1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【不倫】「好きだけど友達の関係でいよう」と彼に言ったことを後悔しています。どうすれば?【ひとみしょうのお悩み解決】

【不倫】「好きだけど友達の関係でいよう」と彼に言ったことを後悔しています。どうすれば?【ひとみしょうのお悩み解決】

  • 2019.7.6
  • 50683 views

“【お便り募集】文筆家ひとみしょうさんにあなたのお悩み解決してもらいませんか?”にお悩みを送ってくれた方の中から、ピックアップしてひとみしょうさんが解決していきます。

〜「ハナさん」のお悩み〜

不倫の恋に悩んでいます。ネットなどで目にするお悩み相談には、「相手は大抵体が目当てなだけ。未来はなく時間の無駄だからとっとと切り替えて新しい出会いを探しましょう。」という回答をよく見ます。たしかにそうなのかもしれません。

でもそうやってすぐに切り替えられないからひどく悩んでいるのです。感情というのは複雑です。

けれど、ひとみさんのコラムは、その一言で片付けてしまわず、「相手にもあなたのことを『好き』という感情があるからそういう関係になったのでしょう」というように、相談者に寄り添って回答をくださるから、全否定されずに救われた気持ちになり、少しずつでも今の現状を切り開いていこうという前向きな気持ちになれるのではないかと思って大好きです。

相談させていただきます。私はアラフォーで独身です。仕事先で知り合った男性とそう時間がかからず関係が始まりました。本来とても慎重な性格の私なのですが、その人とはウマが合ったのか話が弾みすぐに仲良くなりました。彼はとても社交的な性格なので私でなくても誰とでも話を合わせ仲良くなれちゃうだけのことのような気もしますが、私にしてみたら「そんなに気が合う人はいない!」という想いになっていたところ彼からアプローチがありすっかり夢中になってしまいました。

まもなく彼は、既婚者であること、妻と別れるつもりはないこと、妻との間に子供を望んでいるけれど不妊であること、いつかマイホームを持ちたいと思っていること、よくそんなに素直に話せるなあと思うくらい正直に私に伝えてきました。不倫慣れしている男性なんだろうな、とわかりました。

長い人生を生きてきて、私もそれなりにお付き合いしてきた人もいましたし、失恋もしましたし、実は結婚と離婚も経験しています。だから「彼に未来を求めないし、彼の家庭を壊すつもりもない」という考えで、彼からの上記の告白を聞いてとっさに別れを切り出しました。彼も「自分は引き留められる立場ではないのはわかっている」と言ってすぐに身を引きました。

仕事での繋がりもあり、仕事の話では発展的なアイデアが出てきたりとても刺激をくれる人です。そもそも仕事で知り合い、人として魅力を感じた相手なので、「これから友人としては続けていこう」とお互い話し合ったのですが、でも、それから私はずっと胸が痛いのです。それから一ヶ月になりますが、消化不良のような辛い気持ちなのです。とっさに別れを切り出した自分を後悔している気持ちもどこかにあるのです。

彼の方は、自然体とは言えずこちらの様子をうかがっているような雰囲気を私は感じ取っていますが、本人としては努めて明るく振る舞って接してきています。

ひとみさん、どうしたらいいのでしょうか。

熱した気持ちを一気に急冷させようとしたことがよくなかったのかしら、もう少し時間をかけて徐冷(フェードアウト)させればこんなに喪失感を感じることはなかったのかしら、と思ってしまっている私がいます。

〜ひとみしょうさんのお悩み解決コラム〜

そうですね、おっしゃる通り「熱された気持ちを一気に急冷させようとしたことがよくなかった」のだと僕も思います。好きなものは好きなものとして、ふたりで高らかに愛を歌いあげることができればまことにいいと思うのですが、現実的にはなかなかそうもいかないですしねえ……。

無理がありすぎるから、無理

彼もあなたのことを憎からず思っていますね。だから、「自然体とは言えずこちらの様子をうかがっているような雰囲気」をあなたは感じるわけです(よね?)

つまり、お互いに相手のことが好きだ、しかし、現実的なさまざまな制約を考えると、好きという熱い気持ちをいったん冷まして、友達としての関係に生きるしかないと「意思している(思い込もうとしている)」状態だということですよね。

それは無理でしょう。無理がありすぎるから、無理でしょう。好きという気持ちに、いわばフタをして相手に接するというのは、自分の気持ちにおおいにウソをつきつつ生きるということだから、無理がありすぎるのです。だから無理なのです。

ではどうすればいいのかといえば、第三の道をふたりで歩くという方法しかないように僕は思います。

第三の道とは?

第三の道とはグレイな道のことです。

つまり、お互いに相手のことが好きなのだから、たとえば月に1回は恋人のように会ってデートをする(当然エッチもする)。しかし、それ以外の時は、お互いにきわめてクールに、あたかも恋人がいない「強い人」のように堂々とふるまう――これくらいのグレイゾーンで、「お利口さん」にふるまってみてはいかがでしょうか?

世の中の「うまく不倫している人々」の多くは、たいていこの「第三の道」を生きているように僕には見受けられるので、僕のこの提案は、なにも目新しい提案というわけではないと思います。

「うまく」生きている人々――つまり、それなりに不倫を楽しみ、かつ、恋心にやられることなく仕事や家庭においてよく働き、かつ、不倫がバレない人たちは、0か100かで物事を判断していないから、うまく生きられているのだと僕は考えます。

「彼に未来を求めないし、彼の家庭を壊すつもりもない」けれど、彼と、たとえば月1でデートする、とか、そういう方法を僕はおすすめします。

「うまく」生きるのか、「善く」生きるのか?

がしかし、この方法をあなたが「知っていても採ることができない」というのであれば、それは彼に非があるわけではなく、ましてやあなたの愛に問題があるわけでもなく、あなたの人生観がもともと高潔にできているからです。

世の中には、グレイゾーンで「うまく」生きている人もいれば、うまく生きたいと願ってもそれがどうしてもできず「善く」生きてしまう人もいますよね? 倫理学は、人は「うまく」と「善く」のどちらを選択すべきか? というテーマで2000年以上やってきて、いまだにその決着がついていないそうですが、きっとあなたも「うまく」と「善く」に決着をつけられていない、僕のようなお方なのかなと想像します。

未婚既婚に限らず、特定のパートナーがいるにもかかわらず、ほかに恋人をつくり、その人とうまくやっている人って、世の中に大勢いて、そういう人は、自分が欲しいものを強引に奪う天賦の才があるというより、「うまく」生きる才をもともと持って生まれているのだと僕は感じています。

言うまでもないことですが、不倫は、その現実的制約の多さを思えば、「うまく」生きる才を持っている人の方が有利で、気がつけばいつも「善く」生きる方を選択してしまっている、いわば不器用な人には不向きですよね。

僕はなにも不倫を推奨しているわけではありません。

最後にひと言付言しておきます。僕はなにも不倫を推奨しているわけではありません。ただ、好きになってしまったものはしかたないだろうと言っています。なにがなんでも不倫はよくないなどと、ことさら倫理をふりかざす人は、僕のこの意見に怒るのだろうと思います。しかたないとはなにごとか、と。

では、怒った人に聞きますが、好きになった気持ちを、「なかったこと」にできますか? もしできるのなら、なかったことにしたいと渇望している人は、指をさして数えるまでもなくこの世に大勢いるのだから、その人たちの燃える心を平穏に戻してあげてくださいよ。

この世における倫理には限界があります。哲学を少しかじったことのある人は、その事実をよくご存知であるはずです。この世における倫理には限界があるから、ソクラテスはみずから死んだのです(死ぬしかなかったのです)。

同様に「なぜ倫理的でなくてはいけないのか?」という問いは、倫理の内からも外からも答えることができないと論証している哲学者がいます。彼は言います「なぜ倫理的に生きなくてはいけないのか? と、もし誰かに聞かれたら<僕もよくわからないから、一緒に考えようか>が、もっとも誠意ある答え方だ」と。

不倫も同じです。さまざまな不倫の相談メールをいただきますが、僕は本当は「僕にもあなたが質問している問いの答えがよくわからないから、一緒に考えようか」と答えたいのです。

「うまく」生きると、「善く」生きるの選択は、それくらい(身を切り裂かれるくらい)、ときに厳しいものなのです。そう思わないですか?

(ひとみしょう/作家)

元記事で読む
の記事をもっとみる