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ふたりの恋物語【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第32話】

  • 2015.3.27
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クリスマスはどうしてこんなに街が色づくのだろう。

みとれてしまうほどのイルミネーション。キリストの血の色の赤と永遠の命を表す緑を持つポインセチアが自由が丘の軒先に並ぶ。花や靴下や松ぼっくりが飾られたクリスマスリースがワゴンを占領する。

思わず手に取りたくなるようなかわいいキャンドルが棚にズラリと並ぶ。そしてスイーツの街自由が丘。「このシーズンが一番華やぐわ」とデコレーションされたケーキ達が独り言を言っている。大井町線の線路沿いの住宅街。

「慎ちゃん、こんなわかりにくい場所にお店あるの?」

前をスタスタ歩く慎吾の背中に向かって話しかけた。昨夜のわだかまりでもやもやしたまま迎えたクリスマス。こんな気持ちで慎吾の愛にこたえていいのかまだ迷いがある。

「うん、見つけた。ネットじゃわかんないから、ちゃんと下見もしたんだ。駅周辺のレストランは、女子率9割で、なんか恥ずかしい感じだから…」

慎吾が振り向いて答えた。いつものはにかむような笑顔。

「女子率9割。たしかにそうだね。慎ちゃん、そんな街でバイトしてるんだね。仕事場で声かけられたことない?」

桃香が質問すると慎吾は困ったような顔をした。

「…ある。何人も。LINEおしえてって言われる…」

桃香はドキっとした。そうか、慎吾は背も高くて、かっこいい。顔も寂しそうな目元が女性達にはグっとくるものがあるにちがいない。慎吾は自分のことをずっと好きでいてくれるという安心感がチラっと揺らいだ。

そうだ、慎吾に恋心を抱く女性は自分ひとりじゃないんだ、東横線に乗っている人達それぞれに恋物語があるってこの前思ったばかりなのに。

「慎ちゃん!」

桃香は慎吾の背中に急に抱きついた。慎吾は驚いて立ちすくむ。

「どうしたの…周りに人、歩いてるよ…」

人一倍恥ずかしがり屋の慎吾は照れてしまい、どうしていいかわからないような妙な顔つきになる。

(続く)

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(二松まゆみ)