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電話をしていると、なぜ歩きたくなるの?

  • 2019.5.7
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家のリビングや街中で、電話をかけながら行ったり来たり。よく見かける行動だが、それにしてもなぜ電話をかけるとき、歩き回ってしまうのだろう?

電話をしているとなぜ歩いてしまうのか?photo:iStock

なぜそうするのか理由はわからないが、電話をかけているとつい歩いてしまう。しかも自分ではそのことに気づいていない――こんな行動をしているのはあなただけではない。通話相手が誰であるかに関係なく、多くの人が携帯電話を耳に当てると、その場にじっとしていられなくなり動き始める。この現象を扱った研究はこれまでのところないようだが、謎の解明につながりそうな手がかりはいくつかある。理解を深めるために、3人の専門家に話を聞いた。

注意力を高める。

大多数の人にとって電話中にリビングや通りをうろうろ歩くことは、集中力を上げ思考力を高める効果があるようだ。「歩行などの運動活動は、脳の覚醒レベルを上げ注意力を回復させます」と、EMリヨン経営学大学院の社会心理学研究者で、情動を専門に研究するクリストフ・アーグは説明する。アメリカの研究者らによる、注意欠陥多動性障害の症状が見られる子どもたちを対象にした2015年の研究でも、動くことで注意力が改善することが確認されている。

感情の負荷を放出する。

エクス=マルセイユ大学運動科学研究所ジャン=ジャック・タンプラド教授は言う。「歩くことはエネルギーの発散になります。たとえば電話を待っていてヤキモキしていると、何かしたほうがいいと思うことがありますね」

電話中に歩き回ることは、通話相手や会話の内容に対して抱く過剰な情動を放出することになるという。「先史時代、穴居生活を営んでいた私たちの祖先はすでに、身に危険が迫った時に感じるストレスを歩くことで解消していた」とクリストフ・アーグは語る。

「感情が介在する割合が大きくなるほど、人間は身体を動かそうとします」と、リール大学心理学教授マリオン・リュイヤは補足する。メカニズムはいたって単純だ。重要な内容の電話だったり、気持ちが落ち着かなかったり、不安だったり、相手に嘘をついていたりすると、「脳に過度の認知的負荷がかかる」とアーグは言う。負荷を軽減させるため、脳は脚など身体の特定の部分にエネルギーを送り込む。その結果、体が動いてしまうというわけだ。また、歩くことはイライラの解消にも役立つ。

対話相手の模倣。

通話相手が動いていることを示す徴候を脳が無意識のうちに感知すると、つられて自分も動きたくなるという現象がある。「これは情動伝染と呼ばれるものです」とアーグは指摘する。タンプラド教授は、電話の向こう側にいる相手に対する「共感」と捉えている。面と向かった対話の場合、「対話をしているふたりの姿勢の変化や動きの類似性などを分析すると、対話者は互いに無意識に姿勢や身振りを連動させていることがわかります」。それと同じことのようだ。

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