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なぜ眠らなきゃいけないの? 意外と知らない“睡眠”のこと

  • 2019.9.6
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人は人生の4分の1以上を眠って過ごす。睡眠は、私たちの体と心の健康はもちろん、美容との関係も深い。正しい知識があれば、睡眠がもたらす数々の恩恵にあずかれる! まずは、睡眠研究の専門家に基本を教わろう。

誰もが毎日とっている睡眠。その精密なメカニズムにはまだまだ謎が多いのも事実。では一体、睡眠とは何のためにあるのだろう?

「シンプルに言うと睡眠とは、起きている間に脳や体を働かせるためのメンテナンスだということ」と、筑波大学教授の櫻井武先生。

眠らないと人は生きられず、不足すれば肥満や病気を引き起こすとも。それほど重要な睡眠だけど、実は「こだわりを持たない」ことが良質な睡眠につながるのだとか。

「眠ることだけに関心を寄せると、眠れないときに不安が生まれ、眠りの質を低下させる原因になることも。睡眠は、起きているときのパフォーマンスを高めるために必要なもの。長く眠ることが目的にならないように注意しましょう」

Q. 人が眠る理由とは?

A. 翌日に備えて脳と体を休め、点検や整備をしています。
睡眠には、脳も体も休んでいるノンレム睡眠と、体は動かず脳が活発に働いているレム睡眠の2つの状態がある。そしてそれぞれの状態で、異なるメンテナンスが行われている。たとえば、脳内では情報の整理や記憶の強化、体内では免疫機能のアップ、そして、精神機能の維持など、極めて重要なものばかり。ただの休息ではないのだ。

「昼間使ったことで機能が低下した脳をリセットすることで、起きている間、脳のパフォーマンスを上げ、心身の状態を健やかに保ち活動できます。生きる上で睡眠は不可欠なのです」

ノンレム睡眠とレム睡眠の違い

レム睡眠:脳の活動…活発に活動、感覚(脳への入力)…遮断されている、筋肉の活動…ほとんどゼロ、行動…ほとんどなし、自律神経…交感神経、副交感神経ともに変動、体の機能…心拍数、呼吸数、血圧が大きく変動
ノンレム睡眠:脳の活動…眠りが深くなるほど活動が低下、感覚(脳への入力)…伝わっているが処理機能が低下、筋肉の活動…低下するがゼロではない、行動…寝返りなど、必要に応じて動ける、自律神経…副交感神経が優位になる、体の機能…心拍数、呼吸数、血圧など低下

ノンレム睡眠時は眠りが深くなればなるほど、脳も体も休息状態に。レム睡眠時は、脳と体の間の情報交換をカットした状態で、脳は活発に活動。このように、2つの睡眠はまったく異なる。

Q. なぜ夜に眠くなって、朝に目が覚める?

A. 体内時計と睡眠負債の2つが関係しています。
人の体は、個人差はあるが、平均して24時間+約10分周期の体内時計が刻むリズムによってコントロールされている。「朝、光を浴びることで体内時計がリセットされ、覚醒度が高まり、14~16時間後に眠くなるように毎日セットされます。一方、起きている間、一種の睡眠物質のようなものが脳内に溜まり続けます。この睡眠負債は夜眠ることで返済されます」。体内時計による一日のリズムと、覚醒することで溜まる睡眠負債によって、自然と夜眠くなるようになっている。

体内時計(覚醒出力)と睡眠負債の関係

朝、光を浴びてリセットされる体内時計によって高まる覚醒の強さは、午後に中だるみがあるものの、増え続ける睡眠負債に対抗して、就寝の2~3時間前にピークに。ここは眠くならない「睡眠禁止帯」と呼ばれる時間帯。

眠らないと睡眠負債はどうなる?

上の図は、規則正しく眠った場合。眠ることで負債は減る。下の図は一日徹夜した場合。睡眠負債は増え続け、翌日、長く眠らないと返済できない。

Q. 睡眠と覚醒は、どうやって切り替わる?

A. 睡眠と覚醒はシーソーの関係。起き続けられるのにも理由が。
睡眠と覚醒のタイミングを決めるのは、体内時計や睡眠負債だけでなく、脳内の2つのシステムとオレキシンという物質も大きく関係している。「脳には睡眠と覚醒を作り出す別々のシステムがあり、拮抗しあうシーソーのような関係です。どちらかの活動の強さがあるレベルに達するとシーソーが傾き、スイッチが切り替わります。覚醒したあと、起きた状態を維持し続けられるように覚醒システムを後押ししている脳内物質が、オレキシンです」

通常は睡眠システム側にシーソーは傾いているが、覚醒が必要なときに切り替わり、オレキシンが覚醒側に傾いたシーソーを固定する。食事や仕事など、人は生きるために覚醒し、行動しないといけないのだ。

さくらい・たけし 筑波大学医学医療系教授。世界的な研究機関である国際統合睡眠医科学研究機構副機構長。著書に『睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』(講談社)など。

グラフと表は『睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』(櫻井武著 講談社)より作図

※『anan』2019年9月11日号より。イラスト・中根ゆたか 取材、文・小泉咲子

(by anan編集部)

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