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“園子温ワールド”を体感せよ!最新作『愛なき森で叫べ』と過去作との共通点とは?

  • 2019.10.13
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『愛なき森で叫べ』を手がけた鬼才・園子温監督の作品をプレイバック!
Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』10月11日(金)全世界独占配信

【写真を見る】青髪に過激な衣装に身を包んだ日南響子扮する「妙子」という役名は、『冷たい熱帯魚』などにも登場する

第59回ベルリン国際映画祭でカリガリ賞と国際批評家連盟賞を受賞した『愛のむきだし』(09)や、第68回ヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した『ヒミズ』(11)など、世界中の映画ファンを魅了しつづける園子温監督の最新作となるNetflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』が10月11日から独占配信中。

実際の事件からインスパイアされた本作は、これまでの園監督の作品を彷彿とさせるシチュエーションや、同じ名前の登場人物が登場するなど、まさに“園子温の集大成”とも呼ぶべき1本。これまでの作品を欠かさずチェックしてきたファンも唸ること間違いなしの本作を観る前に、是非ともチェックしておきたい過去の園子温監督作品を一挙に振り返っていきたい。

『自殺サークル』(2002年)

「いっせーのー!」の掛け声とともに54人の女子高生たちが手を繋いだまま新宿駅のホームから飛び降り、集団自殺を図るという衝撃的なシーンから幕を開ける本作。自殺現場に残されていたのは削り取られた人の皮膚の一部が連なったロープ状の物体…。果たしてこれは事件なのか事故なのか。石橋凌演じる黒田ら刑事たちが、その謎に立ち向かっていく。

高校生たちが笑顔のままでどこか誇らしげに、そして楽しげに集団自殺を図る姿は、最新作『愛なき〜』の中で描かれる美津子や妙子ら5人の自殺と重なる。不気味さとブラックユーモアに包まれた“園子温ワールド”全開の本作で、園子温という名が瞬く間に世に広まり、公開当時のメイン上映館だった新宿武蔵野館の観客動員記録を塗り替えるほどの大ヒットを記録した。

『HAZARD』(2002年)

2002年に撮影されながら4年後の2006年に公開された本作は、平凡な日々や日本に不満を持つ大学生シンが、ある一冊の本をきっかけにニューヨークの犯罪都市<HAZARD>の存在を知り、自ら危険な世界へ飛び込む姿を描く物語。オダギリジョー演じるシンがリーと竹田と出会い仲間になっていく過程や友情を深めながら生きていくさまは、『愛なき森で叫べ』のシン、ジェイ、フカミたちの関係を想起させるものがある。

また、過去の回想として出てくる大学生活のシーンでは、シンが運命の本に出会う姿や映像に重ねて合唱が流れるなど『愛なき〜』と似た演出が散りばめられている。人とは違う一線を越えたなにかを成し遂げたいという若い男たちが互いに刺激し合い、絆で結ばれて道を外していく青春物語という点もまた、共通している。

園子温作品でおなじみの役名「美津子」を演じるのは本作で映画デビューを果たす鎌滝えり
Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』10月11日(金)全世界独占配信

『Strange Circus 奇妙なサーカス』(2005年)

第56回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に出品され、カナダのファンタジア国際映画祭で作品賞と主演女優賞の2冠に輝いた本作は、近親相姦や児童虐待といった過激な題材に、ひとりの女の歪んだ愛の行く末を描いた禁断の官能ミステリー。

実の父親に抱かれ、それが忌むべき近親相姦と自覚することはなく心だけが壊れていく美津子と、そんな倒錯したエロスの世界を小説で描く車イスの人気女流作家・妙子。『愛なき森で叫べ』の登場人物と同じ名前を持つ2人の女性が登場するだけでなく、心に傷を負いながら屋上から飛び降りる女性や過去と現実を交差しながら進んでいくストーリーもまた、園監督作品ではおなじみの演出といえよう。

『愛のむきだし』(2008年)

敬虔なクリスチャンの家に生まれ、神父の父と幼い頃に亡くした母の思い出を胸に、理想の女性“マリア”と出会う日を夢見て平穏な日々を送る主人公の本田悠。ある日、優しかった父が豹変し、悠に懺悔を強要するようになる。それをきっかけに悠は、親子としての絆を守るために懺悔をしようと罪作りに励み、いつしか盗撮のカリスマと呼ばれるまでに成長。そんな中、尾沢洋子とめぐり逢い、生まれて初めての恋をすることに。

恋心を抱きながらすれ違う2人に迫る、謎の新興宗教団体の影…。洗脳やマインドコントロールといった、『愛なき森で叫べ』につながる部分が随所に見受けられる本作は、満島ひかりや安藤サクラ、さらには松岡茉優といったその後の日本映画界で輝きを放つ女優たちが飛躍を遂げるきっかけとなった、上映時間239分にも及ぶ超大作。実話をベースに、愛と性、欲望と宗教などが複雑に絡み合った濃密なストーリーは見応え充分。

でんでんの演じる役柄は『冷たい熱帯魚』の村田と真逆の設定に!
Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』10月11日(金)全世界独占配信

『冷たい熱帯魚』(2010年)

『愛なき森で叫べ』同様に実際に起きた事件から着想を得た猟奇ホラー作品である本作。小さな熱帯魚店を営む社本信行(吹越満)は、ある日娘の万引き現場を村田(でんでん)によって救われる。大型熱帯魚店を経営する村田は、娘をバイトとして雇い入れ、至れり尽くせりの親切ぶりに、社本は村田夫婦と懇意になっていくが、それは村田の極悪非道な「ビジネス」の恐るべき前兆だった…。

登場人物の名前が「村田」や「美津子」「妙子」といった園監督作品ならではの共通点はもちろんのこと、『愛なき〜』では椎名桔平演じる“村田”に支配されて壊れていく男・尾沢茂を演じているでんでんが、本作では“村田”という猟奇的な詐欺師兼殺人犯を演じている真逆の設定となっている点も興味深い。観る人の心理を蝕んでいくような、でんでんの演技力にも注目の1本だ。

『恋の罪』(2011年)

本作も、1990年代に世間を震撼させた殺人事件にインスパイアされ作り上げられたサスペンスドラマ。幸せな家庭を持ちながらも、愛人との関係も切れずにいる刑事の和子(水野美紀)は、大学準教授でありながら渋谷の古いアパートで死亡した美津子(冨樫真)の事件を担当することになる。そして、その事件を追ううちに人気小説家の 妻・いずみ(神楽坂恵)の秘密も知ることになり、それぞれ立場の違う3人の女性たちの表と裏の顔が徐々に明らかになっていく…。

閉塞的な社会の中で破壊的な衝動を抱える女性たちが、狂気とともに自身の存在意義を求めていくさまは、『愛なき森で叫べ』で詐欺師・村田の中で抑圧されていく女性たちに通じる部分がある。他にも「美津子」といった名前や、大学教授というキーワード、登場人物たちの二面性など、『愛なき〜』へと通じる人間の深層が描かれている。

『ヒミズ』(2011年)

古谷実の同名漫画を映画化した本作は、染谷将太と二階堂ふみにヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)日本人初受賞をもたらした、園監督渾身の1本。親からの愛情を受けずに育った中学生の住田(染谷将太)は、クラスメイトの茶沢(二階堂ふみ)やホームレスの夜野(渡辺哲)たちに囲まれながら“一生普通に暮らすこと”を夢見て生活していた。しかし急に母親が愛人と蒸発し、家業であるボート屋で日銭を稼いでいる最中、衝動的に父親を殺してしまう。もう普通になれないと考えた住田は“社会の悪”を殺すために夜の街に繰り出すが...。

冒頭で雨に打たれながらヴィヨンの詩を読み上げるなど、文学に陶酔する女学生である茶沢の姿からは、『愛なき森で叫べ』の美津子や妙子たちの高校時代に通じる面を見出すことができる。また、殺人を機に自身の行為を正当化していく主人公の狂信的な発想も、『愛なき〜』の狂気的な展開に通じる部分と言えるだろう。

人間社会の恐ろしさと闇をあぶり出すユーモアとバイオレンスは必見!
Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』10月11日(金)全世界独占配信

『愛なき森で叫べ』(19)

そして最新作『愛なき森で叫べ』は、1995年を舞台にした狂気と愛憎が渦巻く戦慄のサスペンス・スリラー。上京したばかりのシン(満島真之介)は、ジェイ(YOUNG DAIS)とフカミ(長谷川大)に声をかけられ彼らの自主映画に参加。そしてジェイたちの知人で、高校時代にクラスメイトが交通事故で急逝する事件から未だのがられれずにいた妙子(日南響子)と美津子(鎌滝えり)に出演を依頼する。

世間が銃による連続殺人事件に震撼していた頃、美津子の元に村田(椎名桔平)から電話がかかってくる。彼は「10年前に借りた50円を返したい」と美津子を呼び出し、巧みな話術とオーバーな愛情表現で彼女の心を奪っていく。しかし村田の正体は冷酷な天性の詐欺師。彼の本性を知ったシンたちは、村田を主人公にした映画を撮り始めるが、事態は思わぬ方向へ転がり始めていくことに…。

世界中で蔓延している事件の被害者の姿、そして彼らが加害者に転じてしまう人間社会の恐ろしさと闇をあぶり出す本作は、現在Netflixで全世界190カ国へ配信されている。嵐が過ぎ去ったこの連休中に、これまでの“園子温ワールド”をおさらいして、世界中が震撼すること間違いなしの最新作をじっくりと堪能してみてはいかがだろうか。(Movie Walker・文/久保田 和馬)

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