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iDeCoの所得控除の仕組みとは?年収による税金の節税メリットシミュレーション一例をFPが解説!

  • 2019.9.4
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本記事ではiDeCoの所得控除について考察します。記事の中ほどに「年収などの違いによってどのくらい減税の効果があるのか」分かりやすい一例の一覧表を作成しましたので、ご覧いただければ幸いです。

iDeCoのメリットの一つ、所得控除とは税金がお得になること

iDeCoは老後のための資産形成の制度です。大きなメリットが3つあります。

  1. 「掛け金が全額所得控除になる」
  2. 「運用益が非課税になる」
  3. 「将来お金を受け取るときに所得控除が受けられる」

この中でも今回は1の「掛け金が全額所得控除になる」について見てみましょう。

iDeCoへの掛け金の全額が所得控除になる。

iDeCoの所得控除の仕組み&メリットを受けられる対象は所得税・住民税が課税される人

iDeCoの所得控除の仕組みを簡単に言うと「iDeCo口座に毎月(あるいはまとめて)お金を出していくと、税金の負担が減少しますよ」ということです。

もう少し詳しく言いますとiDeCoに出した掛け金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。個人事業主や所得のある専業主婦などは確定申告が必要です。

そして、iDeCoの所得控除の減税メリットを受けられる人は、会社員・公務員・自営業者などの「課税される所得のある人」です。

【質問】所得税・住民税が課税されない人でもiDeCoに掛け金を出すと、所得控除のメリットがありますか?

答え:ありません。

所得税・住民税が課税されない人の場合には、所得控除による減税メリットはありません。

ただ「減税メリットがないからiDeCoをする理由がない?」かというと、そうではありません。理由は後述します。

【質問】家族のiDeCoの掛け金を自分が負担すれば、自分に減税メリットがありますか?

答え:ありません。

家族の掛け金を負担しても、減税メリットは得られません。

iDeCoの所得控除はどのくらい減税効果があるのか【年収別シミュレーション】

それでは具体的に、iDeCoの所得控除のメリットによる減税効果がどのくらいなのか一例を見てみましょう。

注意点:以下は毎月掛け金を出した場合です。途中で課税所得や掛け金の変更がない前提です。こちらの一例は「イデコ公式HP かんたん税制優遇シミュレーション」を使用して出しています。実際とは異なることがあります。

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iDeCoの所得控除のメリット【金額】をチェックしてみよう

共通の条件として、20歳で加入して60歳まで40年間続けた場合です。

ちなみにiDeCoに出せるお金の毎月の限度額は「加入者区分」によって異なります

以降のシミュレーション一例では、以下のパターン(月/5,000円・12,000円・23,000円・68000円)で見てみましょう。

  1. 最低掛け金額/月5,000円
  2. 公務員の限度額/月12,000円
  3. 会社員の限度額/月12,000円or23,000円(会社員の場合、企業年金のある・なしなどにより異なる)
  4. 専業主婦(主夫)の限度額/月23,000円
  5. 自営業者の上限/月68,000円
①年収が200万円の場合のiDeCoの所得控除による減税金額

上記を見ると掛け金に応じて軽減額が大きくなることが分かります。

②年収が300万円の場合のiDeCoの所得控除による減税金額

自営業者の上限68,000円のケース以外では①と同じ数値です。

③年収が400万円の場合のiDeCoの所得控除による減税金額

このケースでは②と全く同じです。

④年収が500万円の場合のiDeCoの所得控除による減税金額

③より減税金額が大きくなってきました。

⑤年収が600万円の場合のiDeCoの所得控除による減税金額

こちらは④と68,000円のところだけが異なります。

⑥年収が700万円の場合のiDeCoの所得控除による減税金額

やはり年収が上がるほどに所得控除の減税メリットが大きくなってくることが分かります。

iDeCoの本当のメリットは所得控除じゃない?

さて上記のシミュレーション一例をご覧になって、どのような感想を抱かれたでしょうか。

  • 「結局、高所得者の方がお得になるじゃないか」
  • 「所得が低いと減税の金額にお得感が感じられない」
  • 「そもそも収入の無い専業主婦だと所得控除のメリットがないからiDeCoをする気が起きない

などと思われた方もいらっしゃるかと思います。その一面は確かにあります。

ただ、iDeCoは所得控除のメリットを受けられるだけの制度ではありません。その本質は「老後のためのもう一つの年金」にあります。どういうことでしょうか。

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老後の公的年金が減るからiDeCoは重要

2019年8月27日に厚生労働省より「公的年金の財政検証」が発表されました。これは簡単に言うと、「公的年金の健康診断」のようなものです。

5年に一度のペースで公表されます。今回のポイントはいくつかありますが、少しだけ見てみましょう。

公的年金制度の「健康診断(財政検証)」のポイント一例:「減税だけじゃ乗り切れない?」

筆者にとって(そしておそらく読者の方にとっても)印象的なのは次の点でした。

  • 現在20歳の方が現状の高齢者と同水準の年金をもらうには68歳9か月まで働く必要がある

ということでした。

現在定年の多くは60歳ですので、実に8年9か月長く働かなくてはいけません。

※ちなみにこれは今後「日本経済が良かった場合」の楽観的なシナリオです。現実はもっと悪くなると筆者は考えています。

ちなみに30歳以降が今の65歳と同水準の年金を受給するには、次の年齢まで働かないといけないことが数値上算出されています。

  • 現在の30歳→68歳4か月
  • 現在の40歳→67歳2か月
  • 現在の50歳→66歳

ここだけ見ても、何となくiDeCoやつみたてNISAを利用しての資産形成の重要性が見えてきます。

将来、年金を現在と同水準もらうには、現在よりも(短くて)6年~8年4か月働かないといけない可能性がある。

若い人ほど老後のお金は厳しくなる。所得控除のメリットにこだわりすぎないことも重要では

また公的年金制度の「健康診断(財政検証)」では、所得代替率の低下についても触れられていました。

所得代替率:ざっくり言うと、現役世代の今の私たちの手取り収入に対する年金額の割合。低いほど受け取れる年金額が少ない。

いま(2019年度)は所得代替率が61.7%です。

しかし「健康診断(財政検証)」では6つある、どのシナリオでも将来の所得代替率は低下しています。

  • 一番良いシナリオ→51.9%
  • 一番悪いシナリオ→36%~38%

ちなみにこれは賃金が上がり続けるという前提のお話です。しかし直近5年間で賃金が上昇したのは2016年の一年だけでした。

筆者の個人的な考えでは、一番悪いシナリオよりも将来は悪くなる(もらえる公的年金は減る)のではないかと考えています。

その理由は少子高齢化です。公的年金は現役の世代が高齢者にお金を「仕送りする+積立金を上乗せしている形式」です。そして、今の現役世代が年金受給資格を得るころには、ますます若い人が減っていると思われます。

つまり、「未来の私たちに仕送りをしてくれる人が減っている」わけです。そのため、将来のもらえる年金額は構造上減ってしまうと考えられます。

ちなみに6つのシナリオの一番悪いものでは2052年には国民年金の「積立金が枯渇する」ということになっています。つまり「仕送りする+積立金を上乗せしている形式」の「積立金を上乗せしている」部分がなくなって、単純な「仕送り形式(正式には賦課方式という)」になることを意味しています。

早い話が受け取れる年金がさらに減る可能性があります。ちなみに公的年金を受給開始後も、加齢とともに所得代替率は下がる見通しです。

嫌なお話ばかりですが、だからこそiDeCoの所得控除のメリット以外について考えてみることが重要かもしれません。

将来もらえる年金の所得代替率は今61.7%だが、36%~38%(あるいはそれ以下)に下がる可能性がある。

iDeCoの所得控除に関するまとめ

  • iDeCoのメリットの一つは所得控除で実質減税になる
  • あなたの所得控除のメリットはいくら?年収・掛け金別一覧でまる分かり!
  • iDeCoで大事なのは所得控除だけじゃない。iDeCoで未来の自分を助けよう

iDeCoのメリットの一つに「掛け金が全額所得控除になる」というものがあります。

税制面でとても優遇されているのがiDeCoの特徴です。

本文内のシミュレーション一例で見ましたが、基本的に年収・掛け金が大きいほど所得控除のメリット金額が大きくなっていきました。

ただ、iDeCoの本質は所得控除のメリットだけではないと筆者は考えています。

記事の最後の方で触れましたが、これからは若い人ほど、公的年金だけでは老後の生活が成り立ちにくくなると考えられます。

そこで出てくる考え方が「自助努力(自分の老後のお金は自分で形成する)」です。

人によってはiDeCoの所得控除のメリットがない・少ないことがあり、魅力的に見えないかもしれません。ですがiDeCoの本質はそこではないのではないでしょうか。

本記事が読者の方の合理的な資産形成の一助になれば幸いです。

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