連載第21回 2009年「愛しあってるかい!名セリフ&名場面で振り返る平成ドラマ30年史」

名セリフ&名場面で振り返る平成ドラマ30年史
KADOKAWA

元毎日放送プロデューサーの影山教授

人の世は、ドラマのよう。

石川遼や宮里藍など、ゴルフ界でアイドル的人気を誇る若手プレーヤーが大活躍。エンタメではテレビで「子ども店長」が大人気を博し、「キング・オブ・ポップ」と称されたマイケルジャクソンの訃報に世界中が涙したのが2009年だ。政治の世界では民主党が念願の政権交代を実現させ、自民党は1955年の結党以来、初めて第2党に転落。15年ぶりに政権与党から脱落することになる。そんな民主党政権は、「政治もムダを省く」と事業仕分けを実施。蓮舫議員の「2位じゃダメなんでしょうか」が流行語となる。「政権交代という大きな変化があった年。テレビドラマも、その不安定さを反映したドラマが多いですね」と影山貴彦氏。しかし、そんな混乱の時代の中で、平成を代表するあの名作も!

命と歴史とプラトニックな愛を描いた「JIN-仁-」

―2009年はやはり「JIN-仁-」を語らねばなりませんね。

平成の終わりに数多くの雑誌や番組で「平成を代表するドラマ特集」が組まれましたが、多くの識者が「JIN-仁-」を挙げていました。私自身の平成ドラマベスト3にも入っています。主演は大沢たかおさん。この人は見ているだけで癒されます。笑顔が爽やかで、声もとてもソフトでやさしい。ガツガツ前に出るのではなく、静かに見守る感じの役者さんです。そんな彼の名演をクッションに、一癖も二癖もある濃厚なキャスト陣が、思いきり壮大なストーリーに飛び込んでいく、そんな気持ちいい一体感がありました。この大沢さんの受け入れる強さがあったからこそ、タイムスリップという設定も軽くならなかった。南方仁というキャラクターにぴったりはまっていましたね。2009年は「草食系男子」という言葉が流行りましたが、彼はそのタイプ。しかし、ふとしたときに肉食系の雰囲気が滲み出て見えるんです。これがたまらない! そもそもクリエイティブな仕事、特に芸能人は自分が一番だと思ってないと生き残っていけない職業です。大沢さんは、それを人一倍持っているけれど2倍抑えて、バランスを取っている。すごい信念を感じますね。

そしてもう一人、「JIN-仁-」の裏主役ともいうべき、坂本龍馬役の内野聖陽さん。これまで数々の方が龍馬役を名演されていますが、私の中では彼がナンバー1です! 内野さんは、2009年はとにかく大活躍で、「ゴンゾウ 伝説の刑事」「臨場」など主演も多く、ファンとしては嬉しい限りでした。彼のすごいところは、見ているうちは役柄が前に出て「内野聖陽」を忘れさせることです。しかし見終わった瞬間、「内野聖陽、すごい…」となるんですよ。なかなか、こういう人はいません。内野さんの私生活を知りたいとは思わない、とにかく演技が見たい、演じている内野さんを見続けたい、と思わせる天性の役者さんだと思います。現在放送されている「きのう何食べた?」の矢吹賢二役も好評ですが、「JIN~仁~」の龍馬と同じ人とは思えませんね。とてもかわいいです(笑)。

そして、タイムスリップをした南方仁の秘密を知り、彼を支える橘咲役の綾瀬はるかさん。彼女の包容力、安心感はなんなのでしょうか。派手な装いはしていないのに、登場するともうその姿から目が離せない。ドラマでスイッチが入った彼女の色気は凄みすら感じます。咲役が彼女だからこそ「JIN-仁-」は、ドラマティックになったと思います。プラトニックの愛、ギリギリで手を触れるくらいではなかったでしょうか。これはあくまで私の持論ですが、恋愛ストーリーで盛り上がるのはキスシーン前までです。結ばれたかったのに結ばれなかった、というのが究極。これは令和の時代になっても変わらないでしょう。「JIN-仁-」は2011年に完結しましたが、これ以上はないというラストでした。時を超えて手紙で想いを通じ合う。あんな清らかで美しいラブシーンは、もうなかなか生まれないかもしれませんね。

「このドラマは面白くなる」と期待値を上げる山下智久・相武紗季・松田翔太

―2009年、気になった俳優さんは誰でしょう。

月9の「ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~」で、爽やかな魅力を振りまいた山下智久さんです。彼は本当に興味深い俳優さんですよね。ちょっと山下さんのイメージとは違うかも、と首をひねるような役柄も、ちゃんと彼のものにしていく柔軟さ。最後には「彼だからこそ、このドラマはこんなに面白くなった」と唸ってしまった作品も何本もあります。線が細くて少し悲しげで、アクティブに動き回るほうではなさそうなのに、ドラマに入るとすばらしい躍動感を見せる。ハリウッド俳優でいうリヴァー・フェニックスみたいな感じかな。年齢以上の落ち着きや悟りを感じますが、とんでもない激しい一面も見せてくれそうな、期待を駆り立てる存在感があります。

「ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~」で彼と共演した相武紗季さんも、腹が据わってるなと感心しながら見ていました。裏表のある悪女役でしたが、それを見事に演じていて。私が教える同志社女子大学の学生たちにもこのドラマは大人気でしたが、まあ相武紗季さんは嫌われていましたね(笑)。それほど上手かったということです。この人はカンがいいというか、自分の立ち位置を思いきり楽しむというか、物語を上手に引っ掻き回すパワーを感じます。しばらく俳優を休業されていましたが、2018年6月から復帰。2019年には、もっと彼女の姿を見たいですね。

そして「ラブ(ハート)シャッフル」に出演していた松田翔太さん。軽やかで品があって、当時から独特の華がありました。言い方が難しいんですが、彼がそこにいるだけで、絵的にすごくオシャレになるんですよね。松田優作さん、松田龍平さんという父と兄を持つプレッシャーは私たちの想像を絶するレベルではないでしょうか。しかし彼は、そんな中で、自分の場所をしっかり築いている。生まれながらのセンスや才能もあると思いますが、多分、ものすごい努力や自己管理をされている方だと思います。

不安定な世相に掘り起こされた、昭和名作の実写化「銭ゲバ」

そして最後にもう一人、松山ケンイチさん。シャイで内向的な、けれどドカンと行く底力が常にみなぎっている役者さんですね。私は「凄い役者は、なにがあっても絶対に潰れない」という持論があるのですが、松山さんはその選ばれし一人だと確信しています。松山さんの演技からは「屈しない精神」を感じます。そんな彼が2009年に主演したのが「銭ゲバ」です。視聴率は高いと言えませんでしたが、やはり「平成を代表するドラマ」として挙げる人もいるほど、名作となりました。かなり悲惨なドラマを、ここまで見せたのは主演の松山ケンイチさんの熱演も大きいところでしょう。最終回のカメラ目線で、世の中へ恨みつらみを吐き出すシーン。「この腐った世界で、 平気なツラしてヘラヘラ生きてる奴の方がよっぽど狂ってるズラ。」このセリフを忘れられない人も、多いのではないでしょうか。

「銭ゲバ」はジョージ秋山さん原作の漫画ですが、連載されたのはたしか1970~71年頃。しかも主人公がお金のために周りを傷つけ、犯罪を重ねていくという救いようのないストーリーです。当時はこれがドラマ化されると知って、懐かしさを通り越して「よくこのタイトルを持ってきたな」と驚いたものです。でも企画が通るということは、絶対に意味がある。今、あえて2009年という年を見返すと、確かに先の見えにくくなっている時代だったんですよね。15年ぶりに政権交代が起こり、2008年にアメリカで起こったリーマンショックの影響で失業率も上がって。「銭ゲバ」以外のドラマのラインナップを見ても、「不毛地帯」「外事警察」「小公女セイラ」と、かなり重い。苦しい環境の中でもがき、答えを模索する内容が多いです。

ドラマを見ると時代が透けて見えますね。約40年続いたTBS系の昼帯ドラマ枠「愛の劇場」も、2009年にその歴史を閉じました。「テレビも生まれ変わらなければならない」という流れを強めた年だったのかもしれません。

元毎日放送プロデューサーの影山教授
KADOKAWA

【ナビゲーター】影山貴彦/同志社女子大学 学芸学部 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。「カンテレ通信」コメンテーター、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。

【インタビュアー】田中稲/ライター。昭和歌謡、都市伝説、刑事ドラマ、世代研究、懐かしのアイドルを中心に執筆。「昭和歌謡[出る単]1008語」(誠文堂新光社)。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」連載。(東京ウォーカー(全国版)・関西ウォーカー)

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