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ヨガのルーツは5つの伝統文化だった?ヨガポーズの起源と背景

  • 2019.9.1
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インド文化におけるヨガのルーツ

ヨガティーチャーがクラスの始まりを告げると、生徒たちはマットの前方でタダーサナ(山のポーズ)の姿勢で立ち、「オーム」を斉唱する……そして太陽礼拝を数回繰り返し、さらに様々なポーズを連続して行いながら全身をくまなく動かしていく。生徒たちが身体を伸ばし、汗をかき、呼吸を重ねるにつれ、部屋の温度も高まっていく。1時間ほどすると、ヨガティーチャーはシャヴァーサナ(屍のポーズ)に入るように促す。生徒たちは仰向けで横たわり、その顔には安らぎの表情が浮かぶ。これが西洋で一般的に知られているヨガだ。だがインドで発祥した当時も同じスタイルだったのだろうか? ヨガのアサナ(ポーズ)に詳しい西洋人は多いが、その起源や背景を知る人は非常に少ない。

現代の西洋で「ヨガ」と呼ばれているものは、元をたどると少なくとも5つのインド伝統に行き着く。ヨガ(瞑想修養)、マラカンブ(インドの体操)、アーユルヴェーダ(伝統医学)、カラリパヤット(武術)、そしてタントラ(儀式、マントラ)だ。

5つのインド伝統

ヨガのルーツ

ヨガという語が最初に登場したのは、紀元前1000年頃にリシ(聖仙)たちが古代サンスクリット語で編纂したヴェーダ聖典だった。ヴェーダにはアサナに関する記載はほとんどないが、インド北西部の古代都市モヘンジョダロやハラッパーの遺跡では、バドラーサナのような座位ポーズが描かれた出土品が見つかっている。本来ヨガとは牛や馬と荷台を結びつける「くびき」や「装具」を意味していた。基本的に有神論者であるヒンドゥー教徒たちにとって、ヨガは神と結びつくためのくびきなのだ。

また彼らが信じるブラフマン(梵)と呼ばれる究極の真理は、様々な形をとっている。「真理は一つ。聖者たちはそれを様々な名前で呼ぶ」とリグヴェーダでも記されているように、ヒンドゥー教は多神教ではないが、多元的な信仰が共存している。つまり神に至る道は一つではないのだ。そして古代ヨガではマントラと献身を主に練習していた。マントラは豊作や受胎、保護を神に祈る術の一つとして用いられていた。

ヨギーのサドゥグル・ジャギ・ヴァスデヴによると、ヨガの最初の教えはシヴァから「七人の聖者」に伝えられた。この聖者たちが7つの大陸にヨガを広め、それが様々な形態に発展したと信じられている。シヴァにはいくつもの別名があり、例えば最初のヨギを意味する「アディヨギ」や、動物に囲まれる姿をしたパシュパティ「獣の神」と呼ばれていた。

インドにはスワミラーマやラーマクリシュナなど、動物に愛されるグル(師)が多い。ヒマラヤ研究所(Himarayan Institute)を設立したスワミラーマは、かつてナルマダー川で彼に惹かれて集まったワニに囲まれて瞑想していたという。またインドで最も慕われているグルの一人、ラーマクリシュナの足元にも、よくライオンやシカが座っていた。パシュパティの姿をしたシヴァは、私たちがヨガを通じて動物としての己の性質を熟知し、神と一体化できることを象徴している。

ヨガ101:アサナの起源と背景
ハラッパー遺跡で出土したパシュパティの印章

およそ2000年前にパタンジャリが編纂した古典ヨガの経典「ヨーガスートラ」にはアシュタンガヨガの八支則の概略が記されている。ヤマ、ニヤマ(道徳的規範)、アサナ(ポーズ)、プラーナヤーマ(生命エネルギーのコントロール)、プラティヤハーラ(制感)、ダーラナ(集中)、ディヤーナ(瞑想)、そしてサマディ(合一、統合)だ。これらは段階というよりも、一つのものが8つに分かれたイメージで、同時に実践すべきとされている。

面白いことに、アシュタンガヨガと仏教の八正道には類似点が多い。国際的なヨガティーチャー、プラディープ・テオティアは、ブッダを史上最も名高いヨギと呼ぶ。ヨガと同様に、仏教でも瞑想と道徳規範に重きがおかれ、美徳を培いマインドを鍛錬することにより私たちはイシュワラ(自在神)と一体化し、カイヴァリヤまたは魂の完全な解放(仏教ではニルヴァーナと呼ばれる)に至るとされている。パタンジャリは偉大な聖者であったが、西洋で親しまれているアサナ練習の創始者ではなかった。経典でもアサナについては一切触れていない。となると、アサナの起源を探るには他のインド伝統を見る必要がある。

マラカンブとインドのスポーツ

マラカンブは、レスリングと体操の要素を合わせ持つインドの伝統スポーツだ。マラは戦士、カンブは柱を意味する。この体操では通常は高さ2メートル,基部の直径が22センチ、上部の直径が12センチの柱が使われる。柱の上でバランスを取りながら回転したり、身体をねじり、伸ばし、ヨガアサナを行うため、アスリートには強さ、柔軟性、敏捷性が要求される。最も印象的なマラカンブのポーズの一つ「フラッグポール(旗のポーズ)」では、柱に対して身体を真横にした状態でホールドする。このスポーツが最初に歴史に登場するのは、1153年にソメシュワラ三世が軍隊練習について書いた古文書マナソラーサだ。

それ以前の記録がないのは、当時のインドが8世紀からイスラム教徒の支配下にあり、多くのインド文化活動が禁じられていたためと考えられる。現代のヨギーたちがマラカンブの練習を見たら、普段マットの上で練習しているアサナの多くが空中で行われていると気づくだろう。本来それらはエアリアルヨガだったのだ。次に踊り子のポーズを練習するときは、柱の上にいると想像しながらやってみよう。

ヨガ101:アサナの起源と背景
カラリのトレーニング風景カラリパヤット武術
アーユルヴェーダとカラリパヤット

インド武術には武器訓練や、格闘技、曲芸、レスリング、競争、弓術が含まれる。レスリングに関する記載は、リグヴェーダや古代インドの叙事詩ラーマーヤナやマハーバーラタにみられ、これらの物語には偉大な戦士たちが登場する。素手で岩を砕くビーマや、鷹並みの視力を持ち、飛ぶ鳥の目を射抜く弓の名手アルジュナ、風のように走り、飛び回る猿王ハヌマーンなどだ。

カラリパヤットは、南インドのケララ地方で誕生した世界最古の武術と言われる。言い伝えによると、カラリを習得したボーディダルマ(菩提達磨、アジア大陸における武術の創始者)が仏教と武術を中国に伝道し、それが道教と中国武術と統合されたという。戦士のポーズ(ヴィラバドラーサナ)1,2,3はカラリの実践として行われている。

さらにケララは、インドの伝統医学アーユルヴェーダの発祥の地でもある。二千年前に書かれたアーユルヴェーダの医学書「チャラカサンヒター」には、眼科手術や接骨、腎結石の除去のような高度な医療処置も記載されている。アーユルヴェーダではドーシャと呼ばれる3つのエネルギーを基本としている。これらは精神と身体を司るものとして、カパ(水と地)、ピッタ(火と水)、ヴァータ(風と空)に分けられ、この3つのバランスが調っていると私たちは快適で健康な状態でいられる。インドのアーユルヴェーダ・プラクティショナーたちは医師として、長年にわたってヨガ、薬学、栄養学のトレーニングを受けており、ドーシャの乱れを診ることで、セラピー効果のあるアサナや植物療法、食事指導などの治療を決めている。

ヨガ101:アサナの起源と背景
カラリパヤット武術
タントラ

タントラは「拡大して解放する」という意味で、私たちの内部に眠るエネルギー(クンダリーニ)を覚醒させ、モクシャ(輪廻転生からの解脱)に導く秘教とされている。タントラの主神「デヴィ」は偉大なる母を意味する。タントラ聖典の多くは男神のシヴァと女神のシャクティの会話からなり、そのうちの一つ、ヴィギヤン・バイラブ・タントラでは、シヴァが112の瞑想技法を伝授している。

タントラは西洋でますます人気を博しているが、セックスの技法ばかりが強調されるために大きな誤解を生んでいる。タントラのセクシャリティは行為ではなく象徴的なもので、愛する相手に魂が触れる時に生まれる神聖なエネルギーをいう。またバクティ(献身)こそがタントラの重要な土台だ。バクティでは主に神に捧げるマントラとプージャ(礼拝)を練習し、その最初にアサナが行われることが多い。その儀式では、まず神に自分の家や心の中に“座っていただく”ように招きいれる。この練習でのアサナは「座ること」を意味している。

タントラの時代、アサナはダンスと合わせて身体を使って神を称える方法の一つとして発達した。ナタラジャーサナ(舞踏の王のポーズ)は、カラナと呼ばれる

108のポーズを含むターンダヴァ(宇宙の創造と破壊のダンス)を舞うシヴァ神の姿に由来している。カラナには私たちが今日練習しているアサナの原型がいくつかみられる。ハタヨーガプラディーピカや、巻数の多いティルマンディラムのような経典にはゴムカーサナ(牛の顔のポーズ)やシンハーサナ(ライオンのポーズ)などのおなじみのポーズが多く記載されている。だがそれより前の時代はアサナは必ずしも健康促進のためではなく、苦行として行われていた。今もインドには、片腕をあげたままのヨギや、12年間横たわらないと誓って苦行を行うヨギたちがいる。

ヨガ101:アサナの起源と背景
このヨギは40年間片腕をあげたままでいる。

ヨガの発祥はインドの発祥と同じくらい古い。多くの考え方や様式を含む広大な学びであるが、そのすべての根底にあるのは、一人一人の小宇宙としての魂(アートマ)と大宇宙の魂(プルーシャ)である宇宙意識との繋がりや一体化の理念だ。この一体化は精神と身体と心の統合によって実現する。ヨガが発祥したのはインドだが、その教えは普遍的で万人に通じるものであり、一体化を目指す私たちの旅に様々な道を提供してくれる。

教えてくれたのは…ゼニー・バガツィング・オグライセグ
ゼニーは14年以上ヨガを教えている。彼女の最初のヨガティーチャーは「オーム」を教えてくれた母親だった。ゼニーはハワイ・スクール・オブ・ヨガの創立者であり、200時間、500時間ティーチャートレーニングで指導している。インド伝統に夢中で、インドの文化やスピリチュアリティをあらゆる方面から研究し、「歩くヨガ事典」と呼ばれている。日々アイアンガーヨガやマントラ、瞑想を実践し、聖典を研究している。フリータイムは家族と共にハイキングやビーチを楽しんでいる。

ヨガハワイマガジン/「Yoga 101: The Origins and Context of Asana」

by Zeny Bagatsing-Ogrisseg
Translated by Sachiko Matsunami

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