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横浜流星、素顔とのギャップと“気”をまとえる演技力とは?

  • 2019.9.8
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息ピッタリの横浜流星と柳明菜監督
撮影/黒羽政士

【写真を見る】「はじこい」「あな番」で大飛躍!横浜流星、22歳の“素顔”を撮り下ろし<写真16枚>

連ドラ「初めて恋をした日に読む話」で大ブレイクし、現在放映中の「あなたの番です」などでも話題を呼んでいる横浜流星。河野裕の⻘春ファンタジー小説を映画化した最新主演映画『いなくなれ、群青』(公開中)では、とことん引き算をした静謐な演技を見せている。本作で長編監督デビューを果たした新鋭、柳明菜監督は、原作の持つ神聖かつ謎めいた世界観を見事に紡ぎ上げた。横浜と柳監督の2人にインタビューし、本作の撮影秘話を聞いた。

横浜演じる主人公の男子高校生、七草による独白から始まる本作の美しいオープニング映像で、一気にその世界観に引き込まれる。七草が住んでいるのは “捨てられた人たちの島”とされる階段島。およそ2000人が暮らす島だが、どうしてこの島へやってきたのかという記憶が誰もない。そんなある日、この島に七草の同級生、真辺由宇(飯豊まりえ)がやってきて、果敢に島の秘密を解き明かそうとしていく。

もともと原作のファンだった柳監督は、映画化にあたり、まずは1分半のパイロット版を作り、プロデューサーや制作陣、俳優陣と作品への共通認識を作っていった。その映像を観た時、柳監督が撮りたい本作の空気感が伝わってきたと言う横浜。「映像がすごくきれいで、階段島の雰囲気も自分が思い描いていたのと同じ感じでした」。

大ブレイクの横浜流星、その素顔に単独取材と撮り下ろし写真で迫る
撮影/黒羽政士

柳監督は、七草役に横浜はピッタリだと考えオファーをした。「横浜さんのいろんな作品を観ていて、七草の、想いを内に秘めた感じやクールな雰囲気が合っていると思ったんです。でも、実際にお会いしてみたらものすごく人懐っこくて、すごいギャップを感じましたが、だからこそ、おもしろい七草になるなと思いました。映像では七草の心の声があまり表現できない分、冷たい人間に見えるんじゃないかと心配していましたが、そこがすぐに解消されて。横浜さんがベストだったと思いました」。

「監督は感性が豊かなので、独特な言い回しで演出されます」(横浜)

ヒロイン真辺役を務めた飯豊まりえの存在感もすばらしい
[c]河野裕/新潮社 [c]2019映画「いなくなれ、群青」製作委員会

飯豊まりえ演じる真辺は、アグレッシブで太陽のような力強いヒロインだが、七草は彼女を静かに見守っている月のような存在だ。現場で横浜は、飯豊のエネルギッシュな芝居を受けるのに苦労したようだ。

「七草は感情をあまり表に出さない役なので、真辺が感情的にぶつかって来れば来るほど、それを受けるのが難しかったです。自分もそのまま、ボンと気持ちを返したくなっちゃうけど、それをしてはいけなかったので」。

真辺の感情を七草がどんなふうに受け止めるかについて、柳監督は“外圧”“内圧”という表現で説明した。「芝居は相手とのキャッチボールですが、今回は単に同じ力で返すんじゃなくて、一旦、自分の内に入れてから、相手に返す、というようにお願いしました。例えば、別のシーンでは、“内ではなく、外に向かって圧を強めに”とか。微妙なニュアンスですが、私は横浜さんにちゃんと伝わっているような気がしていたし、実際にそこをしっかりと演じてくれました」と横浜の演技に太鼓判を押す。

主人公の七草を演じた横浜流星の透明感溢れる演技に注目!
[c]河野裕/新潮社 [c]2019映画「いなくなれ、群青」製作委員会

横浜によると「伝わってましたよ。監督は感性が豊かな人なので、演出する際の伝え方もすごく独特な言い回しをされます。でもそれが僕にとってはとてもわかりやすかったので、自分もたぶん理解はできていたのではないかと」と、柳監督を見る。例えば、後半で七草と魔女が電話で会話をするシーンの演出もその一つだ。

横浜が「七草のとあるシーンで、“すごいものを見た”という感じを表すのに、『ここを霊安室だと思ってください』と監督から言われたんです」と説明すると、柳監督も「『遺体の顔に被せた布を取る瞬間のように』と言いました」と補足する。この演出についても横浜は「すごくわかりやすかったです」と感心したそうだ。

横浜、飯豊をはじめ、矢作穂香、松岡広大、松本妃代、中村里帆など、フレッシュな新進俳優陣が、自然体のみずみずしい表情を見せているのは、そういった独特な演出が功を奏しているのかもしれない。

メガホンをとった柳明菜監督
撮影/黒羽政士

柳監督は横浜たちに「役を演じるうえでの前提として、感情では絶対に嘘をつかないようにしてください」とリクエストをしたそう。「『ここで3歩、歩いてください』と演出するのではなく、『歩きたい歩数だけ歩いてください』とお願いするやり方です。また、『役と自分との共通点を必ず探してください。その共通点を感じながら、芝居をしてください』ともお伝えしました。あとは、みんなが等身大に演じていってくれたと思います」。

横浜も、演じた七草との共通点をたくさん見出すことができたそうだ。「僕も実は七草のように悲観主義なところがあるのですが、それを表に出さないようにするのが得意です。10代のころの自分は違いましたが、20代になり、現実を見るようになってから、そうなりました。よく楽しんでいる時に、『本当に楽しい?』と聞かれたり、怒ってないのに『怒ってるの?』と聞かれたりします(笑)」。

ちなみに、横浜は極真空手をやっていて、中学3年生の時に世界大会で優勝している。バリバリの体育会系で礼儀正しく、好感度が高いだけに、”悲観主義“という言葉は意外に思えた。「昔は世間なんて知らなかったので、『俺は無敵だ!』と、世の中が自分中心に回っていると思っていました。でも、なにがきっかけになったのかはわかりませんが、いまはそうは思っていません」。

柳監督も、撮影に入ってからは、横浜のそういう内面がとても新鮮に思えたそうだ。「七草という役を演じるにはそのほうが良かったので、横浜さんのそういった部分を使わせていただけたのかなと。でも、今回のキャストさんは、皆さんがとても大人で、作品に真摯に向き合ってくれましたね」。

「横浜さんは “気”を使って演じられる役者さん」(柳監督)

【写真を見る】「はじこい」「あな番」で大飛躍!横浜流星、22歳の“素顔”を撮り下ろし<写真16枚>
撮影/黒羽政士

横浜と現場で演技を引き出し合ったであろう、ヒロイン真辺役を務めた飯豊まりえの存在感も秀逸だ。海壁に「ヒロイン降臨!」とばかりに真辺が初登場するシーンは、小説にある「一人だけ浮き出ているようだった。その姿はどこか劇的に見えた」というフレーズが驚くほど当てはまる。柳監督も「あのシーンを撮った時、『目の前に真辺がいる』と思いました」と手応えを口にすると、横浜も「僕も『キター!真辺だ!』と思いました」と感嘆したそうだ。

柳監督は、飯豊について「スイッチが入った時の彼女の変わりっぷりがおもしろくて、もっといろいろな演技を引き出したいと思わせてくれる女優さんでした。ある時、突然、飯豊さんのお芝居が変わるんですが、横浜さんもその変化をちゃんとキャッチして芝居をしてくれました。あの海壁のシーンは、現場で『完璧!』と叫んだくらいのできでした」と目を輝かせる。

常に平穏な生活を望む、事なかれ主義者に見える七草だが、実は心の奥底では、真辺を全身全霊で思い、彼女を守ろうとして動いていく。そんな七草の一途で献身的な想いを、横浜はどう捉えたのだろうか。「七草は自分のためにではなく、真辺のために行動をしています。真辺の真っ直ぐすぎる部分や、どこか欠けている部分を七草が補ったりするのです。それは時に恋愛っぽく見られたりもするけど、僕はそれだけではない七草の特別な想いをしっかりと表現しようと思いました」。

横浜に「過去にそういう想いをしたことがありますか?」と率直に聞いてみると「さすがに、ここまでの経験をしたことはないです」とハニカミ笑顔で応えてくれた。すると柳監督が「七草が、真っ直ぐすぎる真辺に対して苛立つこともあったけど、そういう時でさえ、彼女をものすごく愛しているという想いが伝わってきました。あれはどうやって演じたの?」と横浜に聞く。

「現場で飯豊さんが真辺としていてくれたので、僕も『彼女は真辺だ』と思い込むことができたし、自分も七草としていようと決めていたので、そこを大切に演じました」と答える横浜の表情からは、飯豊と実に良いキャッチボールができていたことがうかがえた。

柳監督独自の演出について独自の目線で語った
撮影/黒羽政士

柳監督は、横浜を演出してみて「素顔とのギャップも魅力ですが、それ以上に場の空気を変える力、“気”をものすごく強く持っている方だなと」と分析。「やはり武道をやっていたからでしょうか?それは殺気だったり、すごく和やかな空気だったりしますが、横浜さんはそういう“気”を使って演じることができる役者さんです。今後、私が俳優さんを演出するうえで、役者さんの声や表情だけじゃなくて、気というものの作り込みもしていきたいと思いました。とにかく横浜さんは、可能性だらけの俳優さんで、人柄も驚くぐらいいし、完璧ないい人でした」。

横浜は恐縮しながら、七草役を演じたことで「自分と向き合う時間が長くなった気がします。これまでは、そういう時間を無駄にしていたけど、自分とはなにかと、ちゃんと向き合えるようになりました」と、穏やかな口調で話す。

また、横浜に今年のブレイクぶりについても聞いてみると「ただの一時的なことなので、これからも振り落とされないようにしたいです」と常に謙虚だ。「いまは食らいついていくのに必死です。だから、これまでと変わりなく、地に足をつけてやるべきことをやっていきたい。環境が変わっても、自分の根本は変わってないので、今後も変わらずにいたいと思っています」

『いなくなれ、群青』は公開中
[c]河野裕/新潮社 [c]2019映画「いなくなれ、群青」製作委員会

(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

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