話題作『天国でまた会おう』でフランスの名優が訴えたい悲劇的な現実

3月といえば別れの季節。それゆえに、さまざまなドラマが生まれるものですが、今回ご紹介するのは、2人の兵士が繰り広げる出会いと別れに胸が震える感動作。フランスから届いた注目の作品とは……。

ベストセラー小説の映画化『天国でまた会おう』!

【映画、ときどき私】 vol. 218

1918年、第一次世界大戦の休戦を目前にした西部戦線。上官の悪事に気がついたアルベールは生き埋めにされるが、年下の青年エドゥアールによって命を救われる。しかし、そのときに起きた爆撃が原因で、エドゥアールは顔に重傷を負ってしまうのだった。

その後、2人はパリに戻るものの、待っていたのは帰還兵には冷たい世間。生還を家族に伝えたくないと訴えるエドゥアールのために、アルベールは彼の戦死を偽装することに。さらにひとりの少女を加えて、3人で新たな生活を送る彼らだったが、一度は負けた人生を巻き返すため、国を相手にひと儲けする大胆な詐欺を企てる。そこに隠された本当の目的とは……。

『その女アレックス』で海外の名だたる賞や日本のブックランキングを席巻し、日本にもファンの多いフランスのミステリー作家ピエール・ルメートル。本作は、ルメートルの同名小説にして、フランス文学界でもっとも権威のあるゴンクール賞も受賞した人気作です。そこで今回は、映画化を手がけたこちらの方にお話を伺ってきました。それは……。

脚本・監督・出演を務めたアルベール・デュポンテル!

今回、自身と同じ名前でもあるアルベール役を演じたデュポンテルさん。フランスではベテラン俳優としてはもちろんのこと、監督としても高く評価されている存在です。今回は、急遽出演もすることになった完成までの裏側や演出面のこだわりなどについて語ってもらいました。

―原作ではもともとアルベールは若い男性として描かれていますが、年齢の設定を変更してまで演じたいと思った理由を教えてください。

デュポンテル

実は、僕が出演するのは予定外のことだったんだ。というのも、本当はほかの俳優が演じることになっていたんだけど、その人が撮影の2か月前に体力的な問題から急遽降板してしまったんだよ。

それで僕が代わりに出演することになったんだけれど、とはいえその俳優も原作よりは年齢は上だったんだ。なぜなら、エドゥアールとアルベールの間に年齢差を出すことによって、エドゥアールの強さを際立たせられると思ったから。僕にとっては、彼こそがヒーローなんだ。

―エドゥアールのどのようなところに魅力を感じましたか?

デュポンテル

彼は人間に対する高い意識を持っている人物であり、金と支配の世界に生きる父を受け入れることなく反抗し、早くから戦争は殺人でしかないということに気がついているんだ。急進的で非常に明晰であるという意味でも、僕にとっては理想のアーティストとも言えるよ。

―原作は大ベストセラーとなった作品ですが、映画化するうえでプレッシャーはありませんでしたか?

デュポンテル

それはまったくなかったかな。僕がこの本で惹かれたのは、ここに描かれている人物群像。彼らはいまの時代にも通じるところがある人物でもあるし、作品としてもヨーロッパでよく描かれている風刺画のようだと感じたんだ。

この作品の映画化はある種の夢だった

―では、原作を読まれてすぐに映画化したいと考えていらっしゃったのですか?

デュポンテル

最初は全然そんなことは思っていなかったよ。実は、僕とルメートル氏はエージェントが同じということもあり、小説を読んだのは出版される1年前。

そのときにすばらしいと思ったけれど、同時にこの作品を作るうえで必要とされる製作規模を考えると、とても自分には映画化できないだろうと感じたよ。だから、「この作品を映画化することはある種の夢なんだ」と思って忘れようとしていたくらいなんだ。

―そこからどのようにして映画化へと実現していったのでしょうか?

デュポンテル

その18か月後にプロデューサーから、この作品を映画化しようと話があり、スポンサーたちにプレゼンをして、興味を持ってもらうことができたおかげで、具体化していったんだ。

―今回、脚本を制作するにあたっては、著者のルメートル氏との共同執筆という形にされたようですが、どのようにして作り上げていったのかを教えてください。

デュポンテル

ルメートル氏からは「君の映画なんだから、好きにしていいよ」と言われていたこともあり、実は2回しか会っていないんだ。でも、小説と大幅に変える場合は、必ず彼に了解を得るようにしてはいたよ。

特にエドゥアールと父親とのラストは大きく変えているし、そのほかにも上官であるプラデルと直接対決をするシーンや映画の冒頭で殺される兵士に関するある秘密というのは、エモーショナルな面において必要だと思って変更することにしたんだ。ルメートル氏も映画であれば、理論上こういったシーンが必要なのはわかると理解してくれていたよ。

演出の原則はまず自分が楽しむこと

―劇中には戦争に対する風刺や緻密な詐欺事件などさまざまな要素が絶妙に組み込まれていましたが、演出するうえで意識していたことは?

デュポンテル

僕の演出の原則というのは、まず自分が楽しむこと。原作は想像の産物ともいえるすばらしい小説ではあるものの、僕の個人的な解釈を入れる余地もあったし、この作品はいまの時代を反映しているとも感じていたから、そういった視点は大事にしていたよ。

―今回はエドゥアールを演じたナウエル・ペレーズ・ビスカヤートも本当に素晴らしかったですが、キャスティングをした理由は?

デュポンテル

実は彼が注目を集めた『BPM ビート・パー・ミニット』を撮る前に行ったオーディションで出会って、そこで起用することに決めたんだけど、彼は体の動きや目の表情がいいし、人間としてもすごく成熟しているんだ。

あと、アルゼンチン人ということもあって、フランスでの僕を知らなかったこともあり、まったく緊張していなくて傲慢なくらいなのもよかったかな(笑)。そういう意味でも、エドゥアールにはぴったりだったと思うよ。

―では、オーディションでひと目惚れしたという感じだったんですね。

デュポンテル

彼のことは全然知らなかったから、まさに幸運の一撃という感じだったよ。でも、僕がひと目惚れするのは女性だけだけどね(笑)。

―そうなんですね(笑)。では、現場で監督として俳優の先輩としてアドバイスしたこともありましたか?

デュポンテル

彼はすごく熱心だし、準備やリハを自分できちんとしていたんだ。たとえば、今回は顔の負傷を隠すために、さまざまな仮面をつけなければいけなかったけれど、仮面が届くたびにそれをつけてどう動こうかと試行錯誤していたし、つぶれた声の出し方も声を出す装置を研究したりしながら、作り上げていったんだ。本当に真面目な俳優だと感じたよ。

悲劇的な図式はいまでも続いている

―物語の舞台は100年近く前のフランスではあるものの、国を問わず現代に通じる問題も描かれているので、最後にこの作品を通じて伝えたい思いをメッセージとしてお願いします。

デュポンテル

人間というのは、素の状態の人間同士ならわかりあえるのに、国家を率いるようなリーダーたちのようになるとお互いを理解し合えないという悲劇的な図式は昔だけでなく、現代でも続いていることだよね。

たとえば、第一次世界大戦が起こった究極的な要因というのは、社会的に低いところにいた人たちが富を手にする希望が出てきたことを上にいる人たちが望まなかったこと。つまり、富をシェアする精神の欠如ということであり、口ではネルソン・マンデラやガンジーが素晴らしいと称賛しておきながら、エゴイストな上層部の人間たちが幅を利かせているのが現実。それはいまも昔も変わらないところなんじゃないかと感じているよ。

映画でしか描けないエンタテインメント!

アートのような美しさに魅了されるだけでなく、そこで繰り広げられる親子の愛や友情に心を揺さぶられる本作。人間ドラマとサスペンスフルな展開は、何度でも“会いたくなる”傑作です。

輝きに満ちた予告編はこちら!

作品情報

『天国でまた会おう』
3月1日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ/木下グループ

© 2017 STADENN PROD. – MANCHESTER FILMS – GAUMONT – France 2 CINEMA ©Jérôme Prébois / ADCB Films

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