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ルーツと一緒に楽しむ、ティム・バートン最新作『ダンボ』。

  • 2019.3.27
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80年近く前に製作されたディズニーの名作アニメーション映画『ダンボ』を、ティム・バートンが映画化。バートンらしいテーマを盛り込んだ、大人も子どもも楽しめる作品に仕上がっている。その『ダンボ』の見どころと、併せて観返したいティム・バートン作品3本をご紹介。

サーカス団の元スター、ホルト(コリン・ファレル)とその子ども、ミリーとジョー。母を探すダンボをサポートする。

ティム・バートンと言えば、抜きん出たビジュアルセンスと、マイノリティに対する深い共感である。そんな彼が、大きな耳のせいでいじめられるサーカスの子象を描く名作アニメーション『ダンボ』(1941年)の実写化を手がけるなんて、これほどぴったりの組み合わせはない。ところが、そういうマイノリティやいじめといった要素はさておき、まず目が釘付けになるのはダンボのかわいらしさと健気さだ。アニメーション版の頬ずりしたくなるほどのかわいらしさ、離ればなれになった母を求める切なさ、一生懸命飛ぼうとする健気さ、それらを見事に再現しているのだ。ちゃんとリアルな子象としてのルックスを保ちながら、十二分にかわいいというのは驚きだった。

マイケル・キートン演じる興行師、ヴァンデバーが経営する巨大なテーマパーク「ドリームランド」。そのめくるめく世界観も作品の魅力のひとつ。

同じようなコンセプトで作られた『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)では新解釈を施し、“その後のアリス”を描いていたが、本作の大筋は基本、オリジナルのアニメション通り。大きな違いは動物にしゃべらせなかったところだろう。人気キャラクターのティモシーらしきネズミはネズミとして顔を出すだけで、アニメーション版では最も有名な幻想的シーン“ピンク・エレファント”も幻想はナシの表現だ。つまり、ダンボのみがファンタジー的存在であり、彼を支える人間キャラクターのほとんどは悲しみや喪失感を背負い、特異な力を持つ、生まれたばかりの子象に夢と希望を託すのだ。言わば、ダンボが彼らの救世主、スーパーヒーローになるのである。

いつものバートン流の皮肉やヒネリは少ないものの、本作の悪役が経営する巨大アミューズメントパークが、深ヨミすればディズニーランドに見えなくはない。バートン・ファンはニヤリとしそうだ。

ティム・バートンが手がけた『ダンボ』の日本版予告編。© 2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

『ダンボ』監督/ティム・バートン出演/コリン・ファレル、エヴァ・グリーン、マイケル・キートン、ダニー・デヴィートほか配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン3月29日(金)全国公開http://disney.jp/dumbo/© 2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

『ダンボ』ととともに観返したい、ティム・バートンの傑作3選。

1.『シザーハンズ』(1990年)

ハサミの手をした人造人間エドワードが辿る数奇な人生。孤独から解放され、その特異性によって人気者となり、その特異性によって今度は異端児となる。バートンが自らをエドワードに重ねて、異端児の哀しみと憤り、常人たちの非情さと身勝手さを描いたダークファンタジー。バートン作品を形成するモチーフのひとつフランケンシュタイン・テーマも網羅し、彼を語る上では欠かせない1本であり傑作。後に盟友となるジョニー・デップとのコンビもここから始まった。常人とは異なる能力をもつエドワードにダンボのDNAを見つけることが出来る。

エドワードの哀しみを体現した、若き日のジョニー・デップ(左)。右はエドワードに理解を示すキム役のウィノナ・ライダー。© Everett Collection/amanaimages

『シザーハンズ』監督・原案・製作/ティム・バートン出演/ジョニー・デップ、ウィノナ・ライダーほか原題/Edward Scissorhands

2.『ビッグ・フィッシュ』(2003年)

いつも楽しい冒険譚を聞かせてくれていた父。それがすべてホラ話だと知ったとき、息子は父から距離を置くようになる。そんな時、父が病に倒れた。実父を亡くしたことで本作の監督を引き受け、撮影が終わったころには第一子が生まれたというから、バートンにとっては何とも因縁めいた作品。父と息子の複雑な関係を、現実と幻想、ふたつの世界を絡ませせて描いている。父親のホラ話のなかには、奇妙な姿かたちをした人たちが集まったサーカスが登場し、その団長を務めるのは『ダンボ』でも団長を演じているダニー・デヴィートというのも面白い。

父エドワードの若かりし頃を演じるのはユアン・マグレガー。大男と旅に出たり、サーカス団に入ったりというエドワードの冒険譚を、観客は体験していく。© Everett Collection/amanaimages

『ビッグ・フィッシュ』監督/ティム・バートン出演/ユアン・マグレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップほか原題/Big Fish

3.『バットマン リターンズ』(1992年)

『バットマン』(1989年)で大ブレイクしたバートンが、その続編になる本作でもメガホンを取ったが、これがとんでもないスーパーヒーロー映画になってしまった。ヴィランのペンギンを心と外見の歪んだ奇人、キャットウーマンを心の歪んだ奇人として描くのはまだいいが、スーパーヒーローのバットマンまでそうしてしまったのだ。さらにスーパーヒーローたちは仮面とコスチュームを身に着けた時こそが“素顔”という解釈。スーパーヒーロー・ブームの現在においても異彩を放ちまくる、こちらも傑作。本作のペンギンはやはりデヴィート、バットマンのマイケル・キートンは『ダンボ』でバートン映画に復帰し悪役を演じている。

ともに『ダンボ』にも出演していダニー・デヴィートがペンギン(左)、マイケル・キートンがバットマン(右)を演じている。© Mary Evans/amanaimages

『バットマン リターンズ』監督・製作/ティム・バートン出演/マイケル・キートン、ミシェル・ファイファー、ダニー・デヴィート、クリストファー・ウォーケンほか原題/Batman Returns

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