メイクアップの重鎮オリヴィエ・エショードメゾンが現代のクリエイターにメッセージ 「過去をコピーせず、ビジョンを描いて」

メイクアップ界の重鎮、オリヴィエ・エショードメゾン(Olivier Echaudemaison)77歳。2000年からメイクアップクリエイティブ・ディレクターを務める「ゲラン(GUERLAIN)」では、09年に“唇のためのジュエリー”をコンセプトにした「ルージュ ジェ」を、19年には香水のボトルに着想を得たデザイン性と、天然由来成分97%という肌への優しさや仕上がりが人気のファンデーション「レソンシエル」を生み出すなど、新しい着眼点を持ち続ける鬼才だ。50年以上もの間ビューティ業界の第一線に身を置き続けているオリヴィエ=メイクアップクリエイティブ・ディレクターが、現代のクリエイターに愛のある喝!を贈る。

20世紀がコピーされ続けている21世紀の今

WWD:(オリヴィエ=メイクアップクリエイティブ・ディレクターが「WWD ビューティ」のパリコレ特集を手に取る姿を見て)ファッションやメイクのトレンドはストリートからエレガンスに回帰しているようですね。

オリヴィエ・エショードメゾン(以下、オリヴィエ):これらのメイクはエレガンスというより60〜70年代だね。ツイッギー(Twiggy)の時代だ。私にとって退屈なのは、過去からインスピレーションを受けるだけで、クリエイトする流れがないことだ。今は21世紀なのに、20世紀のものが延々とコピーされ続けている。メイクだけじゃなく、ファッションもそうだ。インスピレーションを受けるのは良いのだが、コピーするのは違う。そこが私は非常に残念に思う。

WWD:流行は繰り返すといいますが、確かにリバイバル的なトレンドは多いです。

オリヴィエ:クリエイターはビンテージからインスピレーションを受けているので、どうしてもコピーになってしまうのだろう。しかし、それだけは何かが欠けてしまう。

80年代、私はこれまでになかったものを作ろうとしていた。過去からインスピレーションを受けたわけではなく常に未来を見続けていた。80年代と比べると、さまざまな技術は進歩し、生活そのものが変わり、生きる枠組みすらも変わっている。40年前の日本も今とはずいぶん違うでしょう?暮らし一つとっても、20〜40代クリエイターの両親や祖父母世代の人たちの多くは、畳に座って生活していたはずだ。その時代のトレンドを、本当に今取り入れなければならないのだろうか?

過去のコピーは前進を生まない。パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)がキュビスム(20世紀初頭のフランスで生まれた前衛美術の潮流)を作る前の19世紀は、キュビスムなんて存在していなかった。だからこそ革命だと言われた。でも、ピカソも何かから刺激を受けていたはずだ。インスピレーションを受けるのはいいけれど、それに新しい解釈を加えていかなければならない。

WWD:今は創造的な革命が起こりにくい時代なのでしょうか。

オリヴィエ:いや、いろんなものが速く進むから今の方が簡単だと思う。以前は1週間かかっていたが、新しいネットワークによってパリやモントリオールのことが瞬時に世界中に広がっている。パリの情報はタイムラグなく、日本にも届いているだろう。つまり、大切なのはクリエイター一人一人が頭で考えることだ。先を見据えて考えれば革命は起こせるはずだ。

老舗メゾンをさらに輝かせるために

WWD:「ルージュ ジェ」も未来を見据えて作ったものですか?

オリヴィエ:「ルージュ ジェ」は10年前、21世紀の女性はどういったものを身につけるのだろうと想像して作った。バッグから口紅を取り出すと、次は鏡を探さなければいけないが、大きなバッグだと見つけにくい。そのため、口紅に鏡を付けてしまおうと思った。進化したバージョンはケースの色も豊富だし、口紅のカラーも選ぶ幅がある。ファッションに合わせてカラーを選んで、お気に入りのケースに収められる、アクセサリーのような遊び心を取り入れた。

私が常に考えているのは、今日の女性か未来の女性が必要とするものを作ることだ。その発想は口紅だけではなく、ファンデーションにもいえることで、「レソンシエル」は肌をケアし、保護しながら美しく肌を見せるファンデーションとして開発を進めた。ただ、この製品は革命というより“進化”だね。技術の進化によって作り上げることが可能になった、19年時点の技術を結集した最先端ファンデーション。しかし、このクリエイティブと機能性は、ファンデーションの歴史に刻まれることになるだろう。

WWD:老舗メゾンの伝統を生かしながら革新的な製品を作るのは苦労も多そうです。

オリヴィエ:「ゲラン」は200年近い歴史を持つが、決して過去にとどまっているメゾンではない。最初にリップスティックを作ったのも、初めて合成の香料で香水を作ったのも「ゲラン」だった。歴史があると同時に革新的で近代的なメゾンだ。だから私は約20年前、「ゲラン」がほかにはない特別なメゾンであり続けるために、何かをしようと思ってクリエイティブ・ディレクターになった。

そのため、「ゲラン」の仕事でも過去を振り返ろうと思わなかったし、十何年もアーカイブを見ることを拒否していたんだ(笑)。でもしぶしぶ見た時に、ほかでは見られない宝石のような作品に興奮した。そこで受けたインスピレーションをそのまま形にするのではなく、私なりに再解釈し、未来の女性たちを見据えて作り上げている。

WWD:クリエイターに必要な考えは“未来志向”ということですか?

オリヴィエ:例えば、日本でいうと「ジバンシィ」で一緒に仕事をしていたUDAメイクアップアーティスト。彼は信念と文化的な背景、情熱や、素晴らしいクオリティーを持っていて、彼をまたフランスに連れ戻したいほどだ。それぞれのパーソナリティーがあると思うが、どんな人であれ信念と文化的な背景、情熱、ビジョンは大切。

日本人の高いファッションセンスに驚き

WWD:5年ぶりの来日ですが、日本の印象は変わりましたか?

オリヴィエ:表参道や銀座、街を歩く人がとてもスタイリッシュ。とても素敵で驚いた。素晴らしいファッションセンスを持っていて、パリの人たちより上をいっていると思う。これは嘘でもお世辞でもないよ(笑)。

日本独自の雰囲気、いろいろなものを混ぜて取り入れていくセンス、才能。例えば、中東やドバイ、アブダビなどでは雑誌を切り取って広告通りのファッションをする人が多いが、日本人は新しいものと古い物、値段の高いものと安いものなど、パリと同じように自分なりにミックスしている。おそらく東京は、今後も世界各国に影響を与えていく場所になるはずだ。

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