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会社を辞めて、こうなった。【第12話】 英語がわかり始めた意外なきっかけ。

  • 2015.4.5
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会社を辞めて、こうなった。【第12話】 英語がわかり始めた意外なきっかけ。

37歳、独身、彼氏なし。長年勤めた出版社を退社し、なんの保証もないまま単身サンフランシスコに乗り込んだ女性が、異国の地で繰り広げられる新鮮な毎日を赤裸々にレポートします。

【第12話】英語は英語さ。たとえどれだけひどくったってね。
英語という高い氷山、その一角が崩れ始めたきっかけは意外なものでした。
3日ほど前のことです。先生から私の英作文はどうしても日本語英語(日本語をそのまま直訳して英語にしようとするクセ)が抜けないので、英語の小説や新聞を読むのはひとまずストップ。代わりにドクター・スースという絵本を読めと言われました。辞書を使わずに、英語を楽しむことから再スタートしろというわけです。
これには正直ショックでした。「えっ、私の英語力ってこのレベル?! お父さん、お母さんスミマセン。あなたの娘は、会社を辞めてアメリカで絵本を読んでいます…」と情けないやら悔しいやら、やりきれない思いがしました。
しかしドクター・スースの絵本を開いたとたん、その気持ちは一気に吹っ飛んだのです。

ドクター・スースとは?

ドクター・スースの絵本たち。コワカワイイ絵のタッチです。 ドクター・スースは、アメリカの有名な絵本作家。欧米の人たちはみな、彼の絵本を読んで育つとも言われます。ちなみにこのドクター・スースというのはペンネームで、動物園の飼育員だった父親の「獣医になって欲しい」という思いにちなんだものだとか。本名はセオドア・スース・ガイゼルと言い、ドイツ系アメリカ人です。彼が絵本作家としてのキャリアをスタートしたのは30代半ば、そしてローラ・インガルス・ワイルダー賞やピューリッツァー賞特別賞など名誉ある賞を受賞しています。

読み終えた瞬間に感じたのは、「読者である子どもを子ども扱いしていない!」ということ。例えば私が読んだ『HORTON HEARS A WHO!』(日本語題:ぞうのホートンひとだすけ)。主人公であるホートンという名前の象がほこりの上の小さい小さい人を助けるために奮闘するというストーリです。大きな耳を持つ象のホートンには小さい小さい人の声が聞こえるのですが、他のジャングルの動物たちには聞こえません。そこで、ホートンのことをバカにしたり、嘘つきだと罰を与えたりするんですよね。ここでホートンによる名言が登場します。

(人は人さ。たとえどれだけ小さくったってね。)

「A person’s person, no matter how small.」

深い…。思わず「English ’s English, no matter how terrible.」(英語は英語さ。たとえどれだけひどくったってね。)と、我が身を重ねあわせてみたりして。ちなみにこの文は絵本の中で繰り返し出てきます。彼の文体には遊びがあって、night(ナイト)と flight(フライト)という単語を使って韻を踏むなど、英語の音が持つリズム感を大切にしています。こども版ラップ絵本とでもいいましょうか。複雑な文章を作ろうと背伸びしてデタラメな文を書くよりも、シンプルでも力強く、さらにはアメリカ人らしい言葉を使った文を書くほうがいいんですね。まずは絵本から始めろという先生のアドバイスは正解だなと思いました。

「全部わからなくったっていいや」

元気が欲しいときは、OCEAN BEACHへ行きます。 もうひとつは単語に執着しないということ。TOEFL対策ではとにかく語彙を増やすことが大切だと思っていたのですが、意外とそれは私にとっては有効ではなかったんですね。やっぱり覚えられる英単語の数には限界があるし、覚えたところで正確にその概念を理解出来ているとは限らないもの。文脈によって意味も変わりますし、それを短期間で全部暗記するのはやっぱり無理ですよね。実際、TOEFLでは心理学やら天文学やら日本語で訳したところでもよくわからないような英単語が出てきて、いつもそこで硬直してしまっていたんです。

でも絵本を読み始めてから、わからない単語があってもとりあえずそれを流して、全体の文脈からその単語の意味をguess(推測)することのほうが重要なんだと感じました。さらにサンフランシスコという街は移民の街なので、中国人は中国人の、フランス人はフランス人の、メキシコ人はメキシコ人の、ベトナム人はベトナム人の英語を話します。みんなそれぞれの訛りやクセのある英語を堂々と使っているんですね。「全部わからなくったっていいや」。そう開き直るとTOEFLだけではなく、日常会話の聞き取りもラクになってきました。

「とりあえず話の流れから要点だけつかもう」という感じで。とはいっても会話の中で動詞の時制(現在形、過去形、未来形)だけは最低限正確に使い分ける必要はあります。これを間違えると、全然話が通じなくなってしまいます。

あとはリラックスすることです。例えば今日のリスニングテストでの出来事。CDの中で「ではまた来週」と教授が授業を締めくくるという箇所があったのですが、テストを一緒に受けていたメキシコ人のクラスメイトが「See you!(またね!)」とCD内の教授に返事したんですね。クラス中がシーンとして、必死に内容を聞き取ろうとしているテストの最中にですよ。これには思わず爆笑してしまいました。そして彼を激しくリスペクトしました。「なんだ、この余裕は! なんなんだ、このテストというプレッシャーに飲み込まれず、それを楽しめる強さは!」と。高い点数を取ることはもちろん大事なんですが、それに固執するあまりちっぽけな人間にならないように気をつけようと思いました。TOEFLでハイスコアを取る嫌なヤツより、低い点数でも一緒に居たいなと思われる人でいるほうがよっぽどいいですから。もちろんハイスコアを取りながら、面白い人間でいられることを目指したいですけどね!

なりたい自分を考える。

サーフブランドのパーティーに誘われて。異空間でした。 最後は疲れたら、寝る。これに限ります。私の場合は睡眠時間を削って勉強したところで、翌日全然授業に集中できないことがわかりました。眠いと能率がガクンと下がるんです。そこで、暗くなるまでの時間を効率的に使い、夜はゆったりと過ごすことにしました。“うさぎと亀”方式です。焦らず、マイペースにコツコツと。すでに他のクラスメイトに比べて、十分遅いスタートなんですから。今さら焦ったところで意味がナイ!

こちらで英語の勉強をしていると、自分のことがよく分かります。日本で編集者だったというプライドにしがみついている自分。必死になりすぎると、余裕がなくてちっぽけな人間になってしまう自分。でも逆境に対しては、意外とタフなところがある自分…など。英語の勉強をきっかけに自分の生き方を見つめなおさせてもらっているような気がします。だから、嫌な出来事と良い出来事の両方がありますが、やっぱり思い切ってこちらに来てみてよかったなと思います。

いつも寝る前に「どういう人になりたいのか」と再考するんです。私がなりたいのは、「側にいたら、なんか気持ちいいな」と思われる人。何をやっているかはその次の話です。言ってしまえばそんな人になれたら、何をやっていてもいいんです、正直な話。だからそこを見失わないようにしたいです。

SEE YOU!

左肩、心霊写真じゃありません。クラスメイトと。 【関連記事】

「土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。」まとめPROFILE 土居彩

編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとウォーキング。ラム酒をこよなく愛する。目標は、カリフォルニア大学バークレー校で幸福心理学を学ぶこと。