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お寺で学ぶ、今と未来を生きる智慧「スクール・ナーランダ vol.4 京都」開催レポート

  • 2019.4.1
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お寺で学ぶ、今と未来を生きる智慧「スクール・ナーランダ vol.4 京都」レポート

世界遺産、京都・西本願寺で開催された、こころの「軸」をつくるための学びの場

「スクール・ナーランダ」 に参加しました!

 

 

世界遺産 京都・西本願寺で、2月9日(土)と10日(日)の2日間行われた「スクール・

ナーランダ vol.4」。これから社会に出る10〜20代の若者が、多様な価値観のなかで自分の

「ものさし」をつくるヒントになるような”現代版寺子屋”です。お寺を舞台に、アーティスト、

ミュージシャン、科学者など、多彩な講師陣を迎えて行われてきたのですが、今回も豪華な

ラインナップ。

 

「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」の皆川明さん、日本を代表するコンテンポラリーダンサー・

振付師の島地保武さん、フリーライターの夏生さえりさん、科学論研究者の佐倉統さん、

そして浄土真宗本願寺派僧侶の藤丸智雄さんと武田正文さんが登壇しました。

 

精進料理のランチ、匂い袋や腕輪念珠づくりを体験できるワークショップも。

通常非公開の国宝拝観もできるという、盛りだくさんの2日間になりました。

 

会場は近代名建築「本願寺伝道院」

 

 

会場となった本願寺伝道院は、明治28年(1895)につくられた伊東忠太設計の近代の名建築。

ふだんは非公開ですが、この日は特別に中に入ることができました。

 

 

歴史ある建物での授業に、ちょっと気持ちが引き締まります!

 

「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」の皆川明さん

 

 

1日目の授業は、「minä perhonen」を主宰するファッションデザイナー・皆川明さんからスタート。

皆川さんがなぜ、ファッションの仕事を選んだのか、どんなふうにデザインを学び、ブランドを

立ち上げたのかをていねいにお話しされました。

 

高校生まで、皆川さんは陸上競技の長距離ランナーだったのですが、18歳のときに大きな

怪我をしてしまい、陸上の道を諦めたのだそう。そして、バックパッカーとしてヨーロッパを

旅していたとき、偶然にもファッションウィークのパリで、ファッションの仕事に出会います。

 

「陸上競技で怪我をしたことが、結果的に自分の未来がつくられるきっかけになっている」と

話す皆川さん。どんなものごとも「よいこと」をはらんでいるという言葉が、深く胸に響きました。

 

ダンサー・振付師の島地保武さん

 

 

2004~06年Noism(新潟市)、2006~15年ザ・フォーサイス・カンパニー(フランクフルト) に所属。

島地保武さんは、世界を舞台に活躍するダンサーです。中学2年生のとき、ダンスをテーマとした

テレビ番組に影響を受けて踊りはじめ、大学入学と同時に、本格的にダンスを学び始めました。

 

それから、8年後。憧れていたウィリアム・フォーサイスが主宰するダンスカンパニー

「ザ・フォーサイス・カンパニー」に迎え入れられます。

 

「つり革を持つ右手を左手に変える。駅の階段を後ろ向きに上る。

ほんの少し、日常の動きをズラすことから踊りが始まっていきます」。

 

授業では「手に持っているものの重みを感じる」などのワークを体験。

「重さを感じて動かす」ことで所作が美しくなると教えていただきました!

 

浄土真宗本願寺派僧侶の藤丸智雄さん

 

 

3人目の先生は、藤丸智雄さん。本物のお坊さんです!大学で「倫理」の先生もされているそうです。

藤丸さんは「自分らしさを表現できる社会になるには?」というお話をされました。

 

日本には「袖振り合うも多生の縁」という仏教的なことわざがあります。たった一度会っただけの

人でさえ、前世のご縁があるのかもしれないから、「どんなご縁も大切にしよう」と考えるという

のです。

 

藤丸さんは、他者との出会い(ご縁)をよく理解することが、誰かを認めていくことにつながり、

自分らしさを表現できる社会になっていくのではないかと言います。

たしかに。みんなが他の人を認めるということは、自分が認められるということにつながりますね!

 

 

科学論研究者の佐倉統さん、

 

 

2日目の授業は、科学論研究者の佐倉統さんからスタート。

科学で証明された「科学知」と、生活感覚に基づいた「生活知」にはギャップがあることを

お話されました。

 

たとえば、私たちは「夕日が沈むね」と言いますよね?でも、実際に動いているのは、

太陽ではなくて地球のほう(地動説)。「夕日が沈む」というのは間違いということになります。

佐倉さんは「私たちは、生活のシーンに合わせて天動説と地動説を切り替えている」と言います。

なるほど!これから、脳医学や遺伝子学、さらには人工知能など、新しいテクノロジーが発展

していきます。

 

かつては「絶対ありえない!」と思われていた地動説を、世の中が受け入れていったように、

新しいテクノロジーを受け入れるには科学的知識を適切に使う「科学リテラシーが重要」だと佐倉さん。AIやロボットをどう扱っていくのかを考えるのは、これからの私たちの仕事なのだな、と

思いました。

 

 

フリーライターの夏生さえりさん

 

 

夏生さえりさんは、フリーライター。Twitterの恋愛妄想ツイートが話題になったアノ人です。

現在は、本アカ、サブアカ合わせてフォロワーは20万人以上!5冊目の本を執筆中なのだそう。

 

充実して、成功しているように見える夏生さんですが、就職活動の時期に悩んだことから、

1年間引きこもった経験があります。でも、その経験があるからこそ「今の自分がある」と言います。

引きこもっていたときも、現在も夏生さんの軸にあるのは、誰かを「ちょっとだけハッピーにする」

ものをつくること。

 

「もし、一歩も進めなくて困っているなら、人が喜んでくれることを進めたらいいと思います」と、

アドバイスをくれました。

 

浄土真宗本願寺派僧侶の武田正文さん

 

 

最後の授業の先生は、浄土真宗本願寺派僧侶の武田正文さん。

臨床心理士・スクールカウンセラーとして、学校や企業などでカウンセリングもされているそうです。

 

武田さんのお話は、ザ・仏教!お釈迦さまや阿弥陀如来の「教え」を説きながら

「思い通りにならない苦しみにどう向き合うか」を話されました。

この世界には怖いものがいっぱいだ!と思うときにも、仏さまは「大丈夫、よく見てごらん。

綺麗なもの、大事なことがいっぱいだよ」と教えてくださっているのだよ、と武田さん。

 

「南無阿弥陀仏」の「南無」は「おまかせします」という意味。

「阿弥陀仏にお任せします」というのが、お念仏なのだそうです。

 

同世代の人たちとのディスカッション

 

 

各日、授業のあとは先生方による鼎談が行われ、参加者は7〜8人グループに分かれて

ディスカッションをしました。

 

同世代の人たちと真剣に話し合うのも貴重な体験!

 

各グループには講師も参加して、質疑に答えてくれます。

 

グループディスカッションの内容は最後の発表します。

 

「自分らしさとは?」「多様な価値観を認め合うには?」など、

ふだんはなかなか話し合わないテーマでしたが、それぞれに思うことを出し合って、

議論が深められていました。

 

「こんなにスマホを見ないで、人と話す一日ってないかもね」。

参加していた人がもらしたひとことがとてもリアルでした。

 

 

少量なのに満ち足りる精進料理「お斎」

 

二日間ともに、ランチはお寺らしく精進料理でした。

創業150年の老舗「八尾治」さんによる、本願寺の「お斎(とき)」です。

 

みんなで並んで座っていただきました。もちろん食前食後は合掌です。

 

野菜と穀類のみのベジミールですが、ちゃんとお腹が満たされるのが不思議。

 

料理人自ら、お料理の解説。精進料理に関する質問にも答えてくれました。

 

肉や魚を使わないだけでなく、五葷(ごうん)とよばれる香味野菜を使わないなど、

本格的な精進料理を味わうのは初めての人も多く、目をキラキラさせていました。

 

浄土真宗の「食前の言葉」「食後の言葉」を唱和して合掌。

いつもより、ていねいに食べることに向き合えた気がします。

 

匂い袋や腕輪念珠づくりのワークショップ

 

ランチタイムのあとには、仏教ゆかりのワークショップも。

1日目は「匂い袋」、2日目には「腕輪念珠」づくりを行いました。

 

 

匂い袋に入れる香料は、白檀、丁子、桂皮、大茴香、龍脳、香り香の6種類。

自分好みにブレンドして、オリジナルの匂い袋をつくります。

少しずつ混ぜてみて「こんなかんじ?」とやってみるのですが、だんだん「あれ?

わからなくなってきちゃった」となることも。

 

そんなときは、自分の洋服の匂いを嗅いだりして、嗅覚をニュートラルに戻してから、

再度トライします!

 

ブレンドした香料を袋につめると、紐で結ばなければいけません。

この、紐の結び方がむずかしい!

先生が、何度でも辛抱強く教えてくれなかったら、こんがらがってしまうところでした。

 

 

2日目は、腕輪念珠づくりワークショップ。

色とりどりの玉を見ているだけで、テンションがあがります。

 

 

それぞれに、好みの色合わせで玉を選んで紐に通していきます。

先生方も全員参加(笑)。一緒に、腕輪念珠づくりを楽しみました。

 

 

色のトーン、配色、組み合わせ方。ひとりとして、まったく同じ念珠はありませんでした。

匂い袋、腕輪念珠ともに、スクール・ナーランダの記念として大切にしようと思います。

 

 

通常非公開の領域へ!「本願寺国宝ツアー」

 

西本願寺の境内は、開門時間であれば自由に参拝できます。しかし、非公開となっている書院は、

なかなか見ることができません。ご門主が賓客を迎える空間だった「白書院」、歴代ご門主が

寺務をされたという「黒書院」、現存する最古の能舞台「北能舞台」など。

 

書院だけで7つもの国宝と1つの重要文化財があるのだそう。それを少人数で、お坊さんによる

解説付きで見学できるなんて、めったにないチャンスです。

 

 

参拝者をもてなす対面所(鴻の間)の広さはなんと233畳。襖絵、欄間、天井画と、

どこに目を向けても美しいものに溢れていました。

 

 

襖絵、欄間、天井画と、どこに目を向けても美しいものに溢れていました。

 

6人の先生のお話、2つのワークショップ、精進料理に国宝ツアーまで。

ほんとうに盛りだくさんの2日間。頭と心のふだんは使っていない部分を

大いに刺激してもらいました!

 

講師のみなさんの本を読んでみたいな、とか。

島地保武さんの舞台を見てみたいな、とか。

minä perhonenのお店に行ってみよう、とか。

 

次につながる何かを受け取れたこと、ここで出会えた人たちとの”ご縁”が続いていくことも、

スクール・ナーランダのよきお土産だな、と思います。

これからも、開催地を変えながら、スクール・ナーランダは続いていくとのこと。

みなさんのお住いの近くで開催されるときには、ぜひ参加してみてください!

きっと、いつもの自分をちょっと変えるような

体験に出会えると思いますよ。

 

 

【開催情報】※開催は既に終了しています

スクール・ナーランダ vol.4 京都(開催情報)

日程:2019年2月9日(土)、10日(日)

時間:9:00〜17:00

開催場所:西本願寺、伝道院

定員:60名/日

対象:10〜20代

参加費:一般 1日3,000円、2日通し券5,000円(いずれも昼食付き)

     学生 1日2,000円、2日通し券3,000円(受付にて学生証を提示)

主 催:浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進室

企画・運営:(有)エピファニーワークス

お問合せ:浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進室

(〒600-8501 京都市下京区堀川 通花屋町下ル 浄土真宗本願寺派宗務所) goen@hongwanji.or.jp  Tel(075)371-5181(代)

URL:http://www.hongwanji.or.jp

 

Photo by Yoshikazu Inoue、Ayumi Inoue

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