写真家・石田真澄と松本花奈監督が“撮る”理由とは?記憶と記録を巡るトークセッション

石田真澄写真展「evening shower」にて、松本監督が「お気に入り!」という作品の前で2ショット
撮影 / 加藤孔士朗

池ノ上にあるアートギャラリー&コーヒースタンド QUIET NOISE arts and breakでは2月2日〜24日まで石田真澄写真展「evening shower」が開催されていた

注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による、日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」が、「DVD&動画配信でーた」で好評連載中。Movie Walkerの特別企画として、松本監督が”いま気になる人”に、質問を投げかけます。今回は連載第6回のテーマ “他者を撮ること” について、写真家の石田真澄と語り合った。

池ノ上にあるアートギャラリー&コーヒースタンド QUIET NOISE arts and breakでは2月2日〜24日まで石田真澄写真展「evening shower」が開催されていた
撮影 / 加藤孔士朗

松本「先日まで放送されていた『平成物語』で石田さんにはスチールを撮ってもらいました。ビジュアルだけではなくて現場写真も沢山収めていただいたので、撮影期間中はほぼ毎日一緒にいたね…!」

石田「だね。普段は広告や雑誌の撮影をしているのでドラマの現場は新鮮でした。プロデューサー、監督、撮影、照明、録音、美術、衣装、ヘアメイク…などの大所帯のチームで動くというのは写真ではないことだし、ファッション誌とかだと特に女性のスタッフが多い印象があるけれど、映像の現場の方達は男性のほうが断然多くて、ロケ弁の炭水化物感がすごい!と思ったり(笑)、普段とは違う経験を味わえて楽しかったです。なにより『平成物語』のチームは本当に素敵な方ばかりでした」

松本「私もそれは感じています。あんなに呼吸が合うチームってほかにあるのかなってずっと思っていました。現場に行くのが毎日楽しみだった」

フジテレビ深夜ドラマ「平成物語」は3/18〜3/22で五夜連続放送された。現在FOD及びTVerで配信中
KADOKAWA

松本「撮影期間中にもいろいろな話をしたけど、今日は石田さんと『撮る』というテーマについて話したいなと思います」

石田「お願いします」

「大人になったら人生がつまらなくなる、と思っていました」

松本「石田さんが写真を始めたのはいつごろからですか?」

石田「写真に興味を持ち始めたのは中学生のころ。ガラケーを持ったことがキッカケでした。それまではカメラって運動会とか修学旅行とかでしか使わなかったけど、ガラケーを持ったことで、カメラを携帯出来ていつでも写真が撮れるようになったことがすごく楽しくて。でもその時は人ではなくて景色や食べ物を撮っていました。中学生とかだと皆、撮られることに恥ずかしさや抵抗があって、なかなか友達も被写体になってくれなかったんです。それで高校に入ってから一眼レフを買って、友達をこっそり撮るようになりました」

松本「こっそり、というのは…?」

石田「人を撮りたいという想いがだんだん出てきたのですが、カメラを構えて『こっち向いて〜、はい、チーズ』とすると、やっぱり皆多少身構えてしまうじゃないですか。良く映りたいという気持ちが無意識的に出てきてしまうというか。でも、私が人を撮りたいと思ったのは別にカメラ目線の皆の顔が見たいからという理由ではなかったので、あくまで自然体でいて欲しかったんです。だったら相手が気づかれない内に撮っちゃえ、と思って(笑)」

松本「なるほど。でもそれはいまの石田さんの撮る写真にも共通しているように感じます。映像だったら連続的に続いていくから感情を表すことはそう難しくはないけれど、写真だとどの瞬間にシャッターを押すかで全然印象が変わってくるような気がしていてその切り取り方が絶妙というか」

石田「そうですね。だからポートレート写真よりも、撮っていることに気づかれない写真のほうが好きなのかもしれません」

1998年生まれの写真家、石田真澄。松本監督と同学年
撮影 / 加藤孔士朗

松本「私は元々石田さんの撮る写真がすごく好きで、ファンで。石田さんの写真に写っている方は皆、まったく気取っていないですよね。だから見ていると石田さんと被写体の方の2人だけの特別な時間をこっそり覗き見しているような感覚になるんです。実は2018年の頭にQUIET NOISEでやっていた『light years –光年–』の展示も見に来ていました。石田さんがいるのは分かっていながらも人見知りが発動して結局話しかけられずに帰ってしまったけれど…。『light years –光年–』には石田さんの女子校時代の思い出が写っていましたが、あの写真集を作ろうと思ったキッカケはなんでしたか?」

石田「中高一貫の女子校に通っていたんですけど、高校に上がる時、つまり6年間の内の3年間が終わった時に、あと3年間しかない…と思ったら無性に寂しくなりました。寂しいというのは別に友達と離れるのが嫌だ、とかいうわけではなくて”高校生”という肩書きから外されてしまう、ということが嫌で寂しかったんです。『中高生ってやっぱり無敵』だったり『中高生だから味わえることがある』というのを周りの大人から言われる機会が多かったので、じゃあ大人になったら人生ってつまらなくなるのか…という思考に陥ってしまって。体育の授業とかでクラスメート達が楽しそうにはしゃいでいる姿とかを見ると、『でもこの楽しい時間はあと3年で終わっちゃうんだぞ』『その楽しさはいつまでも続くものではないんだぞ』と思っていました。だからなのか、皆と一緒にただ楽しむということが出来なくなってしまって、その時の自分たちの存在が消えてしまうことへの恐怖感が強くあったので、だったら自分はその青春の渦中にいるのではなくて限りある瞬間を残しておきたい、記録しておきたいと思って写真を撮っていました」

「過去の楽しさと、いまの楽しさは種類が違うから比べちゃいけない」

1998年生まれ、大阪府出身の松本花奈監督
撮影 / 加藤孔士朗

松本「その感覚はすごく分かります。忘れられる、という能力は人間の良く出来ている能力である反面、せつない時もありますよね」

石田「完全に忘れはしなくても記憶が薄れていくのはやっぱり悲しいな、と思って。それは自分がフィルムで写真を撮る理由にもつながるところでもあります」

松本「というのは?」

石田「海外研修に行く機会があって、その時に”写ルンです”を持っていったんです。それに特に深い意味はなくて、私達の世代ってギリギリ小学生の遠足とかだと写ルンですを使っていたりしますよね。なんとなく一眼レフ以外のカメラを使ってみたくなったんです。でも、帰ってきてからも撮り終えられなくてなんだかんだ1か月近くかかって36枚撮って、現像に出しました。つまりその後手元に来る写真って、1か月前の記憶なわけですよ。で、それを見た時にその写真を撮った時の記憶が全部甦ってきました。例えば英単語とかって、日々繰り返し同じ単語を見ることで徐々に記憶に定着していきますよね。日を空けて何度も目にしてきたから私たちは『リンゴ=apple』とスッと出てくるわけで。その感覚と似ていて、焼きあがったネガを見た時に、記憶が全部甦ってきたことが、ちゃんと記憶が濃くなっているような気がして少し安心したんです。『あ、私まだちゃんと思い出せる。忘れていない』って。だからそれから写真はずっとフィルムで撮っています。ネガが上がってきて、過去の記憶を見ることで自分の中での記憶を濃くさせているような感覚です」

松本「過去のことって形に残らず曖昧としているからこそ、感情を整理しづらいなと思うことは多々あります。でも私たちには写真もそうだし、映像もだし記録出来るものがあって幸せだなとも思います」

石田「ですね。でも『light years –光年–』の写真集を作っていたのはちょうど大学一年生の夏〜秋にかけてだったのですが、当時は過去にすごく固執していました。この写真を撮っていた時はすごく楽しかったのにな、と思って比べてしまったりとか。でもいまはまたそこから変わっていて、楽しさの種類に気づけました。過去の楽しさと、いまの楽しさは種類が違うから比べちゃいけないんだろうし、変化を受け入れることが大切なんだなって」

石田の作品を真剣なまなざしでめくっていく松本監督
撮影 / 加藤孔士朗

「好きだから写真を撮りたいと思うし、好きだから雑誌を沢山読みたいと思う」

松本「石田さんとは好きなミュージックビデオやCMの趣味がものすごく合って、ここまで共通の話題が出来る人って、いままで周りに全然いなかったのですごくうれしかったです」

石田「『平成物語』の現場でも休憩中はもっぱらその話題で盛り上がっていたもんね(笑)」

松本「確かに(笑)」

石田「でもやっぱり一番は雑誌をすごく読んでいます」

松本「なるほど。なんか、いまの若い子って全然雑誌読まなくないですか…?」

石田「本当そうなんです。大学で広告の授業があるのですが、毎月なにかしらの雑誌を買っている人って私とあともう一人しかいなかったりして。90年代くらいの雑誌が一番活発だった時期に私達くらいの年齢だった人たちがいま、30〜40代とかでいまの雑誌業界を引っ張っていっているので、その方達の熱量はすごく強いものを感じる反面、いまの皆はInstagramが情報源となっていたりするから、その差はすごくある。そこは悲しいというか、熱量が届いていないのがもったいないと思うんです。だから元々私は雑誌の編集者になって、皆がもっと雑誌を読んでくれるようになるにはどうしたら良いかっていうことを考えるのも良いなと思っていました」

松本「元々はいまとは違う道も視野にあったのですね」

石田「はい。ただ、カメラマンもある意味でプランナー的な役割は非常に担っていると思いました。先日、『GIRL HOUYHNHNM』という媒体で高橋佳子さんを撮影したのですが、話をいただいた時に高橋さんを葛飾区の柴又で撮りたいと提案しました。高橋さんはこれまでどちらかというとハイブランドなお洋服のモデルさんをやられていることが多い印象があったのですが、だからこそ逆に普段とは違う、柴又で中華を食べていたりとか、そういう自然なところを切り取りたいなと思ったんです。そういう自由に自分の色が出せる撮影も結構多くて、そういうのをやっていると、これコンセプトもロケ地も自分がやりたいことを提案出来ているってことは、元々やりたいと思っていたプランナーに近いのかもしれないと感じました。もちろんケースバイケースではあるとは思いますが」

松本「あの写真、大好きです。高橋さんの中から撮られている、という意識が消えているように感じるんですよね。私には撮れない…」

石田「でも、写真の一番の特徴って、誰にでも撮れるところだと思うんですよね。例えばイラストとかだと、中々そうもいかない気がするんです。このコーヒーカップを書け、と言われても私は書けない。一定のレベルに達するまでのハードルがあると思うのですが写真ってそうじゃない。シャッターを押せば誰でも撮れますよね。撮ったらそこにあるものが映るから、第一ステップのハードルが低い。でもそれは良さでもあるけれど、写真を職業とする時にはすごく難しいと感じます。でも好きだから写真を撮りたいと思うし、好きだから雑誌を沢山読みたいと思う。それってすごくシンプルだけど、欠いてはいけない感情だと思うんです。だから私が写真を撮ることで、それが現代を生きる人たちが雑誌を目にするキッカケに少しでもなれば良いなと思います」

松本監督が手を止めた作品は、なんと石田にとっても思い入れの深いものだったそう。なんとも気の合う2人!
撮影 / 加藤孔士朗
KADOKAWA

●石田真澄‬

1998年生まれ。2017年5月自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年2月、初作品集「light years –光年–」をTISSUE PAPERSより刊行。雑誌や広告などで活動。(Movie Walker・取材・文/松本花奈)

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