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開運のために和菓子!? 子孫繫栄、暑気払い…古くから伝わる願いとは?

  • 2019.4.4
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四季折々の和菓子は、いにしえから伝わる年中行事や風習とも深い関わりが。初夏から夏にかけての菓子に込められた願いや由来を知り、倣って、おいしく幸せをいただきましょう。和菓子の歴史に詳しい研究家・青木直己さんに教えてもらいました。

柏餅(かしわもち)/5月5日 端午の節句

5月5日の“端午の節句”は、現代でもなじみ深い年中行事の一つ。もともとは病気や災いを払う中国発祥の行事であり、奈良時代より前に日本へ伝わり、平安時代以降には宮中の節会として盛んになったのだとか。それがなぜ“子供の日”と呼ばれ、柏餅を食べるようになったのか?

「その理由は、武家に大きな関わりがあります」と言うのは、和菓子の歴史に詳しい青木直己さん。

「端午の節句には、香りの強い菖蒲湯に入り邪気払いする風習もありますが、菖蒲が尚武(武を尊ぶ)に通じるので、武家では重要な日とされました。その武家にとって最も大切だったのが家の継続。柏餅で使われる柏の葉は、新芽が出るまで古い葉が落ちない特徴があり、さらに“柏手”という言葉もあるように、昔から柏は神事に欠かせない神聖な木とされていました。こうして武家が多い江戸を中心に、子孫繁栄を願って柏の葉で包んだお餅を、端午の節句に食べる風習が広まったのです」

『麻布 青野総本舗』 柏餅(左から、味噌餡、こし餡、粒餡)各¥250*税込み 元禄年間から栄えていた水飴問屋を祖とし、1856年に麻布市兵衛町で和菓子屋として創業。柏の葉で包んだもっちりとした柏餅は、3種類の餡がある。4月中旬から5月中旬に販売予定。東京都港区六本木3-15-21 TEL:03・3404・0020 9:30~19:00(土・祝日~18:00) 日曜休

水無月(みなづき)/6月1日 氷の節句

6月の京都を訪ねると、どの和菓子屋さんでも見かける水無月。ういろうの上に小豆をのせて固めた三角形のお菓子は、京都を中心に関西の初夏を彩る風物詩になっている。そんな水無月の由来は、実は諸説あるそう。

「私が支持するのは、6月1日の“氷の節句”からの由来。水無月とは新暦で7月になるのですが、宮中では氷室から切り出した氷をこの日に食べて暑気払いをしたそうです。その氷に似せて作ったのが三角形の水無月。明治以降、一般に広まったといわれています」

そして、半年の穢れを祓い、残り半年の健康と厄除けを願う6月30日の“夏越の祓”とも深い繋がりがあるとも。

「室町から江戸時代に、庶民は夏越の祓に蒸餅なる菓子を食べていました。蒸餅の実態は不明ですが、その風習と結びつき、京都では6月に水無月を食べるようになったのだと思います。小豆の赤には魔除けの意味もあり、食べることでその力をいただいたのでしょう」

『亀屋良長』 水無月(プレーン)1個¥270 1803年、良質な水が湧く四条醒ヶ井の地に創業。ういろうの上に大粒の大納言をたっぷりのせた水無月は、プレーンのほか抹茶味もあり。6月27~30日に販売予定。京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19 TEL:075・221・2005 9:00~18:00(茶房11:00~17:00) 無休

青木直己さん 虎屋文庫研究主幹として和菓子の歴史と文化に関する調査・研究などに従事。退職後は大学などで講師を務めるほか、NHK時代劇の食文化考証を担当。著書も多数。

※『anan』2019年4月10日号より。写真・山口 明 スタイリスト・中根美和子 取材、文・野尻和代 撮影協力・UTUWA

(by anan編集部)

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