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子どものレジリエンスには逆効果となるママの行動【“折れない心”の育て方 第3回】

  • 2019.10.16
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落ち込んでも立ち直る力があれば、生きていくのは楽になるはず! そんな心のありようをレジリエンスといいます。

前回までの記事で「レジリエンスを育てるためには、『できたこと』に焦点をあてて褒めることが大切」ということを学びました。けれども、そもそも褒めることが苦手な場合はどうしたらいいですか? 引き続き東京学芸大学教授の藤野博先生にお話しを伺ってきました。

「『どうせムリ…』あきらめがちな子どもが陥っている悪循環とは」
「つまずきやすい子のやる気の引き出し方」
の続きです。


■「褒める」が苦手なママ。それでも必要なワケ



褒めるのが苦手問題、ママの「ある・ある」ですね。

「子どもを褒めるのが苦手というお母さんは多いものです。『できたこと』や『子どもの長所』をいちいち言葉にするのは野暮ったく感じるかもしれませんが、あえて話すようにしてください。一つひとつの言葉が子どもの自己認識を変え、その子の力となっていきます」(藤野先生)

ものすごくザックリいえば、レジリエンスとは、「自分を適正に励ませる力」なのではないか? と、筆者は感じました。「適正に」というのも、ポイントです。この「適正に」を考えるときのキーワードは、「仮想的有能感」です。

■間違った褒め方では、間違った自信がつく

仮想的有能感とは、いわば自信のバブル化現象のこと。自尊感情とは対極にある感情で、他者を批判的に批評したり軽視したりすることで生まれる偽物の有能感です。

「子どもを褒めるのは基本的には良いことですが、他の子と比較して褒めることは避けましょう。そのような褒め方では、本来の自信ではなく、仮想的有能感が育ってしまいます」(藤野先生)


子どもを褒めるときは、その子自身をしっかり見て、「できたこと」に焦点をあてる。誰かと比較しない。子どもの何を、どのように褒めるか? これは、時間をかけてじっくり考えてみたい大切な事柄だと筆者は感じました。

「レジリエンスを育てるためのステップ」で、「1、人を頼って成功する」「2、家庭内で役割をもつ」までの説明が終了しましたので、レジリエンスを育てる最後のステップ、「気持ちを切り替える」について考えてみます。

【気持ちを切り替える】
「人に相談してうまくいく」「役割を果たす」という経験をするなかでも、うまくいかないこともある。そんなとき、「気持ちを切り替える」というふうに考えてみる
<レジリエンスを育てる3つのステップ>



■「イライラしてる」をキャッチできただけでOK!



「『どうせムリ…』あきらめがちな子どもが陥っている悪循環とは」で、レジリエンスの構成要素に感情調整があると書きました。




「感情は、やっぱりきちんとコントロールをしないといけないんだ」と思うと、何だかハードルが高いです…。できなかったら、「やっぱり、だから私はダメなんだと」という気持ちにもなりがちです。どうしたら良いのでしょうか?

「落ち込んだとき、イライラしたとき、まずはイライラした気持ちに気がついただけで充分です」(藤野先生)

「感情調整をしなきゃ!」ではなく、「イライラした気持ちに気がついただけでOK」と思うと、気が楽です。「あ! イライラしているな」ということをキャッチできたら、ひとまず手をとめる、その場を離れるる…。そんなあたりから始めてみるのが良いのではないでしょうか。

■「ママがちゃんとしなければ」という肩の力を抜くこと



また、気晴らしに、気の合う誰かと他愛のないおしゃべりをすることも、とても有効だそうです。

「最近のレジリエンスの研究では、個人の資質やスキルも大切ですが、『サポート・ネットワーク』があることも重要だとされています。つまり人に頼れて安心できるネットワークのなかで、人の心は癒えていくのです」(藤野先生)

気の合う人との他愛のないおしゃべりは、とても大切なこと! レジリエンスを育てるためには、「私がちゃんとしないと!」と肩に力をいれるのではなく、むしろ、その逆なんです。

■レジリエンスを育てるにはママの余裕が大切なワケ



「じつは、子どものレジリエンスを育てるためには、ママの気持ちの余裕がとても大切なんです。なぜなら大前提として家庭が『心のエネルギーを補給できる場』でないと、子どものレジリエンスは育ちませんからね。急がば回れではありませんが、何より大切なのが、親が楽に生きることなんです」(藤野先生)

そして親が楽になる五か条「らりるれろ」を教えてくださいました。


●親が楽になる五か条。
「ら」
楽に生きよう

あれこれ気にしすぎず、親がまず楽になる。親が悩んで、子どもに口うるさくしない

「り」
理解しよう

子どもを理解すること。理解すればするほど、その子にとって必要な支援は見えてきます

「る」
ルールはほどほどに

守りやすい、ほどほどのルールを設定すること。ルールにがんじがらめにならない

「れ」
連携は、こちらからの歩みより

人と連携することも大切です。何事も自分から歩みより、丁寧に相談しましょう

「ろ」
ロンリネスはよくない

孤独に陥らないこと。人間は承認され、仲間に支えられることが大切です出典:『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』より抜粋。上記の親が楽になる五か条は、主に日戸先生かが伺った話をまとめたものである。



いかがでしたか? 「ママが楽な方が、結果オーライなんですよ」という話を伺い、筆者は何だか少し肩の力が抜けました。

藤野先生は、「近年のレジリエンス研究で重視されているサポートネットワークの観点からみると、とりわけ『れ』と『ろ』が大切だと思っています。ひとりで抱え込まず、気楽に頼れる誰かが身近にいることが子育てには大切なんですね」と言います。

本連載が、みなさんの「気楽な子育て」の一助になるとうれしいです。

●「レジリエンス」を育てるポイント
1)一つひとつの言葉が、その子の自己認識になる
2)子どもを褒める時は、その子自身をしっかり見て、誰かと比較しない
3)何より大切なのが、親が楽に生きること

■今回、お話を伺った藤野博先生の著書
『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』


(藤野 博, 日戸 由刈 (監修)/講談社 本体1,300円(税抜き))
「レジリエンス」とは心の回復力であり、立ち直り力のこと。自分の思い通りにいかず、落ちこんだときに、気持ちを切り替え、またがんばろうと思える力をいいます。書籍では道具の管理や家事の手伝いといった、子どもにとって身近なことを例として挙げながら、レジリエンスの育て方やポイントをイラスト図解で徹底解説します。藤野博先生
東京学芸大学教職大学院教授 博士(教育学) 子どものレジリエンスを育てる研究をしている。専門はコミュニケーション障害学、臨床発達心理学。とくに発達障害の子のコミュニケーションやソーシャルスキルにくわしい。言語聴覚士、臨床発達心理士スーパーバイザー。特別支援教育士スーパーバイザー。

(楢戸ひかる)

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