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子どもの「考える力」を見逃さない方法【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方 第2回】

  • 2019.2.19
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子どもたちがやる気を引き出すためには、「仕掛けて、仕掛けて、さらに仕掛ける」と語るのは、現役の小学校の先生ながら、児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が新聞やTVでも取り上げられて話題となっている沼田晶弘先生

沼田先生は、「これからの子どもたちに求められる能力は、『考えを言葉にする力』」といいます。ではどうやって子どもたちに考え、学び、自分の意見が言えるようなきっかけを作れるのでしょうか。
【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方】第1回 子どものやる気を引き出す親、ブレーキをかける親

■学ぶ楽しさを知るために必要な3つのこと



沼田先生は、「子どもは勉強をしないといけないことはわかっている。いかに、楽しく学べるかが重要」と話します。そのための勉強を楽しくする方法とは? 親にもできるアプローチ法を教えてもらいました。


まずは、第1回「子どもの“やる気”を引き出す親、子どもの心を動かせない親」について触れます。


親としては、「やる気にさせることを見つけることこそ大変なんだ」と思うかもしれません。でも、意外と発想の転換をするだけで、変わることもあると沼田先生は言います。

「本来学ぶことは楽しいはず。知識が増え、考えが深まって、できないことができることに変わっていく。でもそれを教えてくれる大人がいない。にも拘らず『これをやりなさい』『あれもやりなさい』と言われ、子どもたちにとって勉強は『やらされるもの』になりがちです」。

そこで、沼田先生が学ぶ楽しさを知ってもらうために必要な3つのものを教えてもらいました。


一つめは、「課題」
「やってみよう」と提案するとき、必ず「これから何をやるのか」「どうやるのか」をわかりやすく説明します。

二つめは、「制限」
「課題」を出すとき、同時に何らかの「制限」をつけるのです。できることが限られると、子どもたちは許された範囲でできる最大限のことは何か、どうすればそれをやれるのかと、ワクワクしながら考えはじめるからです。

三つめは、「報酬」
「課題」を達成したあかつきに、子どもたちが手にすることのできる成果やご褒美について、最初にきちんと提示してあげます。出典:『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(沼田晶弘(著)/あさ出版)




沼田先生のクラスではこの「課題」「制限」「報酬」をうまく利用したテストがあります。先の回でも触れた「U2(ユーツー)」。これはUnder 2minutes、つまり制限時間が2分で行う「81ます計算」のことです。

この計算テストを行う際に、沼田先生は音楽をかけます。沼田先生とっては、音も子どもたちをやる気にさせる小道具のひとつで、「音」を流すことで子どもたちの気持ちをワクワクさせます。

「テスト開始のときも、まずファンファーレが鳴り響く。次にクイーンの『ウィ・ウィル・ロック・ユー』(We Will Rock You)がかかって、これが準備時間。そしてテストがはじまると、F1のテーマソングでおなじみのT-SQUAREの『TRUTH』がかかる。すると、みんなもう一生懸命、集中してテストに挑みます」

2分という「制限」があるので、みんなそれを切りたくなる。すると自然と練習にも熱が入るそうです。さらにこのテストで2分を切った子にはシールという「報酬」が与えられます。

「1日5枚練習してきたり、休み時間にU2をしたりする子もいる。あるお母さんから『家から帰ってきたら、一目散でU2をやっている』」と連絡が入ったことがありました(笑)。1枚に81問あるわけですから、5枚といえば400問を超える。それは早くなりますよね。記録があがれば誰もがうれしい。だから、みんな知らず知らずのうちに集中して打ち込む。そして、気づけば学力もあがっているというわけです」


■子どもにも意見はある。その瞬間を見逃さないためには



やる気スイッチは、子どもの中にもあるといいます。

沼田先生はこうヒントをくれます。
子どもはアイデアマン。僕がニュースを見て、北方領土のことをやっていたら、子どもたちに『ロシアは何で還してくれないのかな?』と聞いてみます。すると子どもたちも一生懸命考えて、そもそもロシアってどこにあるんだっけと、地図で探し始めたりして、自分なりの意見を言ってくれます。

子どもは子どもなりにしか話せないけど、彼らにはちゃんと意見がある。それを僕は受け流さないし、耳をきちんと傾けます。すると子どもたちがどんなところに興味をもって、乗ってくるのかがわかるときがあって、それがアイデアのタネになったりするんです」

沼田先生のメソッドとして「勝手に観光大使」というものがあります。これは、子どもたちが自分で担当する都道府県を決めて、その地域の魅力は特色をPRするというもの。

沼田先生いわく「担当する地域を自身で決めたということは、この地域について自分は勉強するぞと宣言したことに等しい」とのこと。まず、その地域を知らなければPRのしようがないですから、子どもたちは一生懸命調べることになります。

沼田先生はここで終わらせません。次にあらたな課題を与えます。それはパワーポイントでのプレゼン資料作り。すると生徒たちは、「誰よりもかっこいい資料を作りたい」と、みんな、自分で率先して学び、調べ、工夫をして資料作りに邁進(まいしん)していくそうです。

最後には、その地域の自治体の関係者にお願いし、実際に子どもたちはみごとにプレゼンをやり遂げます。


「調べる」という能力において、人はAIには太刀打ちできません。
では、子どもたちにこれから求められる能力は何かと考えたときに、「考察する力」そして「考えを言葉にする力」ではないかと、ボクは思っているからです。出典:『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(沼田晶弘(著)/あさ出版)



みなさんも、子どもと話していて自分でも想像していなかったことに子どもが興味を示したり、くいついてきたりする瞬間があるのではないでしょうか? 沼田先生はそういった子どもの気持ちや興味を絶対に見逃さないとのこと。親もこの瞬間を見逃さずに仕掛けることで、子どものやる気スイッチを入れられるようになるのかもしれません。


■親の時代の価値基準で子どもを判断してはいけない



沼田先生と話していて、筆者が1番に痛感させられたのは、親の意識改革こそが必要ではないかということです。

沼田先生は、親に向けて次のようにお話するそうです。「みなさんの時代の学校と今の学校は違う。教育法も違う。自分たちの時代とはまったく違う国になっていると思ってください」と。

「あるお母さんが自分はバスケット部だったから、子どもにもバスケ部に入ってほしいと言ってきたら、『いいですよ』と言います。ただ、今の部活動の在り方は昔とはまったく違う。旧態依然としているところもあれば、すごく進歩的なところもある。一律ではない。学校や指導者によっても大きくかわる。昔のイメージではなく、現状をきちんとみてくださいね」とアドバイスを贈るそう。

とかく年齢を重ねると「昔はよかった」と思いがちなところがあります。たとえば、ちまたでは、ゆとり世代は使えないとか、コミュニケーション能力が低いとか言われたりもしています。

しかし沼田先生は、今の若い子にもすごいところがいっぱいあると話します。

「今の学生に調べものを頼むと、ネットを駆使して必要な情報をパパっと調べてきます。若い企業家は、ものすごいスピードで仕事を処理していく。

ただ、若者に苦手なのはアポイントをとること。なぜなら、彼らにはもともとメールやスマホがあって、都合が合えば即決があたり前。でも、上の世代は、アポは2週間前ぐらいから先方に伝えてないと失礼にあたると思っています。だから若者が直前にアポをとったりすると、『若い奴らはなってない』と判断してしまう。でも、それは若い世代は知らないだけで、教えてあげれば済むことなんです」

沼田先生は、「自分たちの時代の価値基準で、子どもたちのことを判断しないで」と話します。「これからの子どもたちは、こういう価値観のある時代を生きていくんだということをお父さんもお母さんももっと意識したほうがいいと思います」

たしかに世の中の環境は大きく変化しているのに、昔からの固定観念にしばられて、これは絶対にいいこと、これは絶対に悪いことと思い込んでいることってけっこうあるのではないでしょうか? でも、時代も変われば価値も変わる。こう考えることで、子どもを見る目が変わってくるかもしれません。


■今回のお話を伺った沼田晶弘さんのご著書



『家でできる「自信が持てる子」の育て方』
(沼田晶弘/あさ出版 ¥1,400(税込み))
「ダンシング掃除」「勝手に観光大使」など、ユニークな授業で各種メディアの話題を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭 沼田晶弘の最新刊。どうしたら子どもたちの中に自信が芽生えるのか? どうしたら何事にもやる気が起きるのか?そんな子どもの自主性や自立性、自己肯定感、やる気を引き出す方法のヒントになるメソッドが満載の一冊です。沼田晶弘さん
国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカへ。インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学の教職員などを務める。その後、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校に赴任。児童の自主性や自立性を引き出す、ユニークな授業が新聞やテレビに取り上げられ、大きな話題に。その授業はアクティブラーニングの先駆けと言われる。

(水上賢治)

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