1. トップ
  2. おでかけ
  3. 次なる注目アーティストは? ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019 授賞式へ。(Saori Asaka)

次なる注目アーティストは? ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019 授賞式へ。(Saori Asaka)

  • 2019.6.27
  • 466 views


次なる注目アーティストは? ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019 授賞式へ。(Saori Asaka)
2019.06.27 18:10
店舗に益子焼きを飾るなど、アートやクラフト好きで知られる、ロエベ(LOEWE)のクリエイティブ ディレクター、ジョナサン・アンダーソン。彼の発案で2017年に開始された「ロエベ  ファンデーション クラフト  プライズ 2019」の授賞式が東京で行われ、一足先に展示も堪能してきました。

29名のファイナリストの作品を展示。


クラフトと文化に造詣の深いジョナサンとともに、ロエベ財団が立ち上げた「ロエベ ファンデーション クラフト  プライズ」。現代におけるクラフトの重要性を認知するとともに、未来を作り出す才能を評価することを目的に、公募により過去2回行われています。そのマドリッド、ロンドンに続き、3度目となる2019年の授賞式が東京で行われました。


100カ国以上の国から、2500点を超える応募があったそうで、ファイナリストは29名。陶磁器からテキスタイル、ストーンや金属まで素材も幅広く、アーティスティックなオブジェから、伝統工芸品のようなや技術が見て取れるもの、またミニマルなプロダクトデザインまで、実に多岐にわたる作品が選出されています。


オープニングには、授賞式に出席するために作家も来日。中国人デザイナーのデュオ、ジェンフェン・ファンさん&ミ・ドンさんは、もともとは大学の同級生で、それぞれ建築とプロダクトデザインにおいて精通しており、二人の得意分野を生かしてプロダクトを製作するデザインスタジオを立ち上げたそう。伝統技法をセラミックに応用したこの作品には、控えめなデザインのなかに技術的な挑戦が詰まっています。


イスラエルから初来日したという、ミハル・ファーゴさんは、陶芸家として活動中。この切り株のような形状のセラミックの器には、ベロアの用なコーティングが施してあります。有機的でもあり人工的でもある。天然と合成が交わる、奇妙な感覚を覚えます。

LINEのパンフレットが楽しい!


また展示を巡る上で、面白かったのがロエベのLINE。入り口にあるQRコードから友達登録すると、全作品が掲載されたパンフレットが出てきます。


そして気になる作品を前に、同じ絵柄をタップするとその作品の解説があらわれるのです。「音声ガイド」をタップすれば、美術館のガイドのように、説明を読み上げてくれます。「MORE」からロエベ財団HPの詳細ページにとぶことも。作品解説を読みたい派としては、便利で面白かったです! 


なかには間近で見たくなる作品も。遠目にはモザイクの絵画のようにみえた『Confubius』は、近寄ってみてより謎が深まるテクスチャー。解説を見てみると、ヤマウズラの羽根を一枚一枚ろうで固定して、この模様と形状を作り出しているそう。


壁に掛けられたテキスタイルの『Khadi Frays』は、織糸を紡いだのではなく、剥いで作られた模様でした。質感や陰影で描き出すその技術も圧巻。工程を逆行する“破壊”をベースにしたことで、複雑な印象を与えます。


 “クラフト”と一言でいっても、技術やその国の伝統、またコンセプトなどは実にさまざまなので、解説を読むことで、より楽しめる気がします。

大賞は、82年生まれの漆塗りのエキスパート。


そしてじっくり作品を鑑賞した後は、ついに受賞式へ。審査員には、発案者のジョナサン・アンダーソン氏のほか、ロエベ財団のプレジデント エンリケ・ロエベ氏やデザイナーの深沢直人さん、そして建築家でありデザイナーのパトリシア・ウルキオラさん、建築家ワン・シュウ氏の姿も。


特別賞には、英エディンバラをベースに活動する、ハリー・モーガンさん、そして英国在住の日本人、高樋一人さんが受賞(ともに写真上部)。プレゼンターを務めたワン氏は「建築家の観点からも驚きがあった」とモーガンさんの受賞理由を話し、ウルキオラさんは「素材を育てるところから始まるこの作品には、コンセプトから作り手の気持ちが入り込んでいる」と、サンザシの小枝を用いた高樋さんの作品について語っていました。


大賞には、「ロエベが考える“クラフト”とは?の問いに共感してくれる、それを表現してくれる作品」とジョナサンからの紹介の後、ゲストプレゼンターの鈴木京香さんにバトンタッチ。伝統の温かみとともに、革新的な感性を発揮した、『Surface Tactility #11』で、石塚源太さんが受賞しました。


日本の伝統工芸である漆の技術を用いたこの作品は、何層にも塗り重ねられた漆の艶と深み、スーパーで売られているメッシュ袋入りのみかんのような不思議な造形で、展示作品のなかでもひときわ目立っていました。京都市立芸術大学とロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んだ彼の作品は、すでに京都美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、そして米ミネアポリス美術館でもコレクションされているそう。この作品は漆の色や形状を変えて、シリーズとしてさ制作されているようです。


石塚源太さんとジョナサンによる対談インタビューは、『VOGUE JAPAN』9月号にて掲載予定。 また、受賞作品を含むファイナリスト29名の作品は、赤坂・草月会館にあるイサム・ノグチ作の石庭『天国』で展示されています。クラフトの醍醐味は間近で見てこそ、です!

ロエベ「インターナショナル ファンデーション クラフト  プライズ」

会期/〜2019年7月22日

会場/草月会館 東京都港区赤坂7-2-21

時間/10:00~19:00 、〜20:00(金曜)

会期中無休、入場無料
http://craftprize.loewe.com/ja/home


・毎週土曜14:00には、ジャーナリストであり21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクターの川上典李子さんをモデレーターに、トークセッションを開催。パトリシア・ウルキオラさんや、ミナ ペルホネンの皆川明さん、昨年特別賞を受賞した桑田卓郎さんなど、週代わりでゲストスピーカーが登場。

Saori Asaka

元記事で読む
の記事をもっとみる