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御朱印の転売、恫喝騒ぎが悲しい……御朱印帳を持つ方に伝えたい5つのこと

  • 2019.5.13
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御朱印に関するショッキングな報道が相次いでいます。御朱印を書く神職や巫女への暴言・恫喝や、令和初日の特別御朱印を転売する、といった事態がニュースになったのをご存知の方もいるのでは。近年の御朱印ブームを受けて、皆様にお伝えしたい「御朱印の心」とは。神社を愛してやまない、巫女ライター・紺野うみが神社のたしなみを伝えます。

■令和の代に、改めて考えたい「御朱印」の意味

令和元年、おめでとうございます。この時代も、平和で素敵な世の中にしていきましょうね。

さて、近年の御朱印ブームの勢いには、本当に目を見張るものがあります。

私もこれまでに、巫女として「御朱印」にまつわるさまざまな記事や、神社のご紹介記事などを書いてまいりました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、令和元年になろうという10連休の折には、各地の神社へたくさんの方がお詣りをされて、さまざまな出来事があったようです。

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『「令和」時代を迎える前に知っておきたい「元号」のお話』という記事でも触れました通り、天皇陛下の「御代替わり」となる改元は、全国各地の神社にとっても大変に重要なタイミングでした。

この節目を迎えるとき、日頃の感謝と次の時代の安寧を祈念するために、お詣りへと出かけられた方も多かったことでしょう。

そして「令和」を迎えて、多くの神社が「奉祝(ほうしゅく=祝いたてまつること)」の意味を込めて、期間限定の御朱印をお分かちしておられました。

昨今、御朱印は「多くの方が神社仏閣に親しんでいただけるように」という願いを込めて、それぞれが趣向を凝らしていることもあり、大変な人気が出てまいりましたね。

そこで、多くの方が記念すべき参拝の証にと、その特別な御朱印を求めて各地の神社で長い列を作ったようです。

とある神社では、なんと御朱印を書いていただくのに10時間待ち、という瞬間もあったのだそうですから驚きです!

■御朱印ブームの裏側に潜む哀しみ

御朱印とは、言わば「一期一会」の出会いです。

どれだけ長時間並んだとしても、いただいて帰りたい! という想いが皆様にあったのでしょう。長蛇の列に並ばれた方々はもちろん、御朱印の対応をされた神職の方々も、本当に大変だったことと思います。

ただその後に待っていたのは、多くの神社関係者を嘆かせる出来事でした……。

その御朱印や御朱印帳が、大手フリマアプリ上で、高値で転売されてしまっていたのです。この衝撃的な現実は、多くのニュースサイトやSNSでも話題となりましたね。

私もそのことを知り、御朱印が持つ本来の意味や神様の御心を想うと、切ない気持ちにならずにはいられませんでした。

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Benny Marty / Shutterstock.com

私も「巫女」そして「ライター」として過ごす中で、御朱印にまつわる多くのエピソードを見聞きしてまいりました。

「もっと、上手に書いてほしかった」
「こんなにシンプルなものではつまらない」
「インターネットで見たのと、同じものがほしい」
「こっちはお金を払っているのだから、お客さんなのに」

このような哀しい言葉を受けて、ショックを受ける神職の方も、各地の神社で増えている現実があります。

御朱印を求めてお越しになる方の混乱が著しい神社においては、職員に「対応が悪い!」と罵声を浴びせ、あたかもサービス業であるかのような、謝罪や即時の改善を求める方までおられたそうです。

このままでは、御朱印について誤解されている方が増えてしまうばかりでなく、純粋に神様と心を通わせたいと神社へお詣りして御朱印をいただく方や、懸命に神様のために神社を守り奉仕をされている神職の方にまで、哀しみが広がりかねません。

今一度、皆様とともに「御朱印」とは何かを考えながら、心を神様の方向へ向けていただけたらと願い、私はひとりの巫女として5つのことをお伝えしたいと思いました。

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■御朱印帳を持つ方に伝えたい5つのこと

1.神様とあなたの「ご縁」の意味を心に留める

御朱印は本来、あなたが神社に参拝して、神様と心を通わせた「繋がりの証」としていただくもの。

ですから、仮に転売されているものを買ってきたとしても、それは「御朱印」の真の意味からは外れてしまっていることになります。

「御守り」を大切な方に贈ることはあるので、同じように捉えてしまう方もおられるのかもしれませんが、本来の御朱印の意味を知れば、それは「神様と私」のご縁を示すものだとご理解いただけるはず。

御朱印帳を開いて、いただいた御朱印を眺めながらそのご縁を思い出し、神社に想いを寄せてみてください。その瞬間、あなたはたしかに、神様と心を通わせているのです。

2.神社でそのときの「心」と「出会い」を慈しむ

私が個人的に危惧しているのは、御朱印に人気が出るあまり、「御朱印をいただくための参拝」になってしまう方が増えてしまわないか……ということ。

神社での過ごし方は、それぞれによって違いますが、「御朱印」をいただくだけで終わらせてしまうのではなく、その瞬間の「自らの心」や「境内でのあらゆる出会い」にも、丁寧に目を向けていただきたいのです。

たとえば、その日はどんなお天気でしたか?
迎えてくれた自然の姿は、どんな様子でしたか?
その時、あなたは心にどんな想いを抱えていましたか?
境内で出会った人や生き物たちと、どんな交流をしましたか?

神社という「神様のおひざもと」で過ごす時間を、心から慈しんでいただけたらうれしいです。

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3.かたちあるものの「ありさま」に執着しすぎない

御朱印は通常、神職をはじめとする、神社関係者が書いています。

神様のお手伝いとしてお書きしているも同然なので、もちろん心を込めて、皆様へとお渡ししていることでしょう。

ただ、人間の書く(押印する)ものですから、字の上手い下手があったり、場合によっては書き損じなども生まれたりすることもあります。

大切な御朱印帳だからこそ、「完璧に」美しいものにしたい、というお気持ちも、もちろんわかるのですが……。

しかし、その「出来不出来」で、神様とあなたとのご縁の質が左右されるわけではありません。神様は、あなたの「心」を見つめていますから、どんな「ありさま」の御朱印であっても、関係ないのです。

どうかそれを原因に、神様の前で腹を立てて怒鳴ったり、その神社を嫌いになったりするようなことがないことを願っています。

4.神様からの「授かりもの」を私欲のために利用しない

この世で生きるためには、もちろんお金が必要です。ただ、目には見えない神様と向き合うとき、その「欲」は、ぜひ脱ぎ捨てていただきたいのです。

今回の御朱印のように、「かたちある」もので「限定」の、多くの方が「素敵だなと思う」ものには、大変な価値が生まれるものでしょう。

それを「好都合な商売」であると考えてしまう方も、いらっしゃるのかもしれませんが……。

神様から授かったものである「御朱印」を、「お金」というものに代える行為は、その意味を大きく貶めてしまいます。

世の中には、決して「お金には代えられないもの」がたくさんありますよね。あなたがいただいた「御朱印」も、そのひとつなのです。

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5.すべての人が、互いに思いやりの「心」を持つ

立場は関係なく誰であっても等しく同じことなのですが、私たちはともに同じ時代と場所を生きる中で、互いを思いやりながら過ごしていきたいものです。

特に、神社はとても「神聖な場所」。神様のお住まいであり、神様のお庭であり、神様のための場所なのです。

その中で、自分の都合や主張ばかりを押し付け合うようなことは、その大切な場所を穢すことになってしまいます。

「神職」というのはまず第一に、神様のためにお仕えするという役割を担っています。

そしてもちろん、すべての人にとって神社が「神様を感じることのできる場所」になるように、参拝者の方とのご縁を繋ぐ役目も担います。

そのお役目を、神職はもちろんのこと、ご参拝の皆様にもご理解いただけたらと思います。

双方が思いやりと感謝の気持ちを失くすことなく、笑顔で神様の前にいられたなら、神様はきっと、それを一番よろこばれることでしょう。

■神社を愛し、御朱印集めを楽しむ皆様へ

神道の世界には、明確な「正解」や「不正解」というものがありません。

しかしだからこそ、それぞれの心が「その本質」を感じ取り、神様という目には見えない存在と「どのように向き合うべきか」を、問い続けなくてはならないのだと思います。

御朱印の内容には、それぞれの神社による想いや願い、工夫が込められているものです。

「印」と「日付」のみのシンプルなものから、色とりどりの個性あふれるもの、さまざまなかたちがあります。

私は、それが「神様」と「人」との心を結ぶものであれば、どれも素晴らしい価値があると考えています。

神社側も参拝者側も同様に、決して「私利私欲」のために利用してはならない、尊いものなのです。

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twoKim images / Shutterstock.com

神様にお仕えする者としても、「御朱印」を通じて神社という場所に親しみ、神様と心から向き合ってくださっている方が広がっていることは、とてもうれしく感じています。

神社に興味を抱き、心を通わせるきっかけが、きっとそれぞれの方にあるはず。

神様と自分との絆の証が刻まれた御朱印帳を宝物にしながら、また新たに素敵な出会いを楽しみにされている皆様、ありがとうございます。

これからさらに、神社を愛し、御朱印の意味を理解して、神様とのご縁を生涯大切にしてくださる方が増えてゆきますように。

そのすべての方が、心豊かに楽しく神社へ足を運び、神様と向き合うことができますことを、心から願っています。

画像/Shutterstock

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