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市原隼人「問い続けながら生きていく」 映画『喝風太郎!!』市原隼人・柴田啓佑監督インタビュー

  • 2019.12.5
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サラリーマン金太郎』などの本宮ひろ志原作の破天荒な僧侶・風太郎の活躍を描く映画『喝風太郎!!』が11月1日(金)より全国公開中。主人公の風太郎を演じた市原隼人、メガホンをとった柴田啓佑監督にお話を伺った。

【写真を見る】 映画『喝風太郎!!』主演の市原隼人

市原隼人主演の『喝風太郎!!』について伺った
KADOKAWA

赤ん坊の頃母親に捨てられ、それ以来ずっと山奥の寺で修行していたが大僧正から下山を命じられた風太郎。初めて降り立った街で詐欺師の健司(藤田富)、インフルエンサーの詩織(工藤綾乃)、会社を辞めたくて仕方がない社畜・高平(近藤芳正)などの個性豊かなキャラクターと出会い、迷える人々に喝を入れて生き方を説く物語。コミカルな描写の中にも『生きる』こととは?というテーマも丁寧に描かれている。

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原作漫画を読んだ市原は「風太郎は、とても人間臭くて、今では珍しいと言えるface to faceで語り合うようなキャラクターです。ネット社会がまだ無い時代の古き良き心を感じさせてくれるようなところがとても好きです」と自身でも気に入っている役なのだという。山寺で培った教えとはズレている世間に気付きながらも教えを説いていく風太郎。市原は「昔だと生まれた時点で主君がいて、それに仕えまっとうして最期を迎えるという時代があり誕生したときから生きる意味付けをされていましたが、今はその生きる意味を自分で探さないといけない。個々が存在意義を見出さなければならない大変な時代だと思います」と話す。時には自分が必要とされていないのではないかという不安が降りかかることもある時代だと語る市原は「でもそんな社会に対して風太郎の説法は押し付けがましいものではないんです。仏法とはもともと自分を問い質す行為。それぞれの困窮しているキャラクターの内面から湧き出たものと己が向き合うことになる。そういった話なんです」と言う。自分がいることによって誰かが幸せになるのでは、救える人がいるのではないかということを今一度考えてほしいと呼びかける。

柴田監督も『縁』について語る
KADOKAWA

柴田監督は原作を映像化する際、各話に存在する主人公を風太郎がどのように解決するかというオムニバス形式の原作をいかに風太郎の物語に落とし込むかということに注力したのだという。「原作では風太郎は海を割ってみせたり、超能力を持っている人物なんです。そこまでいくと問題の解決が簡単に見えてしまって、もっと映画に相応しい決してヒーローではない風太郎という人間の物語に挑戦してみたかったんです」と語る。その風太郎らしさとは「風太郎は山から社会に出てきて、自分自身に問答をしている、そういうキャラクターだと思うんです。人にはいろいろ言っているけど、実際には自分自身に問うている。その問答を経て、風太郎自身も変わっていく物語にしていきたかったんです」と話す。

破天荒な僧侶・風太郎
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事
藤田富演じる詐欺師の健司
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事
工藤綾乃演じるインフルエンサーの詩織
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事

また柴田監督はオムニバスの原作を映画にする際、脚本にするのが難しかったのだと言う。物語の中心として健司、詩織、高平という3人の迷える人間が登場し風太郎が教えを説いていく本作。それぞれが章立てのような構成になっており、その章が複雑に重なって事件が立体的に描かれる演出にも工夫したという。「僕たちはついつい物事を同じ方向から見てしまいがちですが、立場によって見たときの感情が変わってしまうということはよくあることだと思うんです。今流れてるニュースを見ても悪いと言われる人にも何かの事情があるかもしれない。そう考えた時にひとつの視点ではなく別の側面から見るような作りにしたら、世の中の見方も変わっていけるかもしれない」と監督の願望が投影されているのだと語る。

工藤綾乃演じるインフルエンサーの詩織
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事
近藤芳正演じる会社を辞めたくて仕方がない社畜・高平
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事

そのなかでも藤田富演じる健司という詐欺師のキャラクターを膨らませるうちに完成度が高まっていったと語り「原作がオムニバスという形式上、最初はどうしても風太郎の物語にならなかったんです。風太郎が人々を救う理由の決め手が見つからないと言いますか。でも健司のキャラクターが出来上がっていくと同時に風太郎の存在も見えてきたんです」と話す。風太郎と健司、親が不在の両者に兄弟のような繋がりを持たせることができたのだと語った。

そんな藤田富を市原は「撮影中は動きながら、悩みながらセリフを懸命に繰り返す姿を見て自分も学ぶところがありました」と振り返る。柴田監督も「詐欺師という役柄にも関わらず、すごい真面目な役者だった」と感じたのだという。藤田から『ROOKIES』を観ていて市原に憧れていたと打ち明けられたことも話題になった本作。そんな後輩との出会いは市原にとって風太郎が語る『縁(えにし)』を強く感じたと語る。「素直に嬉しい限りです。役者は情熱や思いを形にして『何かを繋げること』だと思っています。そんな自分を見てくれて同じ作品に出演してくれたことが何よりの財産だと思います」と話す。また「自分も尊敬する諸先輩方に教わりながらここまで続けてきました。その気持ちはずっと変わらず先輩の歩いてきた道があるからこそ、敬意を持って役者をさせてもらっています」と謙虚な姿勢を崩さない。そんな先輩と後輩の芝居を見て柴田監督は「でも市原さんは先輩だからといって何かを押し付けたりしないですよ」と撮影していて雰囲気のいい現場だと振り返る。市原は芝居は変化を求めるものではないと話し「みんなやりたくて役者をしていて、その気持ちに沿うから責任感も出てくるんです。その自分から湧き出たものをいかに差し出せるかというのを求められて、それをみんな持ち寄って総合芸術となっていく」そうして監督が求めるものをひとつに戦うようにして高めていくのだと言う。

押し付けがましいものではない風太郎の説法
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事
「あんたの人生だ。生きるのはあんただ」というセリフも印象的
(c) 本宮ひろ志/集英社 (c)2019 株式会社浜友商事

『縁』について柴田監督も「市原さんと藤田さんの話でも感じましたが、やはりすべては『縁』で繋がってると感じますね。僕も漫画が好きで原作を映像化をお願いされるのも縁ですし、主演の市原さんにお願いして出演してもらえるのも御縁ですよね。もちろん縁がなくて繋がらないこともありますが、ひとつひとつを手繰り寄せて作品にしていく。映画に携わってくれた方にはいつも縁を感じています」と述べた。

風太郎が言う「あんたの人生だ。生きるのはあんただ」と言うセリフに象徴されるように『生きる』ことを観客にも投げ掛けてくる本作。柴田監督は「考えることをやめない求めることが生きていくことなのでは」と問う。「自分もそうなっているかもしれないですが、どんどん人間が考えなくなっていくような時代になっているような実感があります。情報に飼い慣らされているような。そうではなく入ってくるものに一度立ち止まって考えることが『生きる』ことの目的が見つかるかもしれません」と話す。

市原も「生きるとは難しいですね」と深く考える。「作り続け、壊し続ける力でしょうか。答えがない現代だからこそ疑問を重ねながら生きていくことが人間の醍醐味なのでは」と言う。「そこには人数分の悩み、疑問、答えがあります。日本では当たり前のことも海外ではタブーだったり、またその逆も然り。テレビ、雑誌、ネットなど僕らを取り巻くメディアは日夜変化してきて、何が正解かは実際には分からないこともある。もう一度自分の力で見極めることも大切ですし、それを頭に入れてその疑問を問い続けて生きていくのも『人間』なのではないでしょうか」と風太郎のように自身に投げかけることを語った。(関西ウォーカー・桜井賢太郎)

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