若き“いぶし銀俳優”毎熊克哉、水谷豊監督の辣腕に「あれは、まさに神業」

毎熊克哉がインタビューに応じた
KADOKAWA

2016年、映画初主演作「ケンとカズ」で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞などを受賞し、2018年にも映画「北の桜守」や「万引き家族」に出演。

【写真を見る】毎熊克哉がレモンパネルを持って柔和な表情に!

また、連続テレビ小説「まんぷく」(2018-2019年、NHK総合ほか)の森本元役で注目を浴び、今後の活躍が期待される俳優・毎熊克哉。

そんな毎熊が、公開中の映画「轢き逃げ-最高の最悪な一日-」では、轢き逃げ事件を担当する若手刑事・前田俊を好演している。

本作は、水谷豊監督2作目となる人間ドラマ。ある地方都市で起きた轢き逃げ事件を軸に、さまざまな人間模様が描かれる。

劇中で、同世代の若者が起こした轢き逃げ事件に憤る刑事を熱演している毎熊にインタビューを実施。水谷監督の演出で印象に残っていることや演じる上で心掛けていること。自分にとっての「最高の一日&最悪な一日」にまつわるエピソードなどを語ってもらった。

――まず、最初に脚本を読んだ感想は?

これまで出演した作品の台本とは全然違って、独特のタッチで書かれている点が印象的でした。キャラクターの心情が分かるようなことが細かく書かれていたんです。

その分、文字数が多いから台本自体も結構分厚かったですね。でも、あっという間に読み終わったという記憶があります。

――轢き逃げしてしまった若者の心理描写も細かく書かれていたんですね。

最初に轢き逃げ事件を起こしてから、ずっとあの2人が「大丈夫」って自分に言い聞かせながら普段通りの生活をしているところがものすごく嫌な感じで。

自分が演じる役とか関係なく読んでいると、絶対バレる、絶対バレるっていうドキドキ感がずっと続いていって、そこからまた新たな登場人物が出てきたりすると新しい視点がどんどん増えてくるんです。

小説でも章が変わると違う人物の視点で描かれたりすることがあるじゃないですか。今回の台本も、まさにそんな感じだから、楽しく読めたんじゃないかなと思います。

――登場人物の心情はト書きのような感じで表現されているんですか?

ト書きではあるんですけど“ここでこう動いた”とか。“ここに何があった”というものにプラスアルファする感じで“こういう風に思ったのかもしれない”って書いてあったりするんです。

――そういう心情が書かれていることでお芝居に変化が?

その時の心情は分かりやすいけど、難しそうだなと感じることも。本来だったら、まずは自分で考えて、現場の状況次第で変わったら、それに対応しながら演じることが多いんです。

でも、台本にどうすればいいのか、どう思っているのかが書かれているので、ありがたい反面怖いなと感じることもありました。

――現場で監督に聞いたりすることはあったんですか?

聞くことはなかったです。うまく言えないですけど…聞いたら負けみたいなところもあって(笑)。

他の現場とかで「ここって、こうなんですかね」なんて聞いたら「自分で考えろ!」って言われたりすることもあるじゃないですか。だから、本当に分からないこと以外は今回の現場に限らず極力聞かないようにしています。

――自分で考えることが大事なんですね。

監督が段取りをやる時にどんなふうに撮ろうとしているのかを、集中しながら察知することが大事。分からないことを聞くというより、自分でこういうことなんだろうなって想像しながら演じています。

見ている人の癒やしになる存在

――今回、演じた前田という刑事はどんなキャラクターですか?

脚本にもそう書かれていますし、劇中でもきっとそんな感じで描かれていると思うんですけど、シリアスなストーリーの中でちょっとブレークタイムになるようなキャラというか、見ている人の癒やしになる存在なのかなと。

そこさえブレずに表現できたら大丈夫かなと思っていました。刑事なんですけど一人の男として轢き逃げ事件に向き合っている。

未熟といえば未熟だけど、そういうところに人としての魅力があるような人物になればいいなって。そういう感覚は大事にしたかったです。

――確かに前田が出てくると、その場の空気が変わりますよね。

そうなんですよね。ちょっと邪魔というか、岸部(一徳)さんが演じるベテラン刑事の柳からしたら、あっちに行ってろって感じでしょうね(笑)。

――岸部さんとの共演で感じたことは?

前田は若さ故の熱さがあったり、おっちょこちょいな部分が見えるんですけど、

一徳さんが演じる柳のリアクション一つで彼の印象というかキャラクターが決まるような気がして。前田の言動をサラッと流すのか、ちょっと重い感じにするのか。

僕が何をやっても一徳さんにしっかりと受け止めていただいたという感覚が強かったです。

――俳優である水谷監督の演出で印象に残っていることは?

水谷さん自身が役者としてカメラワークや細かいタイミングなどを常に考えてお芝居をされているからなんだと思うんですけど、俳優の見え方や撮られ方のようなものをしっかりとイメージしているという印象がありました。

作品の中で、役者がどう動くのが一番いいのか。いつも俯瞰で全体を見ているような気がしました。そういう中で、ご自身も役者としてお芝居をされているわけですから。

あれは、まさに神業。どういうスピード感で監督から一人の役者へとスイッチを切り替えてカメラの前に立っていたのか。とても不思議でした。僕は、役のことを考えるだけで精いっぱいですから(笑)。

――普段、演じる上で心掛けていることは?

作品の中で“役”として存在していることにうそがないように演じたいと思っています。もちろん、フィクションですしお芝居ですから全部うそといえばうそなんです

けど、その役にしか見えない感じを大事にしたいなと。僕が映画やドラマを見て何にドキッとするのかっていうことを考えると、やっぱりそこに映っている人が本当にそういう人なんじゃないかなって思わされる瞬間なんですよ。

劇中のキャラクターなんだけど「この人の人生、大丈夫?」って思ってしまうような感覚。毎回心掛けて演じようとしているんですけど、すごく難しいですね。

水谷監督の遊び心が詰まっている作品

――あらためて、今回の作品の見どころは?

「轢き逃げ」という重いテーマではありますけど、ところどころに笑える部分もあって、しっかりとしたエンターテインメント作品になっていると思います。シリアスな物語の中に、水谷監督の遊び心がたくさん詰まっていて。

音の演出や見せ方など、いろいろなことに挑戦しているので、楽しい映画を見るつもりで劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。

――タイトルにちなんで「最高の一日」と「最悪な一日」にまつわるエピソードをお聞きしたいのですが、まずは「最高の一日」からお願いします。

この間もちょっと考えたんですけど、何か抑揚のない人生を送っているなって思ったんですよ。なので、ユルい答えでもいいですか?

――もちろんです。質問自体がユルいので(笑)。

やっぱり、目覚まし時計をセットせずに寝られる日は最高ですよね。

――それ、分かります!

だからといって、その日の夜に特別なことをするわけではないんです。ご飯を食べて風呂に入って後は寝るだけなんですけど、幸せを感じますよね。

――では「最悪な一日」は?

電車に乗るとおなかが痛くなるんです。本屋さんに行くとトイレに行きたくなるという人がいるじゃないですか。あれと同じ感覚。でも、そういうギリギリの状況の時に限って、男子トイレの個室が全部埋まっていて。

自分と同じように切羽詰った人が何人も並んでいる。あれは、もう絶望しかないですよね(笑)。

できれば、もう少し男子トイレの個室を増やしていただけたらなと思っています。よろしくお願いします!(笑)(ザテレビジョン・取材・文=月山武桜)

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