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「なんかいい」セレクトショップWAGAMAMA TOKYO。

  • 2019.4.4
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愛すべき洋服馬鹿と偶然出会ってしまったのは、PARKSで。ディレクターの関くんにセイハローしに行った時に偶然居合わせたのが中村くん。ワガママ トウキョウというセレクトショップをやってるという彼は、何かといろいろ破天荒。「僕、欲しいものがあったら値段とか一切見ないで買うって決めてるんです。だって欲しいものは欲しいですし」

ちょうどその時彼が着てたのは、ハイク×ザ・ノース・フェイスのコラボのコート。お店で完売だったらしくネットでゲットしたのはなんと普通の価格の3倍近く(!)。「あり得ないから!」って私の感覚だと思っちゃうんだけど、彼ときたら当然のように、「欲しいものを買わない理由ってなんですか?」的にシラッとしたスタンスで。

「僕、『自分の物欲』が自分を動かす最大のエネルギーになってるんです。欲しいものがあるからめちゃくちゃ頑張って、働いてお金を稼ごう。そして好きな洋服、自分が納得して買った洋服を着て楽しい人生を過ごすって目的が僕を動かしてるんですよねー」。この人、完全に振り切れちゃってる!

数日後、彼のお店に遊びに行く。「好きなものが好き!」ってスタンスだと、ある程度において趣味嗜好が偏ってるのかな……と思っていたのだけど、気持ちのよい肩すかし。そこにはジャンルもテイストも問わず多種多様。古着、メゾンのヴィンテージのアクセサリーもある、知る人ぞ知るこれからのブランドもある、センスよく置いてある什器にしても売りものらしい。

決して広くはない店内、見せるコンテンツも限られてる中、丁寧に選んだアイテムが並ぶ。オーナーの中村くんの審美眼に適った什器の中には、The Fabulous Sounds Outfittersの吉田量さんがワガママ トウキョウのために世界中から買い付けたヴィンテージジュエリーが並ぶ。dajacのスケートボードオーディオに並んだ、MACHINE×DAIKEI MILLSのチェアは購入可能。

ちょっと驚いてしまったのが、このお店のためだけにブランドが作ってくれた「スペシャルアイテム」が置いてあるところ。聞けば毎月展開の予定で、このプロジェクトが進んでるという。

「シンプルに“どんなお店だったら、わざわざ出向いて、買い物がしたくなるかな?”ということを、とことん考えたんです。で、僕の結論は“そこでしか買えないもの”だったんです。なので、僕は別注をメインとしたラインナップのセレクトショップを作ろうと決めて。いまはまだ別注オンリーにまではいけてないんだけど、目標はそこにあって。“買い物って楽しい!”ってお客様に感じて欲しいです」

SUN/kakkeの別注シャツ。¥51,840

「僕、買い物における洋服の可能性ってすごいなって思ってるんです。僕は、 “洋服の持続性”ってかっこよく言ってるんですけど(笑)。たとえばお店によい洋服があった場合、いろいろ考えて、えいやっ!って決心して買った時、テンションが1回上がります。その後、家に帰ってから(ココ、すごい重要!)、また自分の毎日の生活に取り込まれるわけで。その時に、“やっぱり、買ってよかったな” “奮発して買ったから、明日から仕事もっと頑張ろう”って気持ちになりますよね。背伸びした、頑張った自分をその洋服が思い出させてくれるというか。その場所には洋服を売ってくれた店員さん、その洋服を買った素敵な空間はもうなくて、単に自分の家なんだけど、服を買ったあの時の高揚感だったり幸せな気持ちは再現されて、手に取る度に持続する。それが誰かの人生を、プラスの方向に導き続けてくれるんだろうなって思うんです。それって僕は本当にすごいことだと思っています。しかもその洋服を世界中、好きな場所に着ていけて、自分とともに人生を歩んでくれるっていうんだから、もうすげーや!」。もうたまんない!って顔をほころばせ、うれしそうに話す彼のまなざしの揺るぎのなさ。

“ファッション大好き!”という気持ちの貫き方。わりと偏屈なブランドが、彼のこのお店だけにスペシャルアイテムを作るのは、きっとこういうことだと思う。ファッションにおけるあふれんばかりの情熱。それは、相対するブランド、着てくれるお客さんたちが潜在的に持ち続けていた“ファッション熱”を、再び燃え上がらせる大きな炎への引導になる。彼はいわばファッションにおける作り手と、買い手のパッションを動かすスイッチになる存在なんだろう。これはもうワクワクでしかない。

トゥアレグ族のヴィンテージのアフリカンジュエリー。¥34,560、60年代のBIG MACのカバーオール。¥36,720

「僕は、“なんかよくわからないけど、好き!”っていうファーストインプレッションをとても大事にしてて。だからあえて“何でコレが好きか”ってことを、分析しないようにしてるんです。もちろん、買った後は生産背景やカルチャーのバックグラウンドなどは勉強します。ソレは普通に大好きな人と仲良くなった時、より相手のこと知りたくなるのと同じ感覚で。“なんとなく好き”、その曖昧な感覚を最大限に研ぎ澄ましていきたいなって思ってます」

“なんとなくの感覚で選ぶ”ってこと。知識や情報じゃなくて感覚値。ファッションというジャンルがダイバーシティとか、LGBTQにおいて一日の長があったのは、この感覚で選ぶことが認められていたというファッション≒アートという海外の背景もあったのかもしれない。

何が欲しいかということ、自分の欲望を健やかに肯定することは、自分らしさを生きること。自分らしさというのは、自分が楽しいって思うこと、気持ちがいいものは何かというのを見つけていく作業の中で培われる。つまり自分の欲求がどこにあるのか、何によるのかを探る過程が、アイデンティティを形成する。

彼の話を聞いてると、あらためて自分のテイストやスタイルって、決める必要ってないんじゃないのかなって思ったりする。昨日の自分と今日の自分が違ってるなんて当たり前だし、天気がいいとか、夜更かししたから眠いとかで体調が変わると同時に自分のテンションも違ってくる。つまり自分らしさなんて日々変わるんだから、人生における一本筋が死ぬまで通ったアイデンティティを確立するってことを考えるのがそもそものナンセンス、なんじゃないかと。

オーナーの中村勇貴くん。

日々変わる自分を認めたうえで、自分がいま感じた“なんかいい”っていう曖昧なこの感覚に従える柔軟性が、自分らしさに繋がるのじゃないかなって思ったりする。そして日々変わるその変化を楽しめることが、ファッション、ひいては人生を楽しむ秘訣なのかも。

何が好きで、何が心地よくて、自分自身が、いま何を求めているかってことって、日々の煩務に追われて掘り深めることはあまりしない。ワガママ トウキョウ。ここは、素のままの感覚で選ぶというプリミティブを楽しむお店。見方を変えると、自分のいまの興味のアンテナが、どこにあるのかを見いだせる場所。

WAGAMAMA TOKYO東京都渋谷区神山町7-15 immeuble渋谷神山町1F営)14時~22時休)水www.instagram.com/wagamama_tokyo/?hl=ja

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