はすべての人に対して課税される税金ではないと言いましたが、これは相続する資産の合計が基礎控除の金額を超えなければ相続税が課税されないことによります。

相続税申告が必要なケース

基礎控除以下の資産を相続するのであれば相続税は非課税ですが、相続税申告もしなくていいのかというと必ずそうとは限りません。

相続税がかからない場合でも配偶者の相続税負担が軽くなる配偶者の税額軽減や、亡くなられた人が住んでいた家の建っている土地の評価額が80%オフになる小規模宅地等の特例といった各種特例制度を使うことで基礎控除額を下回るという場合については、たとえ相続税がかからなかったとしても、相続税申告だけはしなければならないのです。

このことを知らずに「うちは相続税がかからないから」と高を括っていると、相続税申告期限が過ぎてしまい、おまけに特例も使えなくなるといった状況に陥る可能性がありますので注意しましょう。

相続税の基礎控除の計算方法

相続税の基礎控除額は次の計算式に当てはめて算出します。

  • 相続税の基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数

例えば、妻と子供3人が相続人となる場合、基礎控除の金額は4,800万円となります。

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改正でどのくらい控除される金額が減ったの?

ちなみに、平成27年に法改正がされるまでについては以下の計算式でした。

  • 改正前の相続税の基礎控除の金額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数

先ほどと同じ条件で計算すると8,000万円となり、法改正によって基礎控除の金額がかなり縮小されたことがわかります。

これによって、今までは課税される資産が基礎控除の範囲に納まっていたために相続税とは縁がなかったご家庭についても、半分近くまで基礎控除が減額されたことによって課税されるようになったのです。

計算に含められる法定相続人の人数とは

計算式を見ると分かる通り、相続税の基礎控除の金額は法定相続人の人数1人あたり600万円増えます。法定相続人は民法で優先順位が次のように決まっています。

配偶者相続人

亡くなった人の配偶者が存命の場合は、必ず法定相続人となります。

血族相続人

配偶者以外の親族については、次の優先順位に従って法定相続人となります。

  • 第一順位:子、(代襲相続の場合は孫)
  • 第二順位:直系尊属(父母、祖父母)
  • 第三順位:兄弟姉妹

このように法定相続人となる人と優先順位は民法によって決められているのですが、相続税の節税対策を考える人の中には、ある方法で基礎控除を増やそうとする人がいるのです。

養子縁組で基礎控除を増やす

第一順位の子というのは、亡くなられた人と血のつながりがある実子だけでなく養子縁組して実子になった子についても該当します。普通養子縁組は最寄りの役所で比較的簡単に手続きができることから、子がいるにもかかわらず孫と養子縁組して法定相続人を増やすという技を使う人がいるのです。

確かに法定相続人が増えれば基礎控除も増えるのですが、これには大きなリスクがあるため注意が必要です。

計算に含める養子には制限がある 基礎控除の計算で法定相続人に含めて計算できる養子には、次のような制限が規定されています。

  • 実子がいる場合は1人まで
  • 実子がいない場合は2人まで

ですので、最大でも2人までしか効果がないので、そのためだけに養子縁組することは決してオススメできません。

バレると節税できない 税務署側は基本的に節税目的の養子縁組を認めていません。

そのため先ほどの制限の範囲内の養子だとしても、例えば遺産分割において養子に一切財産を相続させないなど、養子縁組をした理由に疑問が生じるような状況が発生すると、「節税目的で養子縁組してますよね」という指摘を受けることとなり、税務署長の権限で養子の人数を1人残らず基礎控除の計算式から除外されてしまう可能性があるのです。

このことは相続税法第63条に規定されており、不当減少養子といいます。

また、本人は節税対策目的で養子縁組したとしても、法律的には正式な法定相続人であり遺産を相続することができるため、場合によっては養子縁組したことによって遺産分割が大揉めになってしまうこともあります。よって、養子縁組は絶対に節税対策で使わないようにしましょう。

相続税の申告期限について

相続税は死亡を知った日の翌日から考えて10ヶ月で申告期限となります。例えば2020年1月10日に亡くなられた場合、その日のうちに相続人が死亡を知ったとすると相続税の申告の期限は2020年11月10日となります。

ちなみに、最終日が土日祝日にかかる場合については翌平日扱いになり、仮に2020年11月10日が土曜日であれば2020年11月12日月曜日が申告の期限です。

死亡を知った日の翌日からスタート

相続税の申告期限で間違いやすいのが、どこから申告の期限のカウントダウンがスタートするのかという点です。

死亡を知った日であり、死亡した日ではないので、例えば相続人が海外に住んでいて親が死亡したにも関わらずなかなか連絡が取れず、最終的に1カ月後に死亡の事実を知った場合についてはそこから10ヶ月のカウントダウンがスタートします。

期限はあっという間にやってくる

期限まで10ヶ月もあると思うかもしれませんが、実際のところそんなに余裕のあるスケジュールではありません。というのも、家族の誰かが亡くなると相続手続きは二の次でまずは葬儀の手配、火葬場の手配、埋葬の手配などやらなければならないことがほかにたくさんあります。

その後もおおむね四十九日の法要が終わるくらいまでは、相続手続きに着手することすら難しいでしょう。

遺産分割協議を先に終わらせる必要がある

相続税申告の流れの中で最も障壁となるのが遺産分割協議です。相続税はたとえ同じ金額の資産だったとしても、誰が、どのように、いくら相続するのかによって課税される相続税の税額が違ってきます。

しかも、相続税は原則として相続人全員で相続税を計算したうえで、それぞれが相続する割合に従って按分して税金を納めるので、遺産分割協議が終わらないと相続税が計算できず相続税申告もできないのです。

とはいえ遺産分割協議は揉めることが多く、調停や裁判になると何年、何十年という長期間にわたることもあります。

どうしても相続税申告に間に合わない場合

遺産分割協議が終わらないからといって相続税の申告期限を延長してくれるわけではありません。

たとえ相続人の間でひどく揉めているような場合でも、相続税の申告期限は絶対に守らなければならず、期限に1日でも遅れてしまうと次のようなペナルティが課せられます。

  • 無申告加算税:自主的に申告した場合は5%、税務調査が入ってから申告した場合は15%
  • 延滞税:2019年は年2.6%(税率は年によって異なります。)

さらに、先ほどご紹介した配偶者控除や小規模宅地の特例なども使えなくなってしまいます。

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未分割申告をする

遺産分割が終わらないまま申告期限が迫ってきてしまった場合については、未分割申告という方法で相続税申告をする必要があります。

未分割申告とは、遺産分割の協議がまとまらないので、とりあえず民法で決められている法定相続分に合わせて相続したと仮定して相続税を計算し申告するやり方です。

未分割申告をするには相続税申告書を提出するにあたって、申告後3年以内の分割見込書という書類も一緒に添付して申告します。未分割申告で申告しておけば、無申告加算税や延滞税は課税されません。

ただし、未分割申告の場合は配偶者控除や小規模宅地等の特例といった相続税を低く抑える特例制度が使えないため注意が必要です。

これらの軽減制度は本来相続税を大幅に減額することができる制度なので、一切適用できないとなるとかなりの金額の相続税を一旦納税しなければならなくなります。

ですので、できることなら申告期限までに遺産分割を終わらせて、特例を適用したうえで通常の相続税を納税したほうがよいでしょう。

更正の請求で相続税が戻ってくる

未分割申告をすると高額な相続税が発生しますが、遺産分割が終わってから分割内容に合わせてもう一度相続税申告をすることで、多く納税しすぎている分の税金を返してもらうことが可能です。この手続のことを更正の請求といいます。

申告をやり直すことを修正申告という人がいますが、修正申告は申告漏れなど少なく納税しているものを正すことで、税金を払いすぎている場合にするのは更正の請求というのです。

実は相続税申告をした人の中には、計算ミスや評価額の判断ミスなどによって通常よりも多く相続税を納めすぎてしまっている人が結構います。

そのため、相続税の取り扱い件数が多い税理士の中には、相続税の還付である更正の請求をメインとするセカンドオピニオンを大々的に宣伝してやっているケースもあるくらいです。

遺言書があると相続税申告がスムーズ

遺産分割が終わらないせいで未分割申告をせざるをえないケースが多いですが、遺言書が残されていればそのような心配も無くなります。

というのも、法律に従った遺言書が残されていれば遺言書に書いてある通りに遺産分割をすればよいので、遺産分割の協議を相続人全員でする必要がなくなるのです。

相続税申告をする際の添付書類についても、遺産分割協議書は不要になり家庭裁判所で検認した遺言書をもって代用することができます。

遺言書というと相続発生後の揉め事を防ぐというイメージがあるかもしれませんが、相続税申告においても手続きがとてもスムーズになるので効果的です。

相続税の基礎控除に関するまとめ

相続税の基礎控除額の計算方法はとても簡単ですが、法定相続人となる人が誰なのかを勘違いしていると大変です。相続人が1人違うと600万円も変わってきてしまうので、計算する際にはまず誰が法定相続人なのかを入念に確認してからにしましょう。

また、相続税の申告期限は10ヶ月しかありませんので、相続が開始したらできるだけ早く手続きに着手することをお勧めします。万が一期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが重いので十分注意が必要です。

特に不動産や株式など評価額の計算が必要となる資産を相続する場合については、個人の方が自分で相続税申告をするには荷が重すぎるので、できる限り税理士に依頼してやってもらった方がよいでしょう。

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