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世界的に有名なヨガ指導者に聞く心の整え方|思考に秘められたパワー

  • 2020.1.8
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瞑想の恩恵とは

私が瞑想から得た最大の恩恵のひとつは、自分のマインドに振り回されなくなったことだ。

ご存知のとおり、マインドは落ち着いたり鎮まることが苦手だ。常に何かを計画し、批判し、心配し、ケンドリック・ラマーのグラミー初受賞はいつだっけ?といった質問に取り憑かれている。

初めて瞑想をして以来、瞑想練習のうち分は思考の嵐が続き、やがてマントラを唱える時間が来て、ほんのわずかな時間だけ静かにリラックスできる、という状態が何年も続いた。自分の過剰な(時には張り詰めた)心のおしゃべりと向き合うのは、ドラゴンと対決するようなものだった。私のドラゴン・マインドが煙や火を噴く間、私はマントラに集中しようとした。自分をつなぎ止めてくれる綱のように思えたのだ。だがドラゴンは数分ごとに綱をすりぬけて、激しくのたうちまわる。なかなか鎮まらず、最後にタイマーのベルが鳴ってようやく苦闘から解放されることもしょっちゅうだった。

思考に秘められたパワー|世界的に有名なティーチャーに聞く心の整え方は
尽きることのない豊穣と愛の女神、ラクシュミー像 photo by David Martinez

マインドへの反応に変化が訪れる

だがしばらくすると、面白いことが起こり始めた。1時間の瞑想セッションのラスト5分までマインドが鎮まらないのは相変わらずだったが、自分の反応が変わってきたのだ。思考が次々に湧き起こっても、あまり真剣に取り合わなくなった。つまり、対処すべき思考を選べるようになったのだ。毎日の瞑想を通じて今に集中する努力を重ねた結果、自分と思考を分けて考えられるようになった。たとえば「私には絶対無理」と自虐的なことを考えると、マインドのほかの部分が騒ぎ出して、こう教えてくれる。「それは単なる思考よ。信じる必要はないわ」ってね。すごいでしょう?マインドの一部がネガティブな思考と距離を置いて観察して、手放すなんて。

たとえ15分でも毎日この練習を続けていれば、自分のマインドの動きや、その荒々しい性質を飼い馴らす方法がわかってくる。どんな思考が自分に害をもたらすのか、愛や明晰さを増幅するのか、あるいはただの雑音なのかを、それぞれ区別できるようになるし、今までマインドに信じ込まされていた無限に続くトリックを見破れるようになる。たとえば、今起きて食べなければ、ルームメイトにマフィンを食べられてしまう、といった思い込みも難なく手放せるようになるだろう!

思考に秘められたパワー|世界的に有名なティーチャーに聞く心の整え方は
「私は集中し、気づき、愛します」 photo by David Martinez

やがて、思考の流れが混乱や否定の渦を巻いていても、自分の中の何かがいつもその渦から抜け出して傍観していることに気づき、本当の自分は思考そのものではなく、むしろそれを見つめる観察者のほうだとわかり始める。そして、自分自身の気づきともっと親密になっていく。

「私は観察者であり、思考ではない」と認識することをゴールとみなす教えもある。内なる観察者への気づきは、人間的、霊的な成長のカギとなる。感情イコール自分ではなく、感情の観察者こそが本当の自分だとわかっていれば、人生に行き詰まってもより自由でいられるだろう。マインドフルネスの実践では、ラマナ・マハルシのような賢者や現代の禅の指導者たちが伝える瞑想を行いながら観察者としての気づきを培う。事実、これらの教えでは、自分自身を体や個性や心ではなく、観察者とみなすことが解放につながるとしている。

しかし、観察者としての気づきはほんの始まりにすぎないという教えもある。タントラ哲学は特に実用的で(私にとっては)わくわくする視点からマインドを考察している。タントラでは、マインドを宇宙意識による完全な創造物とみなしている。宇宙意識はすべての生命に宿る繊細で知的なエネルギーであり、それを神と呼ぶ人々もいる。

タントラの賢者たちは、私たちのマインドは、宇宙に存在すると思われる広大で創造的な知性、つまり宇宙マインドの小宇宙バージョンであると主張する。教本『リコグニション・スートラ』では、宇宙の英知は凝縮のプロセスによって私たちのマインドになると述べられている。つまり、蒸気が凝縮されると水になり、冷えると氷になるのと同じ原理だ。思考は圧縮された状態では固体のように思えるが、融けたり、消えたり、分解されたり、また違う形になったりする。

この観点から言えば、私たちの思考は、意識から飛び散る火花のようなものだ。ある意味、雲のようにつかみどころがない。だが雲が水分を含むのと同じように、思考にはエネルギーがある。そのエネルギーは利用したり、具現化したり、仲良く遊ぶことが可能だ。ネガティブな思考を前向きにしたり、気分や体調をも変えることができる。想像力を使って計画がうまくいくように思い描き、その結果も左右することができる。

思考は想像力そのものだ。意識しようとしまいと、思考が私たちの経験を形づくっている。散在する思考の一つひとつのパワーはわずかでも、それらの思考をとりまとめる方法を知っていれば、そのエネルギーを利用してさらに愛と力に満ちた現実を創り出すことができる。まずは、思考の満ち引きを観察することから始めよう。思考から距離を置く方法がわからなければ、マインドの創造的な潜在能力を利用することはできないからだ。

思考に秘められたパワー|世界的に有名なティーチャーに聞く心の整え方は
カリフォルニア州カーメルバレーの自宅の裏庭でオークツリーに囲まれるサリー・ケンプトン。「私にとって家はパワフルなリトリートスペースのようなもの。だから離れがたいときがあるわ」 photo by David Martinez

マインドが変われば人生は変わる

脳科学者たちは、私たちの多くが習慣的に繰り返すネガティブな思考パターンを、脳の「初期モードネットワーク」と呼んでいる。瞑想は(シロシビンやLSDなどの精神活性成分もそうだが)、そのネットワークを分断し、私たちがマインドと呼ぶ繊細な知性の領域に存在する無限のパワーに触れることを可能にしてくれる。そうなれば、私たちはコントロールの利かない心のおしゃべり(ヴリッティ)に、もはや惑わされなくなるのだ。

ヨガの賢者たちは、はるか昔からこのことに気づいていた。貴重なヴェーダーンタの経典では、こう述べられている。「意識に思考を加えたものはマインドであり、意識から思考を差し引いたものは神である」。この急進的な考えは、19世紀に初めてインドの教えに触れた西洋の思想家たちにも影響を与えた。ラルフ・ウォルドー・エマソンやウィリアム・ジェイムズなどの実用主義の理想主義者たちは想像力の持つ計り知れないパワーを理解し、自分たちの可能性を制限する考えからマインドを解放できれば、人生は劇的に変わると気づいていた。

日課として瞑想で自分の思考を整えれば、人生が変わる可能性はさらに開かれる。

たとえば、毎朝瞑想の間に「私は集中し、気づき、愛します」と意図していると、アファメーションがその日の動作や行動や考え方に影響を及ぼしているとわかるようになる。もちろん忘れることも何度もあるだろうが、しばらくして思い返すと、思考によってマインドの環境が変わっていることに気づくだろう。以前よりも集中力や気づきや愛情が増しているに違いない。

つまり、微細な意識の集まりをより美しい形に整えるのだ。ビジュアライゼーションの力を利用して、自分自身やほかの人に豊かさや成功が訪れるイメージを描いたり、質問を投げてインスピレーションを受け取ることも可能だ。ほかの人に恵みを与え、人々が互いに思いやり地球を慈しむ世界を想像することもできる。

思考の持つ壮大なエネルギーを一度実感すれば、自分の意識によって場の雰囲気や家族、組織、政治分野にさえも変化をもたらす繊細なパワーの使い手になれるだろう。少なくとも1960年代からスポーツ心理学者たちは、完璧なサーブを思い描くテニス選手はそれを実現できる確率が高いことに気づいていた。また私たちも、成功を信じれば達成できる可能性に大きな違いが生まれることを知っている。意識の一部である自分の想像力を巧みに使えるようになれば、この原理を人生のあらゆる面に応用できるようになる。また、その願いがほかの人や世界のためであれば、思考は想像以上のパワーを発揮する。

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ケンプトンはマントラを唱え、恵みを求めながら、献身のムドラとともに瞑想練習を始める。「心がオープンになって、豊かな気持ちで練習を始められるの」 photo by David Martinez

エネルギーの使い手になる

この実践は瞑想とともに行うのが効果的だ。瞑想の最後の5分間を、自分の人生を好転させる意志を育てる時間にあてるといいだろう。地球を癒す光景や、大切な誰かのための祈りでマインドを満たしてみよう。実践を始める前に、まずは少し時間をとって自分が実現したいことを確認しよう。現在形でそれらを書き出したら、これから数週間の間に変化が起こると信じる。

たとえば、私の友人は小さな非営利団体を始めた時、次のように意図した。「私の人生は、愛と親密さと豊かさに満ちています。この町の学校にもっと芸術と音楽とダンスをもたらすために力を貸してくれる大切な友人に囲まれています」。そして友人と私たちは、2017年までに州のすべての公立学校に芸術プログラムを導入できることになった。彼女は2013年にこの意志をノートに書き、すぐにノートをなくしてしまった。その2年後に引き出しの底でノートを発見した彼女は、書き出した意志のすべてが実現していることに気づいた。

もちろん、その結果を出すために彼女は全力を尽くしたが、彼女の意志は単なる心のエクササイズに終わらず、彼女の仕事の方向づけをしてくれたのだ。

そこでおすすめしたいのが次の方法だ。

実践してみよう

座った状態で数分間瞑想をしながら、こんな風に自問しよう。「最高善や自分自身、家族、世界のために、私は何を創りたいだろう?」。思いつくものを書き出し、それを簡潔かつパワフルに言い表せるような意志や祈りを決めたら、瞑想に取り込んでみよう。

まずは普段の練習のように座り、呼吸やマントラなどによって集中した状態に入る。少しの間自分の思考を観察しよう。どのように思考が湧き、消えていくだろうか。これらの思考はエネルギーであり、すべての思考に現実を変える潜在的な力があることを思い出そう。

ここで何かひとつ、シンプルな思考に意識を向けて、自然に消えていくまで追ってみよう。たとえば「愛しています」などのポジティブな思考か、少なくともニュートラルな思考がいいだろう。私はよく、シンプルな「I am」マントラを唱えて集中している。やがて、その言葉やフレーズに集中するうちに、思考が消えた瞬間にわずかな合間ができることに気づくだろう。

次の新しい思考が湧き起こる前の静かな一瞬に意識を集中し、あらかじめ決めておいた意志をここで思い浮かべる。必ず現在形であることを忘れずに。

その意志が完全に実現して満足しながら暮らしている自分を想像しよう。人生が豊かさに満ちている様子や、すべての人々が十分に食べられる世界、自分の娘が行きたがっている学校で新しい友達と楽しく過ごしたりキャンパスを歩く様子を想像しよう。

自分の意志とそれが実現したイメージに集中しながら数回呼吸を行ったら、すべてを手放して呼吸に意識を戻し、鼻腔を出入りする空気の流れを感じてみる。あるいは、意志が消えた後のマインドのスペースを感じながら今ここにいる瞬間を味わう。散在する思考やエネルギーのある思考が消えていくこのスペースは思考の源であり、創造力に満ちている。マインドの中心部は静かでありながら、絶えず何かを生み出している。自分のマインドが秘めている創造力に畏敬の念を抱こう。そして今一度、生来備わっているその潜在力を成長や自己変革、そして世界を癒すために使う意志を固めよう。

思考に秘められたパワー|世界的に有名なティーチャーに聞く心の整え方は
聖なる女性性に捧げる祭壇とシュリヤントラのもとで瞑想をするケンプトン photo by David Martinez

教えてくれたのは…
世界的に有名な瞑想とヨガ哲学の指導者。著書に『Awakening Shakti』がある。

思考に秘められたパワー|世界的に有名なティーチャーに聞く心の整え方は
photo by David Martinez

story by Sally Kempton
photos by David Martinez
hair&make-up by Alayna Sigurdson
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.65掲載

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