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塾もない秋田の村が「学力日本一」の秘密は、家庭でできるすごい学習法

  • 2019.7.22
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どうしたら子どもの学力を伸ばせるのか? いかに勉強グセをつけさせるか? 日々頭を悩ませている親御さんは多いことでしょう。

そのヒントとなるのが、秋田県にある人口約2500人の山間の小さな村、東成瀬村。コンビニは1軒だけ、民間の塾やスーパー、書店もない。そんな山村が文部科学省の全国学力テストにおいて、「学力日本一」に!

いったい、この村で、どのような学力向上の取り組みがなされているのか? 普通に考えても、単なる教育プログラムの充実だけではダメで、やはりそこには子どもが率先して学ぶ気になる“何か”がないと学力日本一は難しいと思うのです。


■人口約2500人の山村が学力日本一になったワケ

「子どもが進んで学ぶ」。これを可能にしている学習法のいくつかが東成瀬村にはあります。そのひとつが、秋田県内の多くの小中学校で採用されている「自学ノート」です。



自学ノートとは、自分で勉強をする内容を決めて、家庭で学習するための自主学習ノートのこと。この「自学ノート」を、家庭で取り組むにはどうすればいいのか。書籍『「学力日本一!」秋田県東成瀬村のすごい学習法』からひも解いていきたいと思います。

「自学ノート」で行うのは、得意教科をより理解する勉強でも、苦手教科を克服する勉強でもどちらでもいいんです。子どもたちが自分で「これを今日はやる」と決めて、自宅で自主学習する時間を持つ。このノートを東成瀬村では徹底的に活用しているそうです。

とかく、子どもの学習というのは、親の口癖「勉強しなさい」を代表するように、大人からの押しつけがほとんどではないでしょうか? さらに「あれしなさい、これしなさい」とついついせかし、「なんでこれができないの」と責めてしまう。

対して、自学ノートは自主性を重んじます。主導権は子ども。他者からの押し付けではなく、自分で課題を決めて実行する。親や教師はあくまで、実行しようとする子どもを見守り、少しだけ後押しするに過ぎません。

<自学ノートのねらい>
●子どもたちが自分で計画して、実行
→家での学習を習慣化し、自ら学習の計画を立てる。

●子どもたちが自ら課題を見つけ、解決
→学業のつまずきをいち早く発見し、解消する。

●子どもたちが自ら進んで興味のあることにトライ
→学ぶことの面白さを子どもたち自身が見い出す。
ただ、村ではさらに広い見地をもって取り組んでいるそう。「自学ノート」の最終目標。それは、子どもに自立を促し、自分が何を目指しているのか人生を設計する。こうした最終目的につながっているといえそうです。


■学力アップする「自学ノート」のヒミツ

では、自学ノートとはどういうものなのでしょうか?



写真をみればわかるように、パッと見ると、とくに変わった取り組みにはみえません。すぐにでも取り入れることができそう。これが基本です。

ただ、細かく目をとおすと、よくできた工夫がなされています。自学ノートには5つの約束があるのですが、これがじつに理にかなっているんです。
①日付(〇月〇日)を書く
<立ち返るポイント>
・いつの勉強だったかをすぐ思いだせ、復習などに有効
・毎回決まった位置に書いて、目的の日をすぐ検索
②取り組む内容(計算ドリルの〇ページなど)を書く
<立ち返るポイント>
・ノートを開けばすぐにやった内容がわかる
・ドリルなどはページや番号を入れると、答え合わせがスムーズ
・将来的に自分で学習計画を立てる力の基礎となる
③取り組んだ時刻・時間(〇時〇分~〇時〇分まで)を書く
<立ち返るポイント>
・量のノルマがない代わりに、勉強時間の目安を可視化
・勉強時間は学年×10分+10分が基本。2年生なら2×10分+10で、40分が目安
・勉強時刻から生活が乱れていないかチェック
・ちょうどいい勉強量を見つけ、正しい生活のリズムを作る
④めあてで弱点を克服する
<立ち返るポイント>
・ビジョンをもって学習に取り組む
・最初はクリアしやすいことをしながら、じょじょにレベルアップ
・最後は、苦手なことや弱点に積極的に取り組むよう意識改革!
⑤振り返りで次につなげる
<立ち返るポイント>
・自分がどれぐらいのことができて、次はどう改善すれば目標を達成するのか考えさせる
・要点をまとめて書くトレーニング
・次に学ぶことへの興味や好奇心、もっと上を目指してやる気を起こさせる





■子どもの可能性を広げるための親の役割は…



自学ノートはうまく活用すれば、子どもに無理を強いることなく、学習に向かわせるとともに、子どもにいい意味で主体性をもたせることで学ぶ意欲に刺激を与え、子どもの可能性を広げます。

そこで大きな役割を果たすのが親です。みなさん、ここからが親の出番です(笑)。

このノートにおいての親の役割は、子どものやったことをよく見て丁寧にアドバイスしてあげること。きちんとできていればほめる。抜けていることや間違っているところは、叱らない。まずは必ずいいところをみつけ、「ここはこうしてみたら」と責めるのではなくアドバイスに徹する。

たとえば字が汚かったら、まず「もう少しきれいに書いてみたらかっこいいよ」といったように子どもに提案してみる。ものは言いようです(笑)。



子どものがんばりを、親がきちんと認めてほめてあげる。じつはこれ、普段の生活では厳しさの方が先に立ってしまい、「ほめる」ことができていないのではないでしょうか? 自学ノートの成功と失敗の分かれ目は、じつは親にかかっているのかもしれません。

たしかにわが身を振り返ってみても、あまりわが子も勉強したノートは見せたがらない。東成瀬村の自学ノートの取り組み方を知ると、それは小言を言われることが明白だからという気が…。裏を返せば、子どもを尊重してあげれば自学ノートは親と子を学習をテーマにしたコミュニケーションツールとなれる予感がします。

■「学び」の本来の意味を親自身が考えるとき



ただ、注意しておきたいことがあります。おわかりのように、自学ノートは人よりも先に進むことや量を競うものではありません。

子どもが目標をきちんと自分で決め、それをしっかりとやって理解する。この繰り返しがいつしか大きな力になる。ついつい学習に対して、親は費用対効果や即効性を求めがちですが、自学ノートは一夜にして学力を伸ばしたりするものではありません。

長い時間をかけて学ぶ力を養う。目先ではなく、長い目で東成瀬村は子どもを見ています。

このスタンスは、とても大切ではないでしょうか?
いろいろな知識を得て、物事の理解を深めるのは楽しいこと。そう、本来、学びは楽しいことであるはず。でも、人間としての成長よりも、テストでいい点数をとることを優先し、子どもに必要以上に無理を強いている気がしてしまう現代。

私たち親世代は、本来の「学び」の意味についてもっと考える必要がある気がします。親の意識が変われば、きっと子どもたちとの接し方も変わってくるはず。環境をきちんと整えてあげれば、子どもは学ぶことを嫌がらない。自学ノートをはじめとする東成瀬村の学習の取り組みはそのことを教えてくれます。

■参考書籍
『「学力日本一!」秋田県東成瀬村のすごい学習法』

(主婦の友社/1404円(税込))


2007年に再開された「全国学力テスト」で8年連続1位の秋田県。その秋田県の中でもトップクラスの学力を誇るのが人口2600人、村の93%が山林という、小さな村、東成瀬村。
村にはスーパーマーケットはなくコンビニはも1つだけ。塾もないこの村の子どもたちはなぜ優秀な学力を誇るのか? その驚きの学習方法に迫ります。

(水上賢治)

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