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“良い大学”では生き抜けない時代。子育ての新しい道筋は?【「ちゃんと失敗する子」の育て方 Vol.1】

  • 2019.8.19
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現在の教育は、なるべく失敗を避けて、効率的に生きることが良しとされている」と語るのは、「花まる学習会」の西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん。

「完璧に正しい子育てなど、ありません」と話し、花まるグループ「西郡学習道場」代表を務める西郡さんは、「花まる学習会代表」高濱正伸さんの高校の同級生です。創立時から二人三脚でやってきて、初期の頃は、2人で牛乳配達をされていたこともあったそう。

そんな西郡さんに、これからの時代を生きるために必要な力について、お話を伺ってきました!
西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん
1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。「花まる学習会」とは
「数理的思考力」「読書と作文を中心とした国語力」に加え、「野外体験」を三本柱として、将来「メシが食える大人」そして「魅力的な人」に育てる学習塾。代表は、数多くのメディアでも紹介された高濱正伸さん。

■子どもに求められる能力が変化してる!



西郡さんは言います。「これから先、子どもたちが生きていく社会は、目まぐるしい速さで変化していくことでしょう」

人口知能(AI)の進化と普及は、人の働き方を大きく変えていくといわれています。今後10年~20年のうちに、今ある仕事の半分近くが、自動化によって代替されていくとさえ予測されています。

10年後は、どのような世の中になっているのか? それは、現時点では誰にもわかりません。そんな「変化が激しく、答えのない時代」を生きる子どもたちに対して、いま、親は子どもにどんな力をつけてあげれば良いのでしょうか?

■「受験に合格する力」では、生き抜けない



「いまの学校教育が育てているのは、“受験に合格する力”で、いわば“対策力”(知識を体系的に得る力)です」(西郡さん)

対策力というのは、「こういう問題が出るから、こういう勉強が必要だ」という、前提ありきの力です。しかし、2020年度からは大学入試センター試験が廃止され、新しい共通テストが始まることが決まっています。

大学入試そのものを、“新しい時代を切り拓くための力”が身についていなければクリアできないものに変える。そうすることによって、高校以下の教育もその方向に向かわせる。今回の大学入試改革には、そうした狙いがあると考えられています。

■「良い大学」に変わる、新たな指標とは?

ママたちも、「良い大学に入るための学力」と、「社会で生きていく力」が、違うことには何となく気がついているはず…。でも、「良い大学に入れば、良い会社に入れて、良い生活ができる」という幻想を手放せるほど、明確に「次なる指標」は見えていません。

だから、つい、従来の「良い大学に行くために、テストで良い点を取れればそれでいい」という価値観に拠りどころとしてしまう…という堂々巡りを繰り返してしまっているのではないでしょうか?

でも、前述のとおり、「これからは、大学に入ることそのものにも、いままでとは違う力が求められるようになっていくのです」(西郡さん)


■「失敗が怖い母」は、どうしたらいい?



従来の勉強だけでは受験も勝ち抜けない時代になっているいま、子どもに、本当に必要な力を、どう育てていけば良いのでしょうか?

西郡さんは言います。「これから先の時代を生き抜くための力とはどんな力なのか、どのようにして育てていけば良いのか。本連載を通じてお伝えしますが、そこには、『失敗』が不可欠なんです」

「お子さんには、失敗をさせてあげてください」

これは教育関係の取材をすると、必ずといっていいほど出てくるフレーズです。けれども、「失敗をしてはいけない」という教育を受け、「失敗は、よろしくない」という社会で仕事をしている筆者自身、失敗が怖くて仕方ありません。おのずと、自分の子どもに対しても、「失敗しないように」という思考回路で接してしまうのです。

■失敗しない人は、いない



「大切なのは、子どもに『転ばぬ先の杖』を渡してあげることではありません。転んだ後、どうにか自分の力で立ち上がる。そのための方法を自分でつくりあげていくことができるように、大人たちが導いてあげることです」(西郡さん)

そもそも、「失敗をしない人」は、いません。

だれもが東大に合格できるわけではありませんから、どんなに勉強をしても東大に入学できない人は必ずいます。だれもがプロスポーツ選手になれるわけではありませんから、どんなに練習をしてもスポーツ選手になれない人もいます。仮に東大に合格しても、また、スポーツ選手になれたとしても、そのなかではさらに厳しい競争が待っています。

つまり、仮に、何かで「一番」になったとしても、裏には数えきれない失敗や挫折があるはずです。それを乗り越えたからこそ成長がある。「『成功者』や『一流』といわれる人ほど、多くの『失敗』を経験しているのです」(西郡さん)
<「失敗する子」の育て方>
1)知識を体系的に得る力(対策力)のみでは、これからの時代は生きていけない
2)大学に入ることそのものにも、今までとは違う力が求められる
3)これから必要なのは、「ちゃんと失敗する力」である

■花まる学習会/西郡学習道場代表 西郡文啓さんの新著
『ちゃんと失敗する子の育て方』


高濱 正伸、西郡 文啓 (著)/総合法令出版 1,300円(税抜き)●高濱 正伸さん
花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。
ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳パズルなぞぺー』など、著書多数。
花まる学習会公式サイト:http://www.hanamarugroup.jp/hanamaru/
●西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん
1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。
高濱さん曰く、「私が経営者という立場で運営部分に頭を働かせているときも、彼はただただ、子どものことだけを考えてきた人間です。頭のてっぺんから足のつま先まで、根っからの教育者で、どんな子でも一度も見放したことはありません」。

(楢戸ひかる)

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