「ペンギンハイウェイ」「夜は短し」「四畳半」森見登美彦×上田誠コンビの魅力とは?<ザテレビジョン シネマ部コラム>

『ペンギン・ハイウェイ』
(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

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原作ものを脚本にするのは難しい。最初から最後までそのまま脚本化しては面白いものにはならないし、映像化の際は、どうしてもカットしなければいけないシーンや、人物が出てくる場合もある。逆にたくさん脚色しなければ映像化が難しい作品もある。失敗すれば原作ファンを悲しませ、大炎上である。

しかし、脚本家が原作に変化を加えることで、素晴らしい映像作品が生み出されることがある。そんな原作とステキな脚本の化学反応によって生み出された作品が『ペンギン・ハイウェイ』('18)だ。

森見登美彦の小説を上田誠が脚本化するのは、TVアニメ『四畳半神話大系』('10)、劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』('17)に続いて3作目。『四畳半神話大系』は第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞。

『夜は短し歩けよ乙女』は第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した実績を見れば、どちらも成功した映像化作品であることが分かるだろう。このコンビの魅力は何なのだろうか? これは、たいへん興味深い問題だ。

3作品は原作をそのまま脚本にはしていない。『四畳半神話大系』は冴えない男子大学生を主人公に、4つのパラレル・ワールドを描いた4章からなる物語だが、TVアニメでは4章を解体し、オリジナルの要素も加えて11話に再構成。

『夜は短し歩けよ乙女』は、“黒髪の乙女”に思いを寄せる、こちらも冴えない主人公“先輩”の恋の行方を、2人の視点から交互に描く。原作では1年間の時間軸を、劇場アニメでは一夜の物語として構成している。

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(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

そして、『ペンギン・ハイウェイ』は小学4年生の少年が、街に突如現れたペンギンの謎を解こうと奮闘する、ひと夏の物語。前出2作のように大きな変更はないものの、主人公、アオヤマ君のひと夏の冒険がきっちり尺に収まるよう、細かなセリフやシーンの省略がなされ、それでいて大切な部分は網羅されている。

3作全ての原作とアニメを見比べると、上田誠の脚本はまるで「錬金術かよ!」と思うほど、原作が緻密な脚本へと昇華されている。願わくば、その才能を私も欲しい。なむなむ!

森見登美彦の小説はどれも想像力をかき立てられる。というか、想像せずにはいられない。主人公が遭遇する奇妙な出来事や個性的な登場人物。読む側は、それらを脳みそフル回転にして想像し読み進めるが、どうにも自分の想像力の範疇を超える部分も出てくる。

『ペンギン・ハイウェイ』なら、コーラの缶がペンギンに変身するところ、森の奥に浮かんだ不思議な球体、そして少年にとって魅惑的なおっぱいをもつお姉さんはどんなビジュアルになるのだろうか? 読めばその不思議な世界が視覚化されたアニメが見たくなり、アニメを見れば上田誠の仕事ぶりを確かめるべく原作に戻りたくなり、そしてまたアニメを見て原作の素晴らしさを確かめたくなるという不思議な無限ループに陥る。

 『ペンギン・ハイウェイ』
(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

調べると2人は互いに京都市内の数百mの距離に住んでいたことを、出会った後に知ったらしい。『ペンギン・ハイウェイ』でアオヤマ君が謎を解こうとする“ペンギン”と“お姉さん”と“不思議な球体”のように、“森見登美彦”と“上田誠”と“アニメ”には切っても切れない繋がりがある。

劇団ヨーロッパ企画の舞台用に上田誠が書いた戯曲を自ら脚本化した映画『サマータイムマシン・ブルース』('05)と『ペンギン・ハイウェイ』には偶然にも“ひと夏の思い出”、“SF”、“コーラ”という共通点があり、2人のタッグはもはや、アニメ化という“運命の赤い糸”、いや『四畳半神話大系』的な “運命の黒い糸”で最初から結ばれていたとしか思えないのである。

そんな名コンビから生み出された、不思議でワクワクする世界。まずは『ペンギン・ハイウェイ』から足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

文=山咲藍

脚本家兼ライター。映画関連冊子の編集者を経て、『スラッカーズ 傷だらけの友情』('09)で脚本家デビュー。『ジョーカーゲーム 脱出』('13)、『人狼ゲーム ビーストサイド』('14)などの脚本も手掛けている。制作プロダクション・スタジオブルー所属。(ザテレビジョン)

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