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子どもの学ぶ機会を奪ってるのは親!?「トイレ行っていい?」がNGのワケ【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方 第3回】

  • 2019.2.20
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「みなさんの時代の学校と今の学校は違う。自分たちの時代とはまったく違う国になっていると思ってください」と話すのは、「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」などがメディアに取り上げられ、その斬新な授業法がアクティブラーニングの先駆けといわれ、AI時代に負けない教育法といわれている沼田晶弘先生

「子どもにやる気があれば、勝手にがんばって子どもは伸びていきます。それが子どもの自信につながります」と沼田先生は話します。しかしそれを阻害する「大人の都合で貼られてしまうレッテル」についてお話を伺います。

【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方】第1回 子どものやる気を引き出す親、ブレーキをかける親
第2回 子どもの「考える力」を見逃さない方法

■子どもの前にある「すべての石」を拾うことはできない



沼田先生のお話をうかがっているうちに、小学生の娘がいる筆者が思ったことがあります。それは、親として子どもに対して説明し尽くさなければいけないことを曖昧に終わらせて、本来ならば見守らないといけないことを手とり、足とり教えてはいないかということ。

沼田先生はこう言葉を寄せます。
「僕からすると、今のお母さんとお父さんはがんばりすぎています。自分の子どもが進もうとする道があるとします。そこにいっぱいの石ころが落ちている。子どもがつまずいたり、転んだりすることを心配し、先回りして親御さんは石ころを拾い始める。しかも、そのすべてを。何もないまっさらな道にしようとしているように見えるときがあります」

さらにこう続けます。「僕の意見ですけど、石ころを拾いきることは不可能です。それよりは転んだときの受け身の仕方や、起き上がり方を教えてあげたほうがいい。転んだら、こういうリスクがあることを伝えることの方が重要。そこにあるものをないものにしてしまっては、なんの対処もできない人間になってしまうのではないでしょうか」

沼田先生は、昔に比べて、親の目が子どもに行き届いていないという指摘に対しても、「むしろ届きすぎている。しかも、そこは届かなくてもいいのではというところに届いている気がします」と話します。

■子どもを成長させるのは「失敗」から



たしかに思い当たるところがあります。筆者も「上着を1枚余分に着なさい」とか、「マフラーをしていきなさい」と、子どもに任せていいことも、ついつい先んじて注意をしてしまう。子どもの自主性に任せていいところまで口を出してしまっているのかもしれません。

沼田先生はこう続けます。「目が届きすぎるということは、子どもの学ぶ機会を奪っていることになりかねないんです。学ぶ機会がなければ、そのことはいつまでたって上達しないし、子どもの成長を妨げることにもなってしまう」

たとえば、箸が苦手な子どもにスプーンでばかり食べさせていたら、箸がうまくなるはずがないし、野菜が嫌いな子だからと、ずっと食卓にあげないでいたら、あたり前ですけど食べられなくなると沼田先生はいいます。

「たとえば、子どもに洗い物を頼んで、水浸しにされて、怒ったなんて経験がある方もいるのではないでしょうか? でも、任せると自身が決めたなら、怒るのは子どもに理不尽。

もし、水浸しにされたくなかったら、子どもに事前にしっかりと洗い方を教える。それができないなら、頼まない。その上で、頼んだなら、黙って途中で口を出したりしない。失敗したら怒るのではなく、何が原因だったか教えてあげればいい。そうでないと、子どもの成長はないと思います。」



そんな沼田先生ですが、「日々失敗の連続」だといいます。ある日の給食がポトフだったとき、沼田先生は、忙しくて子どもに配膳を任せてしまったところ、ポトフの鍋がどうなってしまったか…!?

ここで大人は「汁だけが大量に残った」と思いがち。しかし実際には、具だけが残ってしまったそうです。

「汁だけが大量に残っていたと考えるのは、大人の考え。逆なんです。なぜかというと、子どもたちにとって、ポトフはスープ。スープだと味噌汁ぐらいの具の量でいいと認識して、結果、具だけが残る。これは僕の失敗。説明すべきことを怠ってしまった。だから、子どもを責められないんです」


■「トイレに行ってもいいですか?」と聞いてはいけないワケ

「目が届きすぎるということは、子どもの学ぶ機会を奪っていることになりかねない」という考えは、授業においても常に頭に入れていることだと沼田先生は言います。

先生が教えすぎることって必ずしも正解ではない。もしかしたら、子どもの学ぶ機会を奪っている可能性がある。教えすぎると、本当はもっと伸ばせた子どもの能力を伸ばせないで終わってしまう可能性がある。だから、僕は常にそうならないように注意を払っています。ついつい口を出したくなる気持ちはわかるのですが、時には黙って見守ることも大切かなと」

また沼田先生が重んじるのは自主性。沼田先生のクラスでは「やっていい」とか「やっていいですか?」という言葉が、学期が進むにつれどんどん減っていくそうです。なぜかというと、沼田先生から「自分で考えろ」と言われることが生徒たちはわかっているから。

「授業中に『トイレに行ってもいいですか?』と聞かれたら、『尋ねるな、ダメといったらもれちゃうだろう』と。『トイレに行ってきます』でいいと言います。言い切れと教えています。

まずは自分で判断させる。そこで間違ったことをしたら教えてあげればいい。先回りして、それはダメとしてしまうのも子どもの学ぶ機会を奪っていること。もっと子どもの自主性を大切にしていいと僕は思っています」

■大人の一言が子どもを「いい子」にも「悪い子」にもする



また、子どもの能力を伸ばすために、“うちの子はこんな子”と決めつけるのも注意したいところと沼田先生。ついつい、「うちの子は得意なことがなくて」なんて人前で言ってしまったりすることないでしょうか?

沼田先生は「この子はこんな子」と決めつけないでと訴えます。


「ボクは教師として、いろんな子どもたちと出会ってきました。明るい子、おとなしい子、勉強が得意な子・苦手な子、スポーツが得な子・苦手な子。「いい子」といわれる子もいれば、「悪い子」といわれる子もいます。でも、本来子どもに良いも悪いもない。大人が大人の都合で、レッテルを貼っているにすぎません」
出典:『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(沼田晶弘(著)/あさ出版)



「子どもたちはみんな、まだまだ伸びている最中です。いろんな一面があるのに、大人の都合や常識に照らし合わせ、一部を取り上げて、『この子はこんな子』とするのは、その子なりの事情がまったく考慮されていません。決めつけると、『自分はそうなんだ』と子どもは思ってしまう。そこで成長をやめてしまうかもしれません。」

さらにこう続けます。
「大人の何気ないひと言が、その子を『いい子』にすることもあれば、『悪い子』にすることもあります。そのことを忘れないでいてください」

この言葉はちょっと子を持つ親としては胸にぐさりと刺さるのではないでしょうか。

そして沼田先生は最後にこうメッセージを贈ります。
「親が子どもに期待することは上限がない。少しでも上を目指してほしいと願う。そして、子どもをけっして見捨てることはありません。なので、悩みは尽きない。

たぶん、親御さんたちは子どものことでずっと悩み続けるんです(苦笑)。ですから、力まず、ほどよく距離をとって、その大きな愛をもって、子どもと寄り添ってもらえればと思います。」

日々、子どもたちと向き合うお父さん、お母さんにとって、沼田先生の言葉は、何かしらの気づきを与えてくれることでしょう。


■今回のお話を伺った沼田晶弘さんのご著書



『家でできる「自信が持てる子」の育て方』
(沼田晶弘/あさ出版 ¥1,400(税込み))
「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」など、ユニークな授業で各種メディアの話題を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭 沼田晶弘の最新刊。どうしたら子どもたちの中に自信が芽生えるのか? どうしたら何事にもやる気が起きるのか?そんな子どもの自主性や自立性、自己肯定感、やる気を引き出す方法のヒントになるメソッドが満載の一冊です。沼田晶弘さん
国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカへ。インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学の教職員などを務める。その後、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校に赴任。児童の自主性や自立性を引き出す、ユニークな授業が新聞やテレビに取り上げられ、大きな話題に。その授業はアクティブラーニングの先駆けと言われる。

(水上賢治)

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