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エチオピア・メイドのバッグは モノの価値を見直すベンチマークになるか ― 一人の女性デザイナーの想いが国境を越えて動きだす ―【Editor’s Eyes vol.74】

  • 2019.7.2
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エチオピア・メイドのバッグは モノの価値を見直すベンチマークになるか ― 一人の女性デザイナーの想いが国境を越えて動きだす ―【Editor’s Eyes vol.74】

2019.07.02

エチオピア・メイドのバッグは モノの価値を見直すベンチマークになるか ― 一人の女性デザイナーの想いが国境を越えて動きだす ―

安易に”エシカル”や”サステイナブル”というフレーズは使えない。

andu amet<アンドゥアメット>のファウンダーでありデザイナーでもある鮫島弘子さんとの会話から、私たちが得た第一印象だ。

「コスメティック会社のデザイナーとして働いていた時、毎シーズン毎シーズン消費され廃棄される商品のデザインを続けることに疲れ、疑問を抱くようになりました。そこで会社を退職して、デザイナーとしてボランティアに参加したんです。その時に任命された地がエチオピアでした」。

エチオピア田舎の風景 起業より10年以上も前から、大量生産・大量消費の在り方に疑問をもち、それをきっかけとしてアフリカとの接点が生まれたということだ。

「行って見て初めてわかったのですが、配属先は援助漬けのような状態にありました。でも一歩外に出れば、やる気も技術もある職人も数多くいることがわかりました。ただ無いのがデザインや新しいテクニックに関する知識や経験だったんです」。

そこで、鮫島さんは自分のデザイナーとしての能力を発揮することを考える。

andu amet 代表 鮫島弘子氏 「そしてもう一つ大きかったのは、エチオピアシープスキンという最高の素材がここにあった、ということでした。初めて触れた時は、これまで触れたどんなレザーとも異なる、ふんわりやわらかく、しっとりしたなんとも言えない感触に驚いたんです。しかも調べるととても丈夫だということも判明して」。

ただ当時のエチオピアは、それらを原料として輸出しているのみであった現実を知る。

「それらが例えばイタリアでなめされてイタリア製の革に、フランスで縫製されてフランス製のバッグになり、そこで非常に高い付加価値がつけられるけど、原料の輸出に依存している限り、エチオピアには永久にお金も落ちないし、技術もいつまでたっても向上しないという状態。もったいないと思いました。そこで私は、この国で、現地の人たちと一緒に最終加工製品を作ろう、それも皆が憧れるような最高品質のものを作ろうと決意したんです」。

とは言え、その道のりは簡単ではなかったはず。

「デザインや物作りには自信があっても、経営の知識を持っていなかったので、一旦帰国して、ラグジュアリーブランドのマーケティング部に就職。働きながらマーケティングや販売、人材育成など様々なことについて勉強させてもらいました。また週末はアフリカに関わるNGOや社会起業家のもとでボランティアをしました」。

5年間にわたりブランドビジネスやアフリカでの事業を経験したのち、いよいよエチオピアでの起業がスタートするのだ。

エチオピアにあるandu ametの製品が生産される工房 ある意味、偶然出会ったエチオピアという国。そこに潜む可能性と自身の想いの掛け算により<andu amet>が誕生した。

一時のトレンドに左右されない本質的な物作りと、エシカルでサステイナブルな仕組みを本気で追及することは難しい。近年、多くのブランドがエシカルやサステイナブルをコンセプトにしはじめているが、鮫島さんがユニークなのは、その国へ自身が赴き、現地の職人たちと寝食を共にしながら彼らの抱える問題にひとつひとつ対峙し、共に未来を築こうとしていることだ。

「途上国の問題って複雑に絡み合っていて、雇用さえあれば解決というわけでもないんです。彼らの誇りややる気を育みながら一緒に問題を解決し、未来を築いていきたい。素材もデザインも、そして製造過程も最高のものづくりを通じて「本当にいいもの」お客様に届け、使ってくださる人たちのことも幸せにしたい。そんな想いが今の私の原動力です」。

andu ametのバッグを生産する職人たちと鮫島氏 そうして生まれた<andu amet>のバッグは、手に持つと伝わってくる温かみ、レザーの優しい感触、エチオピアの大地を思わせる配色、日本の伝統技術からインスピレーションを得たデザインが特徴だ。単にエシカル・サステイナブルといったフレーズに頼るのではなく、モノ自体の魅力で選ばれるブランドこそ貴重なのではないか。

鮫島さんとの会話から浮かび上がったモノと作り手と自分との関係をもう一度見直してみたいと感じたのだった。


※<andu amet>の大定番“HUGHUG”のデザインをそのままミニマライズし、スターバックスカード機能を搭載した“スターバックス タッチ ザ ハグ” が発売されます。コーヒー豆の一大産地であるエチオピアが生んだバッグとのコラボレーションは、スターバックスならではのサステイナブルへの取り組みでもあるかもしれません。
詳細はこちらをご参照ください。
https://www.starbucks.co.jp/card/touch/hug/

STARBUCKS TOUCH THE HUG

(Text:Y. Nag / エチオピア風景,工房画像:andu ametご提供、鮫島氏画像:Toshiki Y、商品画像:Hiroyuki Takada)

< 商品展示のご案内 >
今回ご紹介しました、Starbucks Touch The Hugの商品展示を下記の通り行います。
エチオピアシープの心地よさを体感いただけます。

期間:7/4(木)〜7/7(日) 13:00~20:00(最終日の日曜日は19:00まで)
場所:andu ametコンセプトストア
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-16-12 青山ビル1F
*表参道A2出口より徒歩7分
※Starbucks Touch The Hugの販売は行いません。
※混雑の状況により、お待ちいただく場合があります。予めご了承ください。

■andu ametについて
andu ametは、アフリカの雄大な自然やカルチャーにインスピレーションを受けた独創性の高いデザインと、触れた瞬間幸せになってしまうような極上のシープスキンの風合い、そして目には見えない製造工程の美しさをも追求するエシカルなコンセプトが特徴のレザーファッションブランド。次世代のフェアトレードを目指して設立されたエチオピアの直営工房にて、日本の技術を受け継いだ現地職人たちが、すべてハンドメイドで製作にあたっています。これまで、大手百貨店やセレクトショップ、ANAのファースト・ビジネスクラスなどで販売。従来のエシカルファッションと一線を画す、高いクオリティとストーリー性で人気を博し、カンブリア宮殿など多くのメディアでも紹介されています。
URL:http://anduamet.com

■鮫島弘子 プロフィール
デザイナーとして働く中、日本の大量生産や消費に疑問を抱くようになり、ボランティアとしてアフリカへ。現地の人々と共に、ファッションやデザインに関する様々なプロジェクトを進める中で、アフリカに眠る素材や職人のパワーに大きな可能性を見出す。帰国後外資系ラグジュアリーブランドに就職、マーケティング・クリエイティブを担当しながら、ブランド立ち上げ準備を進め、2012年、株式会社andu ametを設立。現在はエチオピアをベースに、アフリカ各国を飛び回る日々。上質感・高級感と、徹底した社会貢献性とを両立させたユニークなビジネスモデルが国内外より評価され、カルティエ・日経チェンジメーカーズオブザイヤー、APEC若手イノベーター賞など多数受賞。

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