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「ロエベ クラフト プライズ2019」日本人初のグランプリ “漆の今を表現した”石塚源太さん

  • 2019.6.26
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ロエベ財団(LOEWE FOUNDATION)は6月25日、東京・草月会館で同財団が主催する「インターナショナル クラフト プライズ 2019(International Craft Prize 2019以下、ロエベ クラフト プライズ)」の表彰式を行った。表彰式の開催場所は、第1回のスペイン・マドリード、第2回の英国ロンドンに次いで3回目の今回は東京が選ばれた。

グランプリを受賞したのは1982年京都生まれ、京都を拠点に活動する石塚源太さんで、アレックス・ブログデン(Alex Brogden)が手掛けたトロフィーと賞金5万ユーロ(約610万円)が贈られた。日本人がグランプリを受賞するのは今回が初めて。受賞作品は、何層にも塗り重ねられた漆の深みと透明感が引き立つオブジェで、球体を連ねたような愛嬌のあるフォルムが魅力的だ。

“長い漆の歴史に参加できる作品を”

石塚さんは「漆の艶を強調しながら奥行きを出した」と言う。ポコポコとした形状のインスピレーション源は、「スーパーマーケットのメッシュ袋入りのオレンジ」だそうだ。作品は球体の発砲スチロールを布でくるみ、その上から麻を重ねてさらに漆が何層にも塗られて作られた。「7世紀から続く漆の技法を2018年(作品に取り組んだ年)のタイムラインで表現した。長い漆の歴史に参加できる作品にしたい」と語った。また賞金については「アトリエが手狭になってきたので引っ越し費用にする」と言う。

“今、この時代に起きているかを伝える作品”

このプライズを16年に発案したジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)=「ロエベ」クリエイティブ・ディレクターは、受賞理由を「歴史ある漆の知識が深く、それを次世代の作品として作り出していた点がすばらしい。審査員の間でも彼の作品は、今、この時代に何が起きているかを伝えるものだと評価した。次世代のクリエイションとは、タイムレスなシェイプであり作品だということ。1000年前、あるいは1000年後、どの時代に存在していても不思議ではない作品だった。アーティストの課題の一つは過去をどのように現代、未来に持ち込み表現していくか、だと思うが彼はそれを上手に見せていたと思う」と称賛した。

このプライズは今日の文化におけるクラフト (工芸) の重要性を認識することと、未来の新たなスタンダードを創出する革新的な才能やビジョン、意志を有するアーティストを評価することを目的としている。今回は、100カ国以上の2500を超える作品の中から29人のファイナリストが選ばれ、そのうち日本人は過去最多の10人が選出された。応募作品数は前年に比べ44%増え、国別では日本からの応募が最も多かったという。

“クラフトとは人間が自己表現する基本的なこと”

アンダーソンは、「クラフトとは人間が自己表現する基本的なこと。みんなが持っている才能だし、料理するときも、服を作るときも、陶器を作るときにクラフト心があると思っているよ。みんなが何かを作りたいと思っているしキュレートしたいと思っている。クラフトをもっとサポートされるべきで、『ロエベ』のような大きなブランドが、人々がクラフトについて対話するためのプラットフォームを作ることが大切だと思いこのプライズを立ち上げた」と語った。

ファイナリストを選ぶ審査は、スペインの大手新聞「エル・パイス(El Pais)」の建築とデザイン担当評論家のアナツ・サバルベルコア(Anatxu Zabalbeascoa)選考委員長をはじめとする9人の専門家で構成される委員会が、マドリードで2日間にわたり全ての応募作品を審査して選出。その選考過程では、技術的成果、革新性および芸術観という点が重視されたという。

その後、深沢直人デザイナー兼日本民藝館館長、建築家でプリツカー賞審査員のベネデッタ・タグリアブエ(Benedetta Tagliabue)氏、デザイン・ミュージアム(ロンドン)館長でエッセイストのディヤン・スジック(Deyan Sudjic)氏、アンダーソン=クリエティブ・ディレクターらによって25日朝に「白熱会議が行われ」(深沢直人氏)、優勝者が決定された。特別賞には、1990年英国マンチェスター生まれのハリー・モーガン(Hurry Morgan)さんと72年名古屋生まれの高樋一人さんが受賞した。受賞作品とファイナリストの作品は、6月26日~7月22に同会館のイサム・ノグチが手掛けた石庭「天国」で展示される。

■インターナショナル クラフト プライズ
日程:2019年6月26日~7月22日(無休)
時間:10:00~19:00(金曜のみ20時まで)
会場:草月会館
住所:東京都港区赤坂7-2-21
入場料:無料

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