1. トップ
  2. 恋愛
  3. 妊娠中に、がんが見つかったら!?「がんは情報戦」に役立つ4つの知識【女性のがんとお金の話 第1回】

妊娠中に、がんが見つかったら!?「がんは情報戦」に役立つ4つの知識【女性のがんとお金の話 第1回】

  • 2019.7.19
  • 11582 views


美恵子さん(34歳・仮名)は、3ヶ月前に乳がんを手術で摘出後、妊娠を継続しながら抗がん剤治療を受けています。

治療の副作用で脱毛しているためウィッグですが、「おなかの子は女の子です」と臨月のおなかを愛おしそうに触る表情からは満ち足りている様子が伺えます。筆者は、美恵子さんにお会いして、「医学はここまで進歩していたのか!」と衝撃を受けました。

■妊娠とがん治療の両立を目指す医療



「がん」という病名を聞いて、どんなイメージを持ちますか?

聖路加国際病院の看護師で日々がんの治療のこと、生活のこと、仕事のことなどでさまざまな相談を受ける「がん・相談支援室」の橋本久美子さんは言います。

「妊娠中に、がんが見つかった。もしくは、がんになったけれども、これから赤ちゃんが生みたいという人に伝えたいことがあります。それは、『どうか怖がらないで、安心して! 正しい情報を入手して、赤ちゃんを、そして人生を諦めないで欲しい』」。

聖路加国際病院では、妊娠とがん治療の両立を目指す治療を提供し、サポートしています。橋本さんは、がん相談室支援室で、そんながん患者さんたちに寄り添ってきました。

■女性特有がんは、若い世代の発症が急増中



妊娠とがん治療が、両立できる時代の今だからこそ、これから「妊娠するかも」「妊娠したい」という世代に知っておいて欲しいことがあります。

それは、女性特有のがんの発症が若い世代に急増中だということ。厚生労働省の事業である「がん対策推進企業アクション」が発行する小冊子によれば、子宮頚がんがいちばん多いのは30代前半ですし、乳がんは40代後半です。

子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、ヒトパピローマウィルスへの持続的な感染が原因といわれています。このウィルスは性体験がある女性の8割近くが感染経験を持つ一般的なもので、そのうちのごく一部のケースでがんを発症します。近年、20代、30代の若年層に子宮頸がんが急増しています。

乳がんは、女性がかかるがんの中でもっとも多く、乳がんだけで交通事故死の2倍以上の方が亡くなっています。乳がんにかかる人はこの40年で約7倍に増加しています。

<性別・年齢別がん罹患数>






■「がんになる可能性あるかも…」と思ったら



「もしかして、私もがんになる可能性はあるかも…」と思った時が、チャンス!

がんサバイバーであり、ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんは言います。「若い世代の女性にこれだけがんが増えている今、『もしかして、私も』と思った人こそ勝ちですよね。なぜなら、情報は力ですから」

「もしかしたら、自分も…」と、今、ちょっと一瞬、立ち止まって情報に触れてみる。そんなあなたに、「がんの知識」でとりわけ大切なことを4つお伝えしましょう。

▼がんの知識1、国が推奨するがん検診



国が推奨しているがん検診は、次の5つです。

<推奨されているがん検診5つ>




子宮頸がん検診、乳がん検診、大腸がん検診は、死亡リスクを下げるということが国際的にも証明されている検診です(※1)。

胃がん検診、肺がん検診も有効性があるとして推奨されています。多くのがんのなかでも、これらはとくに検診に向いている「がん」です。


▼がんの知識2、がんになっても妊娠できる可能性はある



「これから妊娠を希望しているのであれば、まずは『がんになっても、妊孕性(にんようせい)は温存できることもある』ということは知っておいて欲しいです。

その上で、自分で多少の知識武装はしておいた方がよいかもしれませんね。なぜなら、がん専門医は、『がん治療』を主軸に物事を考えがちです。たとえば卵巣がんの患者さんの多くは、出産可能年齢を超えた高齢者です(※2)。

担当医に妊孕性の知識が十分でなければ、卵巣がんの治療に、『妊孕性温存』という視点が抜けてしまうケースは、実際に起こり得るんです」(黒田さん)。


▼がんの知識3、がん治療にはお金がかかる



「がん告知を受けると、手術を含めた治療が流れ作業のように行われていきます。それが始まってからの私の正直な感想は、『がんって、お金がかかるのね!』でした」(黒田さん)


▼がんの知識4、がんになったら保険に入れない



「『病気になったときに、保険を使う』ということは知っていても、『がんになったら入れない保険の方が圧倒的に多い』ということを知らない人は多いですね。

元気なとき、『もし、自分ががんになったら、保険に入れなくなる』なんて考えてもみないでしょう?

でも、たとえば、夫婦型の保険に入っていたとき、妻ががんになってしまうと、この先に妻の保障がなくなることを避けるために、夫の保険の見直しができないというケースは、少なくありません」(黒田さん)

黒田さんは、こうも言っていました。「あるがん患者さんに『がんになって変わったと感じたことは?』と質問したら、『がん患者になってみて、初めて見えてくる世界というのがあるということを知った』と答えてくれた方がいました。『がん患者の世界』というのは、すごく奥深いですよ(笑)」

次回は、そんな黒田さんが実際にがんになった時のお話しを伺います。

<参考資料>
※1.国立がん研究センター:がん検診について「受診率対策の科学的根拠」
※2.国立がん研究センター:最新がん統計

<参考サイト>
※がん治療の中には、生殖機能に影響を及ぼすものがあります。妊娠中のがん治療については、詳しくは病院にご相談ください。
参考サイト:国立がん研究センター「がん医療と妊娠の相談窓口とは?」
■今回のお話を伺った黒田尚子さんのご著書
『がんとお金の本』
黒田尚子さん/ビーケイシー(1,620円(税込))


●黒田尚子(くろだ なおこ)さん
1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2009年乳がん告知を受け、2011年に乳がん体験者コーディネーター資格を取得。自らの実体験をもとに、がんをはじめとした病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行う。
現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・Webサイト上での執筆、個人相談を中心に幅広く行う。

(楢戸ひかる)

元記事で読む
の記事をもっとみる