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ジブリのCM制作条件は「好きなように作る」! 鈴木敏夫プロデューサーが語る『ショートショート』の魅力

  • 2019.7.17
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1992年にスタジオジブリが初めて手掛けた短編作品「そらいろのたね」から、2016年までの、全32本に及ぶショートショート作品を収録した『ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016』が、本日7月17日にブルーレイとDVDで発売された。これらのショートショートには、宮崎駿をはじめ、近藤喜文、百瀬義行、稲村武志、田辺修、橋本晋治、大塚伸治、近藤勝也、宮崎吾朗などが名を連ね、スタジオジブリを支えてきた歴代の監督やアニメーターたちが集結している。

【写真を見る】鈴木敏夫プロデューサーのアトリエで行われた取材は、90分にわたって白熱!

鈴木敏夫、約四半世紀にわたるスタジオジブリが詰まった『ショートショート』を語る!
KADOKAWA

この発売に合わせ、宮崎駿らと40年にわたって共に作品を制作してきた株式会社スタジオジブリ代表取締役の鈴木敏夫プロデューサーが取材に応じ、90分にわたって作品にまつわる裏話から、自身のプロデュース論までをタップリと語ってくれた。今回は、その前編をお届けする。

「CM制作のきっかけは、“ギブ・アンド・テイク”でした」

――2001年ごろから、スタジオジブリでは長編映画だけでなくて幅広く映像を作っていこうという話になり、今回収録されているような企業CMやスポット映像などを作りはじめたとのことですが。

「ジブリが始まってから十数年の間に作ってきた映画で協力いただいた、様々な企業の方から『CMを作ってくれないか』って依頼が来るようになって。それは、断りにくいですよね(笑)。そんな“ギブ・アンド・テイク”のなかで生まれてきた作品群ってなわけです。こんなことを言うと夢も希望もないんだけど、僕は本当のことしかしゃべらない性格なんでね。ジブリのなかには、大変な腕を持ちながら、なかなか仕事をしないような、面倒くさいアニメーターもいまして(笑)。そういう人たちに『CMを作って稼いでいるから会社に貢献している』と、ジブリにいる絶好の言い訳を作る機会かなと。もう1つは、若いアニメーターたちの勉強の機会として捉える。そういうわけでと『じゃあ、CMをやろうか』となったっていうのが実情ですね。ただ、映画では出来ないような、腕のあるアニメーターたちが日ごろ“やってみたい”と思ってきたことをショートショートでやれたのはおもしろかったですね」

ハウス食品「おうちで食べよう。」シリーズCM
[c]2015 Studio Ghibli

――企業CMとかを作るとなると、クライアントの要望とのバランスが出てくるかと想像するのですが、クリエイティブに関して、依頼主から「もっとこうしてほしい」などの注文はなかったのでしょうか。

「簡単なんですよ。こちらから条件を出すんですよ。“好きなように作る”って (笑)。新しく仕事をする方には必ずね『注文に答えるということをやったこともないし経験もないんで、下手なんですよ。だから、まず好きなようにやらせてもらえませんか。で、ダメだったらやめましょう』って言うの。態度でかいですよね(笑)。でも、そのほうがいいものができると思ってるんですよ。それと、引き受ける時に“単独の商品のCMは作らない”と、1つだけルールを作ったんです。だから、ジブリの作っているものは企業広告が多いんですよ。そうなると、クリエイティブはコントロールしやすいですよね。いまだから言えるんですが、例えばハウス食品の“おうちで食べよう。”っていう企業広告、商品がほとんど出てこないでしょう?これはそういう約束で引き受けたんです。あれは宮さん(宮崎駿)が全体コンセプトを考えたんですが、自分でやっておきながら、途中で僕に、『カレー出さなくていいの?』って言うんです(笑)。僕がどれだけ苦労してカレーを出さないように約束を取り付けたかを説明しましたよ。案外ね、彼はそういうことをすごく気にする人なんです」

【写真を見る】鈴木敏夫プロデューサーのアトリエで行われた取材は、90分にわたって白熱!
KADOKAWA

「プロデューサーにとっては、15秒でも2時間でも、やることは同じなんです」

――鈴木プロデューサーはこれまで、長編のプロデュースも多く手掛けられていますが、短編をプロデュースするうえでのこだわりや心掛けなどはありますか。

「プロデューサーというのは作品を完成させて世の中に出す、という仕事なんですよね。その意味では、ショートショートも長編も変わらないです。しばらくやってみて、『ショートショートって、あんまり実入りのいい仕事じゃないな』ってわかったんですよ。アニメーション作品を作るとなると、キャラクターを作らなくちゃいけない。どういう家に住んでるんだとか、状況設定によって、大道具や小道具に相当するものを考えなきゃいけないでしょ。それで、音楽も作り、声も入れる。15秒でも2時間でも、やらなきゃいけないことは同じなんですよ。それだったら、少しでも長いほうがいいなって(笑)。本当は、ショートショートでは四角形と三角形を動かすとか、そういうことをやりたい。アニメーターが『こういうことやってみたい』っていう時は、そういう実験的な要素が多いんですよ。ものに命を吹き込んで動く楽しさがある。たぶん子どもが一番喜ぶと思うんですよね。だから、あんまり凝ったもの作ってもしょうがないんじゃないかって、どこかで僕は思ってるんです」

伊藤園Webアニメーション「となりのおにぎり君」
[c]2016 Studio Ghibli

――スタジオジブリに集っている凄腕のアニメーターの方々は、一枚の絵を丁寧に描くことに長けているというイメージがありましたが、それよりも絵を動かしたいという気持ちの方が強いのでしょうか。

鈴木「意外に思われるかもしれませんが、芝居が上手い人ほど、一枚絵は上手く描けないんです。例えば、宮崎駿は、こちらが頼んでも、ほとんど自分でポスターを描こうとしないんです。もうしょうがないから、僕が毎回下書きを適当に描いちゃう(笑)。だから、ジブリのポスターって大体、決まるまでに5分しかかからないです。それで宮さんのところに持っていくと、『ここんところにさ、犬入れようよ』とか言うぐらいのものです」

「尺が短いものほど、世間の目は厳しくなります」

終始和やかムードで行われたインタビュー。ここでは載せきれなかった映画談義もたっぷり!
KADOKAWA

――「長編ばかりがジブリじゃない。あれもこれも正真正銘ジブリ作品でした」とコメントを寄せられていますが、鈴木さんの思う“ジブリらしさ”について教えてください。

「ジブリでやっちゃいけないことって、まあ公序良俗に反さないこと。でも、やっぱり作品って公序良俗に触れたほうがおもしろいですよね (笑)。そういう意味では、ショートショートだと、ちょっと尖ったことも出来ますよね」

――先ほど、“ジブリっぽい”というお話がありましたが、作品集に収められている百瀬ヨシユキ(義行)監督と中田ヤスタカさん(DJ・音楽プロデューサー)が組まれたSF3部作(2004年の『ポータブル空港』、2005年の『space station No.9』『空飛ぶ都市計画』)は、ジブリらしさもありつつ、映像と音も含め最もジブリから離れた作品のように感じますが。

「当時、中田くんがYAMAHAの所属で、『ジブリでプロモーションビデオが作れないだろうか』という打診があったんです。ちょうどそのころ、これまで手書きだったアニメーションにCGが導入されはじめて。百瀬さんは、日本で初めてテレビシリーズCGで使った作品(『子鹿物語 THE YEARLING』)に関わってる人なので、ジブリでCGを実験するいい機会かなと思ったんですよ。だから、ジブリとは肌合いの違うものが出来るってことは、もう最初から覚悟していたというか、ここでやったことが未来を切り開けばいいなという思いでした。中田くんの曲を聞いた時 『あれっ』と思ったんです。ベースになってるのは60年代で、百瀬さんも60年代をリアルに過ごしてきた人。だとしたら、かたや音楽、かたやCGでドッキングが上手くいくんじゃないかなって思ったんです。なかなか、そういう練習をする機会ってないですから。実際、百瀬さんは『ホーホケキョ となりの山田くん』のCGとか、いろんなジブリ作品で活躍してくれましたよね」

『ジブリがいっぱいSPECIAL ショートショート 1992-2016』
[c]2019 Studio Ghibli

――こうして、ショートショートというかたちで凄腕のアニメーターがとことん作った作品が残り、引いてはスタジオジブリの仕事を残していく…という意味合いにもなっているのではないですか。

「こうやって見てると、1本1本が懐かしいですよね。本当に多彩でね。僕はさっき申し上げたように、新人研修にも役に立つかなと思ったんだけれど、やっぱり尺が短いものほど、世間の目が厳しいですよね。そうすると、必然的に上手い人に頼まざるを得なくなる。だから、こうしてみると、スタジオジブリ歴代の、腕効きアニメーターの仕事がダーッと集まったものになりました」

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後編では、鈴木敏夫プロデューサーが“優秀”だと思うアニメーターの条件から、40年以上伴走してきたからこそ分かる、宮崎駿監督のものづくり論までを語ってくれた。(Movie Walker・取材・文/編集部)

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