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「相続したお金」を自分、子供、孫とどう振り分けるのがベスト?プロが実例をもとに解説!

  • 2020.1.15
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相続したお金の「生きた使い方」とは? 富裕層の顧客を多く抱える税理士が答えます!

遺産相続のプロ、税理士の尾上千晶さんが、実際に担当した相続の実例をもとに、資産のある家庭の遺産相続をどうすべきか?について、解き明かしていく連載企画です。

第一回目は、循環器の開業医の相続ケースから、「残された親から子への、お金のバトンタッチのタイミング」を学びます。

尾上千晶
税理士
(おのうえ ちあき)1966年生まれ東京下町の南千住出身。税理士、行政書士、関連会社2社を所有。医師を顧客とした医療専門会計事務所を経営。税務以外の細かな経営に関するアドバイスだけでなく、実際に雇用される側の話を聞き、女性ならではの思考で忍耐強く問題解決に当たり、担当病院、医院では働きやすい環境が整うと評判に。医師を対象にした資産活用や相続についてだけでなく、小さな組織で起こりがちな人間関係でのトラブルに関する講演多数、自身の会計事務所を女性だけで組織し、完全残業なし9時5時の勤務体制を実現。1人息子はゲームクリエイター。特許関係の仕事の夫1名。女性を守ることが、一族を守り、一族をより栄えさせると、自身を春日の局に例え、言わなければいけない嫌なことまで引き受けることも、クライアントから絶大な信頼を得ている。1月19日に、一般向け相続のセミナーを予定。https://souzoku-sogoseminar.com/

初めまして、尾上千晶税理士事務所の尾上千晶です。病院や医師の方を中心に、税の相談を長年続けてまいりました。

たくさんの富裕層の方の税務を務めさせていただいていると、ご相談内容はお金の相談を超えて、一族の発展のため参謀としての役割も要請されることもあります。ひとりの事業家として人間としても、深みも問われる仕事です。

最近特に感じているのは、「奥様の役割の重さ」です。一族の中心である奥様が、どのように財産の差配をするのか? この判断の選択の仕方で、一族の幸せが大きく変わります。年老いたご両親から、子供やその孫の代までを見通し、どうすればご家族全員の幸せにつながるのか、それは中心にいらっしゃる奥様の判断にかかっている、と言っても過言ではありません。

表面に起きることに惑わされず、一族全員が幸せになるために、どう知恵を働かせるか? この連載が皆様のヒントになれば幸いです。第1回目は、都内に住む70代後半の女性の相続の実例をご紹介します。

【ケース1】医師の夫が突然、遺言状もなく61歳で心臓発作で他界。妻が採った遺産相続の手段とは?

湯呑みセット
税理士・尾上千晶さんが相続の実例と対策を語ります

ご主人は、突然の心臓発作で61歳で亡くなりました。ご主人は、循環器の開業医としてご活躍でしたが、ご長男は医師として大学病院にて勤務中。30代の働き盛りでした。ご夫婦はクリニックで古くからの患者さんへの診察をしつつの、悠々自適な暮らしでした。忙しい中、まだまだ人生を楽しもうとした矢先のことで、遺言状も書いていませんでした。

お葬式が終わり、ふと一息ついた頃、財産相続という段になりました。

お子さんは医師である息子と、嫁いだ娘というふたりがおり、この段階で、どう分割するのか…奥様は悩まれました。

法的には、法定相続分という考え方があり、妻が1/2、長男1/4長女1/4の権利がありますが、あくまでも話し合いで決定できない場合に持ち出される「法定相続分」という分け方のルールであるので、奥様がご存命の時には、奥様の御意向を、子供たちは尊重することが多いです。

資産は、クリニックの建物と敷地、そして自宅。預貯金にも十分余裕があり、息子と娘に分けてしまっても、自宅と預貯金で十分豊かに暮らせそうです。

残されたのは妻、息子1名、娘1名。3人への遺産相続、妻は残された人生のことを考え、まず自分がすべて相続することに

この段階で、奥様は、こう考えました。

「わたしは、今60歳。これからまだあと、何十年も生きるかもしれない。財産を私が持っていれば、周囲の人は、みんな私を大切にしてくれるわよね。もともと主人が頑張ってつくり上げたクリニックは、私も受付にいて、二人三脚で大きくしたのだから、私がつくった財産でもあるのよね。息子のためにも、私がいると応援もできるから」

つまり、すべての財産を持っていれば、子供を育てた時代がもう一度やってくるかのように、子供たちが寄ってきて、患者様も、先生の奥様として大切に遇してくれると考えたのです。

大学病院勤務の息子も、きっと帰ってきて跡継ぎになってくれるに違いない。娘も孫を連れて私の話相手に来てくれるに違いない、だから、財産は、自分がすべて相続するのが当然と。

跡継ぎのひとり息子が病院を継いでくれたが…
親子_1
打ち合わせをする男性と女性

その後、大学病院から帰り、跡を継ぐことになった長男は、まず現在の寒くて暗いクリニックの改装を考えます。暖かい待合室と迅速な検査に対応できるように、医療機器の導入も同時に。しかし、先代から残っていたスタッフ達は、若先生のやり方にひとつひとつ歯向かい、頼みの綱で、運営資金を握っている母親も「昔通りに…」と、新しいことに消極的。今までのやり方を変えようとせず。結果的に患者も減っていきました。

程なく、ご長男は、新たな開業地をご自身で探し、ご自身の信念を反映できる場所で、医院を開業されました。先代の奥様だけではクリニックを運営するのは難しく、閉めることとなりました。

結果的に奥様は、ご自宅で、お一人で暮らしています。

今回のケースからわかる「バトンタッチ」のタイミングの難しさ

相続で、まとまった財産を、妻である奥様が相続することに、ふたりの子供は反対することはほとんどありませんでした。なぜなら、奥様にお金を持たせておくのは、子供たちにとっても利益があるからです。元気なおばあちゃんでいてくれることは、子供にとっては、子供孝行になるからです。

しかし、長い人生の中では、主役を演じる女優だったとしても、ある時点から、上手に、わき役を演じる女優へと変化させて行くのは、人生を楽しむための知恵。

今回ご紹介したケースでは、うまくバトンタッチをすることができず、家族がバラバラになってしまったと言ってもいいでしょう。

資産家の御子息は、常識人でやさしい方が多いようです。仕事もきちんとこなし、十分ひとりでもやっていける能力をお持ちです。

日本の男性の平均寿命は、81歳。女性の平均寿命は、87歳。同級生同士で、結婚したとして、女性が生きたとして、81歳から平均寿命を超えて95歳まで生きて、14年間。

この間に、どれだけの生活費が必要になると思いますか?

どこか具合が悪くなれば、病院のお世話になる可能性はありますが、実は生活費の必要額は年齢とともに減っていくのです。

気にするべきなのは、医療費と、家族の中で暮らせるかどうかなのです。

遺産相続で得たお金の使い方は「自分に必要なお金」と「子供・孫に必要なお金」を分けることが重要

相続の時、まず考えるべきは、ご自身に必要なものと、子供たちや孫たちに必要になるものと分けて考えます。「生きたお金の使い方」という意味です。

例えば、孫まで連れてのちょっと贅沢な海外旅行や、行きたい学校、留学、欲しい資格の勉強など。祖父母が費用を出すことによって、一族みんなが成長することができます。また、孫への教育資金は、贈与の特例制度もあり、税的にもおすすめです。

お金は、たくさん持つよりも、上手に周囲と分け合ってください。 老後、どれだけの金額が必要になるか、どうやって持っておけば安心かは、プロと相談しておくことをおすすめします。

ここが、老後に一番大事な、【家族の中で暮らすこと】への知恵です。

次回は、ワンポイント税務アドバイスを実例を挙げてご説明します。

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