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膝の仕組みと負担をかけない動かし方|ためになる解剖学的知識

  • 2019.12.17
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2007年のことだ。私はシャナンドー国立公園内の急な坂道を下っていてうっかり足を滑らせてしまった。左膝の外側を強打して、外側半月板と関節軟骨が粉砕し膝頭が脱臼する大けがを負った。大がかりな部分的関節置換手術を受けることになったのだが、担当した整形外科医の言葉は率直だった。回復には時間と相当な努力が必要だというのだ。また、回復の鍵を握るのは何よりも心掛けだとも言われた。この言葉は、膝を大切に育てるように膝と関わらなければならないことを物語っていた。

私は幸いにも、このけがを負う19年前からヨガを実践していて、毎日欠かさず瞑想を行っていた。手術を受ける前には毎日1時間、膝に愛情と感謝の気持ちを向け続けた。膝の構造を根本的に修復するために手術を2回受けたが、最初の手術の日に車椅子で手術室に入る頃には、膝が体の中で最もいとおしい部分になっていた。私は膝の複雑さと脆弱性を認識して、膝に負担をかけないように動きを微調整できるようになっていた。

体の仕組みを学ぼう|膝を守ろう
photo by Christopher Dougherty,illustrations by Michele Graham

膝は誠意と義務の関節だ。助けや慈悲を求めるときに、私たちはひざまづく。強い信仰心を誓うときにもやはりひざまづく。また、膝は足と股関節から受け取った機械的な力を調整する偉大な仲介役である。膝は良くも悪くも、状況に合わせて動きながら、バランスをとり、衝撃や横に滑る力やねじれのエネルギーを伝えている。膝は蝶番関節と呼ばれることが多いが、この呼び方は膝の全体像を表していない。膝の主な動きは、屈曲(太腿とふくらはぎを寄せ合うように曲げる動き)と伸展(太腿とふくらはぎを遠ざけるように伸ばす動き)であるため、膝は確かに見たところ蝶番に似ている。しかし、膝はほかの蝶番とは少し異なっている。膝は滑るようにも動くし、回転もする。

このために膝は多様な動きに対応することができるが、その分脆弱になる。肘と比べると、膝の可動域の大きさは明白だ。肘を数回、曲げたり伸ばしたりしてみよう。ラップトップコンピュータを開け閉めする動きのように感じられるはずだ。さらに、プランクポーズとチャトランガ(四肢で支える杖のポーズ)を交互に繰り返して肘の動きを観察してみよう。

次に膝の動きを確認しよう。ヴィーラバッドラーサナⅡ(戦士のポーズⅡ)で前の手のひらを前膝の内側にあてて、そこから膝を曲げて(屈曲)、大腿骨の動きを感じながら、膝を前方に滑らせて回転させよう。つまり、膝を前に踏み込む動きだ。そこから膝を伸ばして(伸展)、大腿骨が後方に回転する動きを感じてみよう。膝を下げて内側に入れる動きだ。

安定性を保つためには、大きな筋肉ではなく、腱、靱帯、軟骨、関節包によって膝を支える必要がある。ヨガの立位のポーズの中では、ターダーサナ(山のポーズ)が膝が最も安定するポーズだ。大腿骨下端と脛骨高原(脛骨の最上部)の接する面が最も大きくなるからだ。しかし、膝を「固定」してしまうと話は別だ。無意識にしている人が多いのだが、膝を過度に伸展させると、半月板の前部(図を参照)に過度な圧力がかかり、組織が後方に押されて自然な位置からずれてしまう。

「膝前部」の仕組み

結合組織がどのように膝の動きを助け、体重を支え、緊張に対処しているのか理解して、けがを防ごう。

体の仕組みを学ぼう|膝を守ろう
膝の結合組織/illustrations by Michele Graham
半月板

Cのような形状をしていて、大腿骨と脛骨の間でクッションの働きをしている。また、脛骨高原の厚みを増すことによって膝の安定性を高めている。特に、内側半月板は関節包にしっかり付着していて、横滑りと回転に耐えることができる。左右の膝に半月板が2つずつある。

前十字靭帯

丈夫なバンジーコードのように、脛骨が大腿骨から大幅に滑るのを防いでいる。膝をねじる動きによって過度に伸びたり損傷したりするため、膝の中で最もよく損傷する部分となっている。多くのヨガのポーズによって危険にさらされる部分である。

内側側副靭帯

膝が内側に崩れるのを防いでいる。また、前十字靭帯と共に、脛骨が前方に過度に滑ることを防ぐ働きもしている。通常、サッカーのように激しくぶつかり合ったり、突然方向転換をしたりすると損傷する。ヨガのポ ーズではあまり損傷しないが、膝を曲げた姿勢で体の正中線に合わせようとして膝をゆらすのは避けよう。膝を屈曲しているときは、足の第2指と第3指の間に膝頭を合わせよう。

膝を過度に伸展させずに、「ゆるめて伸ばした状態で」立つ練習をしてみよう。具体的には、両足で立って一方の膝を後方に押す。次に、ふくらはぎの筋肉をすねの骨(脛骨)のほうに安定させる。脚の筋肉が総動員して働いているのを観察しよう。膝の中央に意識を向けると、とても安定感があるはずだ。この動きを何度も練習すると、筋肉に動き方を教え直して、過伸展を矯正できる。また、膝は内側の構造のほうが、大きさも厚さも奥行きも外側の構造を上回っている。

このように解剖学的に対称でないために、ターダーサナ(山のポーズ)やアドームカーシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)のようなポーズで膝頭がやや内側を向くのは自然なことだ。ヨガのレッスンで脚を伸ばすポーズをしているときに、膝頭を正面に向けるよう指示されたことはないだろうか。だが、そうしてはいけない。その動きは膝関節の構造と働きを無視したもので、膝を損傷する恐れがある。膝は曲げているときが最も不安定になる。

ヴィーラバッドラーサナのようなポーズで膝を曲げているときは、大腿骨と脛骨の接触面が小さくなっている。骨の接触面が小さいと、結合組織は引っ張られて脆弱になる。このとき、太腿の前面にある外側広筋が、大腿骨の先端にある溝の中に膝蓋骨(膝頭)を収めておく役目を主に担っている。膝を曲げ伸ばしするときに、膝蓋骨がこの溝の中を滑らかに上下に動いて、てこの支点として効率良く働くのが理想だ。しかし、内側広筋は外側広筋よりはるかに小さい。太腿前面の筋肉(大腿四頭筋)の力が釣り合っていないために、膝頭は外側上方に引っ張られる可能性がある。これによって、歩行から膝を曲げるポーズまであらゆる動きで痛みが引き起こされる。

多くの場合、ランジをしているときにこの問題はいっそう顕著になる。ただし、「大腿四頭筋筋力訓練(quadsetting)」を行えば、筋肉のバランスを改善することができる。行い方はこうだ。

大腿四頭筋筋力訓練のやり方

1.膝の下に丸めたタオルを置き、つま先を天井に向けてダンダーサナ(杖のポーズ)で座り、かかとを押し下げる

2.膝の内側に力を入れながら膝を押し下げる。10〜20秒間保ったら膝をゆるめる。

これを疲れるまで繰り返すとよい。

思い出してほしい。膝は足と股関節の中間にあって、その両方から伝わるエネルギーを吸収している。正常の可動域を越えて膝を回転させたり、屈曲している状態で過大な圧力をかけたりすると、前十字靭帯を損傷するリスクが高まる。このため、いくつかのポーズには特に注意が必要になる。私は一部のポーズはいっさい行っていない。

膝への注意が必要なポーズ

ベカーサナ(蛙のポーズ)

このポーズでは、足の裏を腰の外側に下ろすことによって膝がねじれるため、前十字靭帯と内側半月板に負担がかかる。

ヴィーラーサナ(英雄のポーズ)

両膝を揃えて、足を腰の外側に出して座ると、ほとんどの人は膝が可動域の限界に近づく。そこに回転が加わり、さらに体重も加わるため大きな負担となる。

パドマーサナ(蓮華座)

股関節の可動性が不十分な場合は(個々の解剖学的特徴のために、どうしても必要な可動域が得られない人がいる)、膝が過度にねじれることになる。本来、体を動かすときの主軸となるのは、真の球関節で回転に向いている股関節である。

パサーサナ(輪縄のポーズ)

ハムストリングとふくらはぎに十分な力がないと、重力に負けて膝に必要以上の圧力がかかり、前十字靭帯が損傷する。反対に、前十字靭帯が弛緩すると、膝の力と安定性が損なわれる。以上、避けるべきポーズを列挙したが、次は私が推奨するポーズを下に紹介しよう。これを家で2週間続けて、膝への理解を深めよう。

感謝しよう:膝に両手をおく

膝に両手をおいて愛情の念を送ろう。膝はさまざまな要求を突きつけられて、実によく働いている。膝に感謝しよう!私たちは体の一部が損傷したり、期待どおりに動かないと、失望して悲観しがちだ。しかし、私たちのほうが、その部分を酷使したり無視したりして、その部分を失望させている可能性が高い。感謝をすればこの関係を変えることができる。

理解を深めよう:ダンダーサナ

ダンダーサナで座り、太腿の緊張をゆるめ、膝頭の左右の端をつかんで左右に小刻みに動かしてみよう。次に上下の端を軽くつかんで、ゆっくり上下に滑らせてみる。ここで、太腿の筋肉を働かせよう。膝頭が大腿骨の先端をしっかりつかんでいることを確認しよう。このことから、ポーズで膝を動かすときは可動性に頼らずに筋肉を働かさなければならないことがわかる。

現状を把握しよう:アドームカシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)

健康上問題がなければ、アドームカシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)を行って膝に注目しよう。自然に膝の内側が外側よりも後方に引かれて、膝頭が正面ではなく反対側の脚の膝頭のほうを向いているだろうか。思い出してほしい。それが正常である。

指導…メアリー・リチャーズ
理学修士号取得者、C-IAYT(国際ヨガセラピスト協会認定セラピスト)、E-RYT(全米ヨガアライアンス認定ヨガインストラクター)、YACEP(全米ヨガアライアンス認定継続教育指導者)。約30年間にわたってヨガを行っていて、現在はアメリカ各地で解剖学、生理学、運動学を教えている。筋金入りの運動好きで、大学時代はNCAA(全米大学体育協会)で活躍する選手だった。ヨガ療法で修士号を取得している。

by Mary Richards
photos by Christopher Dougherty
illustrations by Michele Graham
translation by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.67掲載

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