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【神崎恵連載】vol.5「自分の色」【もう、メイクを落としてもいいですか?】

  • 2019.7.4
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vol.5「自分の色」

「明日からは、思い切り自分を表現したファッションで登校してくださいね!」

久々に心躍った言葉。これは、長男の大学の入学式で、学科を担当される先生が新入生たちに贈った中のひと言。美大という特色はあるけれど、この言葉に、「なんていい学校に入ったんだろう」と母心に思った。

自分を表現する。

ひとは、大人になる中で、この楽しさを失くしてしまうように思う。忘れてしまうのか、あえて色を消していくのか。まわりに馴染もう馴染もうとする今という時代の中で、久々に鮮やかで勢いの
あるこの言葉に胸が熱くなった。
確かに、馴染むというのは、安心感がある。まわりと同じ色、同じ行動をしていれば、攻撃されたり批判される可能性は低くなる。読者のみなさんや20代の友人と話していても「自分らしさはほしいけれど、浮くのは怖い」という話をよく聞く。自分の色を出して、ネガティブな言葉を投げられたり、叩かれたりするのが怖いということらしい。

自分を否定される。この痛みはよくわかる。

そんな言葉を浴びた日には、自分という存在が、価値のないものに思えてくる。自分が懸命に守ってきたものや積み上げてきたものさえも、くだらないものなのかもしれないと思い始め、とにかく心の端々から感じる痛み。SNSが盛んになり、だれもが気軽に発言したり、書き込みができる今、さらにその痛みは身近になっているのだと思う。
わたしも、「そんないらない痛みを感じるくらいなら、馴染んだほうがいいのでは?」と思っていた頃がある。本当は着たいものを諦め、言いたい言葉を飲み込み、まわりに合わせる。でもその度に、感じる違和感。自分という色が褪せていくのを感じた。そして、自分らしさというものが、
さらに見つけにくくなった。ベーシックな色へ自分を馴染ませていくことで、ときめきや自分を生きるという実感は薄れていく。

***
攻撃されにくいけれど褪せた毎日を選ぶのか? 少々の棘はあっても鮮やかな毎日を選ぶのか?

その両方を経験したうえで選んだのは、自分の色を味わい生きるということ。自分の好きを見ないふりはしない。自分の生き方を自分なりに生きる。

もちろん、ときには心ない言葉が耳に届くし、責任も必要。

でも断然、自分でいることが楽しく、自分という存在を肯定できるようになった。迷いながら、なんとなくではなく、腹をくくって「こう生きよう」と思えると、とても楽になる。痛烈な言葉を投げられたり、書き込まれたりしても、それほど心を抉られない。ほんの小さなこと、として「どうぞお好きなように言っていて〜」と流せてしまう。自分らしさを手に入れることで、ひとの色も受け入れることができるようになるからだ。自分を含め、「普通」や「常識」、「考え」「気持ち」はひとそれぞれあっていいものだと思えることで、気持ちに余裕をもって毎日を生きることができるようになる。

そして、新たな発見は、堂々と浮いていることで、「浮いているのがあたりまえ」と認識されること。

はじめは、いちいち反応されていた色の違いが、それで普通、になるから、「◯◯さんだからね」となり、ゆくゆくは「◯◯さんにしてはまともかも」と意地悪風味は抜けないものの、刃の先は鈍くなる。これが実に楽。

***

あたりまえのように飛び抜けていたり、色が違えば、それが個性になる。何を言いたいかというと、with世代には、もっと浮いて、もっと抜けてほしいな、と思う。これからまだまだ続く自分の人生の中で、力になってくれるもののひとつが個性という自分の色。

それは、外見でも内面でもいい。

その色が仕事や恋愛、生きるうえで大きなチャンスや力になる。
コスメやメイク、綺麗になるツールが増え、ただかわいい、ただ綺麗、ただ感じがいい、で得をする時代は
もう終わり。これからは断然、個性をもったもの勝ち。そして何より、「自分らしさ」は自分でいることの楽しさ
を実感させてくれるから。
同化する必要なし。どうか色鮮やかに浮きたって、自分だけの生き方を手に入れてみませんか。

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美容家 神崎恵/かんざきめぐみ

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日本のみならず、海外からも注目を集める売れっ子美容家。美容だけでなく、ファッションやライフスタイルも人気で、インスタ等で紹介したアイテムが品切れなるなどの現象も!4月5日には待望の新刊『この世でいちばん美しいのはだれ?』が発売予定。

次回の連載もお楽しみに!


文/神崎恵 illustration/Masami Ushikubo design/attik

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