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あなたは料理を作りたい人? 食べたい人? 自分に向いていることを探すヒント

  • 2019.4.18
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絵本『りんごかもしれない』『りゆうがあります』など、子どものみならず大人にもファンが多い絵本作家のヨシタケシンスケさん。3月30日に初のエッセイ集『思わず考えちゃう』(新潮社)を上梓しました。発売されるやいなやたちまち重版がかかり、話題になっています。

ヨシタケさんがいつも持ち歩いているというスケジュール帳に書き留めたメモやスケッチを元に、「こんなことがあったんです」「あんなことを考えていたんです」と自ら解説した一冊。

「富士山を撮るのは盗み撮りにならないの?」「子どもに優しくできないよ」「何かを決めた瞬間が一番楽しい」など、”思わず考えさせられちゃう”エピソードがつづられています。

“思わず考えちゃう”女性に向けて、ヨシタケさんに5回にわたってお話を伺いました。4回目のテーマは「それでも目標が欲しい貴女へ」です。

【第1回】「できないよね」ってちゃんと傷を舐め合いたい “思わず考えちゃう”貴女へ

【第2回】「向いてないこと」から自分の道を決めてもいい

【第3回】僕が“つながらない関係性”を大事にしたい理由

小さな「好き」を必死で拾い集めて目標にしたがっている

——2回目で「やりたくないことから自分を決めていってもいいんじゃないか」という話が出ました。テーマをひっくり返すようで申し訳ないのですが、それでもやっぱり「好きなこと」や「やりたいこと」を求めてしまう人は多いと思います。「好きなことが見つからない」と悶々としちゃう……。

ヨシタケシンスケさん(以下、ヨシタケ):きっと、死ぬまでそうじゃないですか。

——えっ、死ぬまで?

ヨシタケ:「みんなは好きなことややりたいことを持っている。でも、自分は持ってない。だから、自分はダメなんじゃないか」というのが出発点なんですよね。だから、「言うほどみんな持ってないよ」というところをデータで示してあげられればいのかなって思います。それだけでも随分救われるじゃないですか。

「みんな持ってるって言ってるけれど、結構あやふやだよ、みんなコロコロ変わってるよ」って言ってあげるだけで。

自分のやりたいことをハッキリ持ってる人って、そうそういないんですよ。持っている人はすごく輝いて見えるから、デカく見えちゃうけど、割合でいうと滅多にいないからねって。

——ああ、声が大きいとみんなそうなのかなって思っちゃうというのと似ているかも。

ヨシタケ:希少動物だからねっていうところをちゃんとわかっていれば、もう少し落ち着いて考えられると思う。

「好き」というのも、何気ないことやつまらないことで好きになったりしてるわけであって、細かいところをみんな必死で拾い集めて自分の目標にしたがってるわけですよね。でも、持ってないことを気に病んだところでモテるわけでもないし。

——「目標を作りたがっている」というのはそうかもしれないです。

ヨシタケ:一方で、「やりたいことがない」というのは豊かなことの証拠でもあるんですよね。何不自由なく過ごせてるからこそ、別に夢を持たなくて済んでいる。それって、100年前に比べたらすごく幸せなわけ。

昔はそんなこと言ってる場合じゃなかったから、好きなことを探してるのは最高に贅沢な悩みなのであって、どうぞどうぞ悩んでくださいって話じゃないですか。それだけたくさん選択肢があるし、選ぼうと思えば選べるからこそ、決められないわけであって、存分に悩めばいい。そのことを気に病むのって、少なくとも楽しくはないはずですよね。

とはいえ、僕自身も自分でそう言いながら「みんな本当は努力してるはずだ」「みんな本当は夢があるはずだ」「持ってないのは僕だけだ」って頑固に思い込んでいる部分もあるから、「でも結構みんないい加減みたいよ」ということを僕は知りたいし、自分を説得したいので、そこを探していきたいですね。

——過去の自分にも言ってあげたいなあ。

真面目な人が溜まりがちな“吹き溜まり”がある

ヨシタケ:真面目な人が陥りがちな場所、溜まりがちな場所があるわけですよ。吹き溜まりが。

「思わず考えちゃって、このコーナーに追いつめられる」みたいな場所が社会にはあって、自然とそこに集まってきてしまう生真面目な人たちが、ここしか居場所がないんだよねっていうところで、傷を舐め合える場所をちゃんと作るべきなんでしょうね。

息を止めて職場に向かっていくというか、明日もちょっと我慢しようっていう場所を作れれば一番良いかなって思って。

——真面目な人たちのためのサードプレイスみたいですね。

「作るのが好きな人」と「見せるのが好きな人」のちがい

ヨシタケ:学生時代、僕は立体作品を作っていたんですけれど、「作品を作るのが好きな人」と「人に見せるのが好きな人」って結構違うんです。作家として生きていく人は、作るのが好きな人よりも、見せるのが好きな人が多いんです。それがわかったときにホッとしたんです。

——というのは?

ヨシタケ:僕は作るのは好きなんだけど、人に見せるのはそんなに好きじゃなかったんです。作ってニヤニヤするのは好きなんだけど、そういう人って作家としてやっていけないんですよ。それは趣味でやればいいだけだから。

作家って、人に見せて喜んでもらったり、人の意見を聞いたり、人とつながることが楽しいから作っているという人が多いんです。だからこそ、もっと見てくれってなるし、人の意見を聞きたいし、人とつながっていたい。そのための“媒体”として、自分はモノを作りたいという人が作家に向いている。

「作るのが好きな人=見せるのが好きな人」ではないことを、僕はごっちゃにしてて苦しかったんですけれど、それがわかったときに結構楽になりました。

僕は作るのは好きだけど、それをどう見てもらおうとか、どう喜んでもらおうということに、大して興味がないんだとわかったときに、作家は無理だと思ったんです。

——だから大学院を修了されたあと、就職したのですか?

ヨシタケ:はい。人の言うことを聞くのは得意だったので。

だから(作品を作るのは)人とつながるのが目的じゃないんです。自分でニヤッとするのが好きなんです。でも、出版であれば人と会わなくてもできるんですよね。そういう抜け道もあるよ、というのはのちのちわかってくるんだけれども……。

例えば、食べるのが好きな人と料理を作るのが好きな人は全然違いますよね。その区別がついてない人が結構いる。自分は食べるのが好きだから、料理を作るのも好きなんじゃないかみたいな。それに気づくだけでも結構ちがってくるんじゃないかなと思いますね。

映画を見るのが好きだから、映画を作るのも好きなんじゃないか? というのも全然別じゃないですか。働いているとその違いがなんとなくうっすらわかってくるんだけれど、言われると「確かに」と思いますよね。「どっちが好きだったんだっけ?」って。

——はい。自分の仕事に当てはめてもそうかもしれないですね。

ヨシタケ:「へー」ってなりますよね? だから、例え話で「世の中で起きている問題は、あなたでいうところのこのことなんじゃないか」と提示していくのが、絵本にしろ今回の本にしろ、僕がやっていきたいことなのかなって思います。そういうことを考えるのも好きだし、楽しいし、わかると自分がうれしいんですよね。

※次回は4月23日(火)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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