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「医療現場で安全かつ効果的にヨガを伝えたい」Wワーカーまでの道のり ♯CASE1

  • 2019.9.14
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Wワーカーまでの道のり ♯CASE1看護師×ヨガ講師

看護師歴15年。看護の経験とヨガの知識を掛け合わせ、勤務先の病院でリハビリ用にオリジナルのヨガメソッドを提供している鈴木陽子さん。看護師とヨガ講師のWワークを選び、活動のステージに臨床現場を選んだ理由とは。そして、これからヨガ講師として一歩を踏み出すヨギに向けて、Wワークのメリットを聞きました。

――鈴木さんのこれまでの経歴と、ヨガとの出会いを教えてください。

看護師とヨガ講師のWワークストーリー 鈴木陽子
Photo by Kenji Yamada

今は看護師をしていますが、最初から医療職を目指したわけではなく、大学は文系の学部で国際経済を学んできました。東南アジアの経済などを勉強するうちに国際援助に興味を持ち始め、直接的に人の役に立つ仕事って何だろうと考えたんです。そこで初めて医療職に魅力を感じ、聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)に学士編入しました。卒業後は聖路加国際病院の心臓内科系集中治療室(CCU)に所属。数年経った頃、最初の大学での学びを無駄にしたくないという思いが芽生えるように。そうだ、海外で視野を広げようと思い、アメリカに留学し米国正看護師の免許を取りました。もちろん資格を活かしてアメリカでの臨床を希望しましたが、父親の体調が悪化して日本に帰らなければならず……。帰国してからは外資系企業で産業保健師として採用していただき、メンタルヘルスに携わる仕事をしていました。多忙を極める生活で自分分自身の精神的ケアの必要性を感じ始め、友人に誘われて続けていた心にも作用するヨガに魅了されていったんです。それから看護師に復職し、今に至ります。

看護師とヨガ講師のWワークストーリー 鈴木陽子
現在は聖路加国際病院に勤務しながら、様々な場所でヨガ指導を行う

――ヨガ講師を目指したきっかけは?また、なぜ看護師とヨガ講師のWワークを選んだのですか?

最初はヨガを教えるつもりはなく、ヨガを深く学んでみたくて指導者養成コースに通いました。生徒さんとの関わりを学ぶ中で、心身の悩みを抱える方への対応に迷うヨガ講師が多いと知ったんです。その悩みが疾患レベルになると、ヨガ講師は医療者ではないので深く踏み込めないですからね。何かしらの手助けを求めてヨガに来る方たちに対し、私が臨床で培ってきた看護の経験が役立つのでは。そう思ったらたくさんのヨガ講師がいる中で自分の役割が見えた気がして、看護師を続けながらヨガを教えようと思うようになりました。

看護師を辞めてヨガ講師になるという選択肢は……。なかったですね。なぜなら、疾患のある方に安全かつ効果的にヨガを届けるには、患者さんの情報が揃う病院で行うことが最適だと考えたからです。もし私が看護師を辞めて臨床を離れ、フリーのヨガ講師として医療現場に入ってヨガを行うのは、制度の都合上難しいという現状も知っていましたし。最初から看護師とヨガ講師を両立し、院内でヨガを教えると決めていました。院内でのヨガクラスはすんなり実現し、病院側の寛大な理解に感謝しています。

看護師とヨガ講師のWワークストーリー 鈴木陽子
Photo by Kenji Yamada

――患者さんにヨガを教えるうえで、看護師の経験がどのように役立っていますか?

患者さん向けのヨガメソッドの開発に、医療的な視点が活かされています。院内でヨガを教えるにあたり「メディカルヨガ」というメソッドを考案し、現在、心疾患の患者さんに週に一度、がんの患者さんには月に一度のペースでヨガクラスを開催。このメソッドは、ピークポーズに向けて流れを作っていく一般的なヨガとは違い、リハビリの一環として行うため疾患の特徴と患者さんの体調を理解したうえでプログラムを組み立てます。例えば心疾患の患者さんは、深く呼吸することが苦手で腹式呼吸でお腹を膨らませることが難しいため、仰向けで声を出しながら行う呼吸法を取り入れたり。また、入院中は筋力が衰えるため、安全な座位や仰向けで下肢の筋肉を刺激するポーズも多く取り入れています。

ヨガ中の心身の状態を察するという点では、言葉には表さない患者さんの中に潜在するニーズを五感を使って読み取るという、新人時代から積んできたトレーニングが役立っていますね。目の前の患者さんが怒っていて、その感情の出どころを探っていくと、実は治療に対する不安や体が思い通りにならないもどかしさに起因している場合も。看護師には患者さんの本音を汲み取るための傾聴力や言葉掛けのスキルが求められ、それができると少しずつ心を開いてもらえるんです。ヨガでも同様に患者さんと向き合い、信頼を築く努力をしています。

看護師とヨガ講師のWワークストーリー 鈴木陽子
メディカルヨガレッスンにて。看護師として積み重ねてきた経験をいかし、一人ひとりの心と体に適切に寄り添う

――患者さんには健康な人とは違う心理的特徴はあると思いますが、ヨガ講師としてどのように向き合っていますか?

そうですね。例えばがん患者さんの多くは、自分に厳しく、それでいて自己評価が低いように思います。ヨガ中も周りの人と同じにできないと自分を責めて落ち込んでしまう。周りが頑張っている中で自分だけ休むのも苦手です。だから、「無理をしないで」と繰り返し伝え、サインを見逃さず辛そうな方には個別に声をかけるようにしています。そうした目配りは大切ですが、私がその方に何かをしてあげるとか、ましてや救ってあげられるとは思っていません。私の役割は、患者さんが自分で元気になる力を引き出すこと。無理はしないけど「ちょっと頑張る」を積み重ね、今の体の状態で何ができて、何ができないかを自分で判断できるようになってほしい。そしてできないことより、今できることを楽しみ、一歩ずつよい方向に向かい社会復帰する過程を見守っていきたいですね。

看護師とヨガ講師のWワークストーリー 鈴木陽子
Photo by Kenji Yamada

――看護師の経験の延長にヨガ講師があり、とてもバランスが取れていますね。鈴木さんのような専門職でなくても社会経験をヨガ指導に活かせると思いますか?これからWワークを目指すヨギにアドバイスをお願いします。

人間関係の難しさや仕事へのプレッシャーを社会経験の中で味わったヨガ講師は、同じ境遇の生徒さんの悩みを理解し寄り添えるもの。職種を問わずそうした共感力は、ヨガ講師になったときの武器になるはずです。インドで修行を積んでいるヨガの先生も素晴らしいですが、現代社会を生きる人たちのニーズがわかる等身大の講師であることも大事なのでは。さらに、社会の中で積み上げた経験に基づく自分ならではの強み、ヨガ講師をするうえで情熱を傾けられるミッションは何か、じっくり考えてみましょう。Wワークになると仕事量が増え、情熱を失うと忙しさだけに追われて疲弊してしまいます。常に自分に問いかけて伝えたいこと、やりたいことを見失わないようにしてください。私もそうしています。

現在、仕事をしながら指導者養成コースに通っているヨギの皆さんは、忙しいスケジュールをこなしていると思います。ポーズが上手な他の受講生を見て焦りを感じることもあるのでは。私もそんな時期がありましたが、今思えば焦って知識を詰め込んでもいいクラスはできません。周りに流されず納得のいくまで学び、ヨガを学ぶこと、ヨガを教えることが義務にならないように。ずっとヨガを好きでいてくださいね。

――最後に、ヨガを通してこの先社会にどう貢献していきたいですか?今後の展望を教えてください。

疾患があるとヨガスタジオに行けないと思っている方が多いので、そうした誤解というか、溝を埋めてヨガが届きにくい人に届ける役割を担っていけたら。今は院内のヨガクラスに加え、都内ヨガスタジオでもメディカルヨガのクラスを担当していますが、この先ヨガ講師としての活動の比重を増やし、ヨガはすべての人に開かれていることを積極的に啓蒙していきたいです。

看護師とヨガ講師のWワークストーリー 鈴木陽子
Photo by Kenji Yamada

鈴木陽子さん
看護師、メディカルヨガインストラクター。聖路加国際病院に勤務しながら患者へのヨガ指導や、一般公開講座でマインドフルネス呼吸法を指導。都内ヨガスタジオでもメディカルヨガクラスを担当している。また、「オーガニックライフ東京」や「YOGAWOMAN」などのヨガイベントにも出演。著書に『聖路加国際病院のナースが教えるメディカルヨガ』(扶桑社刊)がある。

Photos by Kenji Yamada
Text by Ai Kitabayashi

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