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ミケーレ効果で若年層にも人気 メード・イン・イタリーにこだわる「リチャード ジノリ」

  • 2019.3.28
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イタリア発テーブルウエアブランドの「リチャード ジノリ(RICHARD GINORI以下、ジノリ)」は3月12日、皆川明による新作“フィオレンティア(FIORENTIA)”の発表会を開催した。ジノリは1735年創業の老舗メーカーで、幾度もの経営難を乗り越えてきたが2013年にグッチ(GUCCI)が買収。その後、ケリング(KERING)傘下に入り、自社ブランドのほかに「グッチ」のテーブルウエアも手掛けている。コスト削減のため生産拠点を海外に移すブランドが多い中、今でもフィレンツェの自社工場で生産しメイド・イン・イタリーを貫いている。イベントで来日したジョヴァンニ・ジュンケーディ(Giovanni Giunchedi)=ジノリ社長兼最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

WWD:「ジノリ」がケリングの傘下に入ったメリットは?

ジョヴァンニ・ジュンケーディ社長兼CEO(以下、ジュンケーディ):6年前にグッチに買収されなければ、今はもう存在していない。財務のような基本的な部分でもちろんメリットはあるが、ジノリが将来、組織として存続する確信が持てるようになった。グループが持つ組織によって法務、技術、デジタル、サービスといったあらゆる面でメリットがある。磁器業界は変化が少なく、ファッションのような大きな変革は起こり得ない。しかしビジネスの観点から、社会と共に変化するファッション業界を参考にするのは重要だ。消費者とのコミュニケーションや販路など参考にする面は多い。

WWD:現在「グッチ」のクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は「ジノリ」のクリエイティブ・ディレクターだったが、今も兼任しているか?

ジュンケーディ:「グッチ」のクリエイティブ・ディレクターに就任した時点で「ジノリ」のポジションを退いている。しかし、ミケーレは大きな置き土産を残してくれた。彼がデザインした“オリエンテ イタリアーノ”は、伝統を否定することなくモダンに昇華している。また、10色のカラーバリエーションがあるので、気分によって使い分けたり、カラーをミックスしたりして使用することができる革新的なシリーズだ。また、ミケーレの下で働いた若いデザイナーたちのおかげで「グッチ」との仕事はとてもスムーズだ。

WWD:現在何カ国で販売しているか?ブランドとしての規模はどれくらいか?

ジュンケーディ:30カ国以上で販売している。イタリア以外で現地法人があるのは日本とアメリカで、他の国はディストリビュータを通じて販売している。ブランドの規模は、「グッチ」や「ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などケリングの他のブランドに比べると小さい。

WWD:テーブルウエア市場における「ジノリ」のポジショニングは?

ジュンケーディ:最高級クラスだ。全て一つ一つフィレンツェの自社工場で生産しているし、複雑な技術が必要な商品を製作する技術もある。工場では200人が働いている。

WWD:「ジノリ」の世界戦略は?直営店は何店舗か?

ジュンケーディ:今まで市場ごとに異なっていたブランドイメージを統一する。コミュニケーションの強化を行い、ウェブサイトを通して製品やイメージを伝えていく。日本は「ジノリ」の販売を長期にわたって行ってきた国なので、われわれのグローバライゼーションに欠かせない鍵となる市場だ。直営店は現在イタリアに8店ある。世界各国の百貨店でコーナー展開をしているが、売り上げが好調のロンドンの百貨店ハロッズ(HARRODS)の売り場には7月から販売員を置く。モスクワではパートナーが「ジノリ」の単独店をオープンする予定だ。ゆくゆくは製品カテゴリーを増やし、ライフスタイルブランドとして全てのカテゴリーを網羅したい。

WWD:「ジノリ」の現アジアパシフィック法人ができたのはいつか?現在何店舗で販売しているか?

ジュンケーディ:アジアパシフィック法人が設立されたのは2010年で、それ以前は伊藤忠が日本法人を運営していた。百貨店などに直営のコーナーが15、それ以外に約100のコーナーがある。皆川明氏とのコラボレーションを筆頭に、今後もアジアパシフィックと密に連携を取っていきたい。

WWD:社内のデザイナーは何人いるか?皆川氏のほかにコラボするデザイナーは?年にどれくらい新作が登場するか?

ジュンケーディ:社内デザイナーは10人程度。皆川氏以外のコラボデザイナーは「ミラノサローネ(MILANO SALONE)2019」で発表する。新作はフルコレクションが3~4シリーズ登場し、新色や新型の追加もある。

WWD:ベストセラーは?市場によって販売するブランドは違うか?

ジュンケーディ:“オリエンテ イタリアーノ”がベストセラーだ。2018年には、ベースやキャンドル、ボックスなどのほか、アジア市場向けに茶碗や箸なども加わった。従来の顧客とは異なる若年層に人気が高い。日本市場では、“ベッキオジノリ”がベストセラーだ。皆川氏のコレクションも人気が高い。

WWD:皆川をデザイナーに起用した理由は?

ジュンケーディ:アジアパシフィック法人からの提案だ。皆川氏とはグッチに買収される以前からコラボなどを通して友好な関係を築いており、ぴったりだと思った。彼はクリエイティブな面だけでなく製造についても理解できるので、すばらしいコラボが実現できる。

WWD:「ジノリ」のブランド哲学は?何が「ジノリ」を他のブランドと違うものにしているか?

ジュンケーディ:「ジノリ」は歴史と革新が融合したユニークなDNAを持っており、掘れば何でも出てくる鉱山のようなブランドだ。他と違うのは、マニュファクチャーとして実験を繰り返し、消えゆく磁器の世界においていまだに全てメイド・イン・フィレンツェを通していることだ。

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