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2020年代初のオスカー戦線はここから。トロント国際映画祭のラインナップを徹底解説!

  • 2019.9.9
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ヴェネチア国際映画祭で上映され大絶賛を受けた『ジョーカー』
[c] Courtesy of TIFF

【写真を見る】新海監督の『天気の子』や是枝監督の『真実』も上映!

今年もトロント国際映画祭が開幕し、いよいよ賞レースが始まった。今年のオープニング作品は、地元トロント出身のミュージシャン、ロビー・ロバートソンと彼が所属したバンド「The Band」の軌跡を追ったドキュメンタリー『Once Were Brothers(原題)』で、監督はカナダ出身のダニエル・ロハー、26歳。トロント国際映画祭のオープニング作品を飾る最年少監督となった。

この作品の製作総指揮には、マーティン・スコセッシやロン・ハワードも名を連ね、The Bandの前身バンドである「ホークス」がバックバンドを務めたボブ・ディランのフッテージも含まれている。深夜上映では、マーティン・スコセッシがThe Bandの解散ライブをドキュメンタリーに収めた『ラスト・ワルツ』(78)の上映も行われた。

左から、ダニエル・ロハー監督、ロビー・ロバートソン、製作総指揮のブライアン・グレイザーとロン・ハワード
[c] Courtesy of TIFF

毎年言われていることだが、9月初旬に行われるトロント国際映画祭は名実ともにアカデミー賞の前哨戦である。去年も、トロント国際映画祭で観客賞を受賞した『グリーンブック』(18)がきっちり賞レースを走りきりアカデミー賞作品賞を奪取したことからもわかるように、もはや“ジンクス“ではなく、“実証”として認識されている。映画会社としても、トロントの観客に映画を観せずしてスタートをきれない、試金石のような映画祭なのだ。

今年のラインナップも、1月に行われたサンダンス映画祭からトロント国際映画祭の直前にプレミアが行われるテルライド映画祭やヴェネチア国際映画祭まで、世界各国の映画祭の選りすぐられた作品と、ハリウッドのスタジオやストリーミングのイチオシ作品が揃う。今年の賞レースを占うトロント国際映画祭のラインナップから、注目作を一挙ご紹介。

ワールドプレミア作品は観客賞において有利?

『A Beautiful Day in the Neighborhood』
[c] Courtesy of TIFF

昨年の『グリーンブック』のように、今年もトロント国際映画祭がワールドプレミアとなる作品に注目が集まっている。というのも、多くの作品が直前のヴェネチア国際映画祭やテルライド映画祭での評判を携えてトロントに上陸するのに対し、ワールドプレミア作品はまったくの未知数。それだけに、映画を見る目に自負のあるトロントの観客の反応が気になるところだ。『A Beautiful Day in the Neighborhood(原題)』は、第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた『Won’t You Be My Neighbor?(原題)』で描かれた子ども番組の制作者フレッド・ロジャースの物語を、トム・ハンクス主演で『ある女流作家の罪と罰』(18)のマリエル・ヘラー監督が実写映画化した作品だ。

タイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』
[c] Courtesy of TIFF

先ごろFOXサーチライト・ピクチャーズとさらにもう1本新作を撮る契約を結んだタイカ・ワイティティ監督による『ジョジョ・ラビット』(2020年1月公開)にも注目が集まっている。第二次世界大戦下のドイツで、アドルフ・ヒトラーを空想上の友だちだと信じる少年ジョジョの物語で、ワイティティ監督も役者として参加するほか、スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェルが出演する。『The Goldfinch(原題)』は、『ブルックリン』のジョン・クロウリィ監督が、美術館の爆破テロで母親を失った青年(アンセル・エルゴート)の心の傷を癒す過程での葛藤を描く。「ナタリー・ポートマンの新たなる代表作になるか?」と前評判の高い『Lucy in the Sky(原題)』は、宇宙飛行によって人生が一変してしまった女性宇宙飛行士の物語。監督のノア・ホーレイはテレビドラマシリーズ「ファーゴ」のショーランナーとして知られている。

『Lucy in the Sky』
[c] Courtesy of TIFF

ベネチア経由&コロラド経由トロント行きの作品たち

【写真を見る】新海監督の『天気の子』や是枝監督の『真実』も上映!
[c] Courtesy of TIFF

トロント国際映画祭の直前に行われることもあり、伝統的に話題作をシェアしがちな2つの映画祭であるイタリアのヴェネチア国際映画祭と、コロラド州で行われるテルライド映画祭。どちらも賞レースへの立ち上げの場として選ばれる映画祭だ。そのなかでも、特にアカデミー賞にフォーカスした作品がトロントに上陸する。例えば、ヴェネチア国際映画祭で上映され大絶賛を受けたホアキン・フェニックスの主演作『ジョーカー』(10月4日公開)、Netflixが昨年の『ROMA/ローマ』に続き、ヴェネチアに投入した『マリッジ・ストーリー』(12月6日配信)と『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』(10月18日配信)、そしてヴェネチア国際映画祭オープニング作品の『真実』(10月11日公開)の上映も行われる。『真実』は是枝裕和監督初の海外制作映画で、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークらが出演する。

是枝監督の『真実』
[c] Courtesy of TIFF

テルライド映画祭経由作品には、マット・デイモンとクリスチャン・ベール共演の『フォードvsフェラーリ』(2020年1月公開)、レニー・ゼルウィガーが往年の人気歌手ジュディ・ガーランドに扮する『Judy(原題)』、そして『The Aeronauts(原題)』では、『博士と彼女のセオリー』(14)で共演したエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズが再共演している。エドワード・ノートンが、主演・監督・脚本・製作を手がけた50年代のクライム・ドラマ『Motherless Brooklyn(原題)』もトロントでインターナショナル・プレミアとなる。Netflixが今冬配信するフェルナンド・メイレレス監督による教会もの『ふたりのローマ教皇』(12月27日配信)は、テルライド映画祭での上映で笑いと涙を誘った。

『フォードVSフェラーリ』
[c] Courtesy of TIFF

2019年の、映画祭総決算もトロントで

カンヌ国際映画祭にて最高賞パルムドールを受賞した『パラサイト 半地下の家族』もトロントへ
[c] Courtesy of TIFF

1月のサンダンスから2月のベルリン、5月のカンヌ、7月のロカルノを経てトロントと、今年のインディペンデント映画の潮流を一気に見ることができる。今年度のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『パラサイト 半地下の家族』(2020年1月公開)もトロント国際映画祭で北米プレミアを迎える。ポン・ジュノ監督による不穏な家族劇は、第92回アカデミー賞国際長編映画賞の韓国代表に選出されている。

『A Hidden Life』
[c] Courtesy of TIFF

同じく第72回カンヌ国際映画祭で上映され好評を得たテレンス・マリック監督最新作『A Hidden Life(原題)』は、FOXサーチライト・ピクチャーズが配給、ペドロ・アルモドバル監督最新作は、アルモドバル作品の常連、アントニオ・バンデラスとペネロペ・クルスが主演の『Pain and Glory(原題)』の上映も行われる。1月のサンダンス映画祭でプレミアされた俳優シーア・ラブーフの自伝的作品『Honey Boy(原題)』や、観客賞を受賞した死刑執行を行う刑務所所長の物語『Clemency(原題)』、イラク兵拷問調査疑惑を追う特別調査官を演じるアダム・ドライバーと、ダイアン・ファインスタイン上院議員を演じるアネット・ベニングの迫真の演技が絶賛された『The Report(原題)』もサンダンス経由でトロントに上陸する。

日本映画の潮流を知り尽くしたセレクション

三池監督の『初恋』
[c] Courtesy of TIFF

トロント国際映画祭と日本映画はつながりが深く、各映画祭での話題作や近日北米公開を控える作品などが上映される。第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門観客賞に輝いた『37 Seconds(原題)』は、脳性麻痺の女性の自己発見と成長を描く作品だ。ロサンゼルス在住のHIKARI監督の長編デビュー作で、Netflixでの配信が決まっている。アカデミー賞国際映画賞の日本代表にも選ばれた新海誠監督最新作『天気の子』(公開中)の上映もある。三池崇史監督の『初恋』(2020年2月公開)、黒沢清監督の『旅のおわり世界のはじまり』(19)、深田晃司監督の『よこがお』(公開中)といった、トロントではすでにお馴染みの人気監督たちの新作も上映される。

深田監督の『よこがお』
[c] Courtesy of TIFF

トロント国際映画祭の特異な点は、そのほかの国際映画祭とは異なり、コンペティション部門を持たないこと。その代わりが映画を観た観客が投票する観客賞である。トロント国際映画祭に来ると、この映画祭がたくさんのボランティア・スタッフによって運営されていることを実感する。朝から晩までテキパキと働くボランティアはトロント国際映画祭を愛する人たちによって運営され、その一挙手一投足からは、彼ら彼女らの映画愛が伝わってくる。ボランティアを含め、映画を愛するトロント国際映画祭の観客が選ぶ“観客賞”だから、アカデミー賞の作品賞まで上り詰めることができるのだろう。(Movie Walker・文/平井伊都子)

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