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運動エラーを改善する方法【前屈の場合】|理学療法士がヨギに知ってほしい体のこと

  • 2019.7.10
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Cover image by Getty Images

運動のエラーを見つけて改善することができるようになるには

運動にはいくつもの選択肢があります。ひとつの運動を実施するにも、関わる関節・筋は多様で、例えばグループで同じアーサナを実行するときにも、隣の人とあなたとが同じ運動を行なっているとは限りません。

前屈に置きかえて考えてみましょう

試しに、前屈を例に考えてみましょう。立った状態から前屈をするとき、あなたはどこに窮屈さを感じますか。同じ質問を10人にすれば、7名くらいの人が「太ももの裏側が突っ張る」と訴えると思います。それは、太ももの裏側のハムストリングスの柔軟性が低下している人が多い、という事実を示しています。身体には「多くの人に共通して起こる問題」というものがあるのです。では、ハムストリングスを緩める、ということがこの問題の解決に繋がるのでしょうか。

弛緩を利用したストレッチは根本的解決手段にならない

フォームローラーのような道具を使って直接筋やその周囲の組織にアプローチすることができます。あるいは、大腿四頭筋というハムストリングスの拮抗筋を収縮させることで神経学的にハムストリングスを弛緩させることもできます。そのほかにも、収縮させた後で生理学的に起こる弛緩を利用したストレッチ方法などもあります。

このような方法は、一旦ハムストリングスを緩めるのには効果があるので、前屈で起こる不快感を改善することに繋がるかもしれません。けれども、これらは対処療法に過ぎないのです。風邪をひいたときに、熱が上がれば解熱剤を飲む、それと同じことです。本当の解決方法は免疫を正常に働かせるために休養を取る、ということであって、目の前に発生した熱を抑え込むことではありません。その方法では、また同じ問題が起きるでしょう。不快な部分にアプローチして改善しても、本来の目的である原因を解決することには繋がらないのです。

前屈におけるハムストリングス問題の根本的解決手段とは

では、前屈におけるハムストリングス問題の根本的解決手段はなんでしょうか。それは、ハムストリングスの柔軟性を失わせている運動手段の改善です。ハムストリングスは、骨盤から下肢につながる筋です。つまり、下肢の運動と骨盤の運動の両方に関わっています。前屈の際にハムストリングスが突っ張る原因は、前屈の際に骨盤が前傾していくことにあります。骨盤の前傾は前屈の運動に必須の関節運動なのですが、普段から骨盤の前傾の動きが制限されている人はハムストリングスの活用もできていないため、結果的にハムストリングスが硬くなっている、ということなのです。結果として起きたハムストリングスの硬さを緩めれば運動が可能になる、というのは浅薄な判断です。本当に必要なのは、前屈に伴うスムーズな骨盤の前傾だからです(そのほか、骨盤の運動に伴う脊椎の運動も考えなければなりませんが、ここではシンプルに捉えるために骨盤に焦点を絞っています)。

試してみましょう

試しに、骨盤の運動にアプローチして前屈動作を改善させてみましょう。(ただし、これも「多くの人が骨盤の運動が苦手である」という条件のもと行う方法であって、全ての人がこれに当てはまるわけではないことを踏まえておいてください。)

膝関節と股関節を90度くらいの角度に保ちながら、足の裏をしっかり床につけることができる高さの椅子を用意しましょう。できれば傾斜のない平らな座面で、座面が硬いものを選んでください。寄りかからずに浅く坐骨で座って、親指が後ろにくるようにして骨盤の両側を掌で支えるような姿勢をとってください。そのまま、おへそを隠すように骨盤を後ろに倒します。このとき、目線はまっすぐ前、背中を丸めるのではなく、骨盤だけを倒すように意識します。倒したら、そこから今度は骨盤をゆっくり立てていきます。徐々におへそが前面に出てくるような感じです。ゆっくり、勢いをつけずに、今度は骨盤を前傾させます。このときも、胸を反らすのではなく、手を当てている骨盤が前に倒れるように動かします。おへそは前に突き出されます。

この、おへそを隠して前に出す運動を、ゆっくり、一定速度で10回繰り返しましょう。胸が丸まったり、反ったりしないように気をつけて、骨盤だけを動かします。10回行ったら、立って、前屈をしてみてください。10人いれば7人くらいが、おそらく前屈しやすくなっていると思います。残りの3人には別のアプローチが必要ですが、それもやはり、運動によって解決していけるでしょう。

運動のエラーを直すために

ヨガの素晴らしいところは、こういった失われがちな基本的な関節運動を様々なアーサナに組み込むことで全身運動として表現していることにあると思います。今回はわかりやすく骨盤の動きのみを取り出して改善することに注目しましたが、ヨガではそもそも、アーサナの中で必要な骨盤の運動が得られるはずなのです。ですから、アーサナがうまくいかない、というのは個別の筋の問題ではなく、その筋をそうさせている運動の問題であり、インストラクターに求められるのは、アーサナの中に潜んでいる動きの本質の理解なのです。目の前の運動のエラーを直して本質に近づけることが本当の指導なのだと思います。

ライター/得原藍
大学時代にアメリカンフットボールの学生トレーナーをした経験から身体運動に興味を持ち、卒業後社会人経験を経て大学に再入学し理学療法士となる。総合病院と訪問リハビリテーションで臨床経験を積み、身体運動科学について学ぶために大学院に進学、バイオメカニクスの分野で修士号を取得して5年間理学療法士の養成校で専任教員を勤める。現在はSchool of Movement®️ IES Directorとして様々な運動関連職種の指導者に対してバイオメカニクスを中心とした身体運動の科学を教えている。

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