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キスをして抱きしめてきた彼の本心が知りたい【ひとみしょうのお悩み解決】

  • 2019.2.8
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“【お便り募集】文筆家ひとみしょうさんにあなたのお悩み解決してもらいませんか?”にお悩みを送ってくれた方の中から、ピックアップしてひとみしょうさんが解決していきます。

〜「かなやんやんさん 37歳」のお悩み〜

先月、14年ぶりに同級生の男性と二人きりで飲みに行きました。私も彼も既婚、子供もいます。

私が夫との関係で悩んでいて、世の中の旦那さん側の意見を聞いてみたくなり、私から飲まない?とメールしました。 彼とは幼稚園から高校まで一緒でしたが、あまりお互いに話した記憶もありませんでした。20代前半、偶然駅で再会し初めて連絡先を交換して、その後よく二人きりで映画や飲みに行っていた仲です。 私が酔い潰れたときはおんぶして歩いてくれたり、車のある友達を呼んで送ってくれたり。どんな状況でも私を決して襲わないし、私を女として見ていないんだなとずっと思っていました。だから私も彼を男というより何でも話せる友達だと思っていました。

でも、14年の時を経て再会した彼は、うっかり終電を逃してしまった私に朝まで付き合ってくれました。 ※飲んだ場所は、私が今住む町から電車で1時間かかり、彼は自宅から車で15分ほどの距離です。 泊まるところは自分で探すからと何度も断っていたけれど、夜中に一人で心配だよとついてきてくれました。 ビジネスホテルのシングルを一生懸命当たってくれたけれど、どこも当日満室。結局近くにあった漫画喫茶に入りました。 一人で利用しますと言った私の横で、二人用のブースが空いているか聞いている彼。 彼は私にちょっと漫画でも読んだら帰るからと言って同じブースに入りました。 けれど、漫画を探しに行く気配なく彼は先に寝てしまい、距離を最大限にとりながら私も寝ました。

始発に合わせてそろそろ起きようかと天井を仰いでいた私の手を突然彼が握ってきました。 私はどうしたらいいのかわからず、ひとまずトイレへと向かい気持ちを落ち着けブースに戻ってくると、うなだれている彼が座っていました。 私がどうしたの?と声をかけた瞬間、押し倒され抱きしめられ何度も何度もキスをされました。胸も触られました。太ももを触りはじめたので私がストップをかけました。それ以上はありませんでしたが、拒むことなく受け入れてしまった私は罪悪感で胸が締め付けられました。と同時に漫喫を出るギリギリまで抱きしめキスをしてくる彼のその姿、おでこを突き合わせて見せた切ない顔、ため息がとても愛おしく感じてしまったのです。 いつも饒舌な彼は、駅まで向かう間言葉少なでした。

電車に揺られて家族の元に帰る私は、自分の中に芽生えた恋心のような感情を抑えるのに必死でした。 数日後、あの日はごめん、隣にいたからつい性欲が抑えられなかったと彼がLINEをくれました。 男だから性欲が理性より勝ることが多々ある、男なのに二人で会った私が悪いとわかってはいるのに、毎日毎日あの日のことを思い出しては自分や彼の気持ちがわからなくなり切なくなります。

そして偶然とは怖いもので今月末に地元で同窓会があり、また彼と顔を合わせることになります。もう会うことがないと思っていましたので、どんな顔して会えばいいのかわかりません。 なのに顔を見られないでやり取りできるLINEでは、あの日を無かったことにしたように、たまにくだらないことで連絡を取り合っていたりして…。これがまた切なくて苦しくもあり嬉しいのです。 漫喫でのこと、あれは何だったのでしょうか。 このままフェードアウトで正解なはずなのに、もう一度だけ彼に触れたい私がいて戸惑います。彼の気持ちがわかりません。

〜ひとみしょうさんのお悩み解決コラム〜

マンガ喫茶でのことは恋の始まりで、彼の気持ちは「君のことが好き」です。テレビドラマの予告編的に言うと「さあ、来週ふたりは結ばれます!」みたいな感じです。

20代前半のこと

相談メールの<20代前半、偶然、駅で再会し……>というところに、あなたは<どんな状況でも私を決して襲わないし、私を女として見ていないんだなとずっと思っていました>と書いていますが、これが大きな大間違いですよ。

どんな状況でもあなたを決して襲わなかったというのは、彼があなたにカラダ目的だと言われるのがイヤだったからであって、あなたのことを女として見ていなかったわけではない! むしろ彼は、あなたのことを、女として見すぎていたから、自意識過剰になって、手も足も出せなかった、ということです。彼は100%あなたのことを女として見ていたし、あなたのことが好きだったし、きっかけさえ掴めれば告白したかったはずです。

だから、<二人きりで映画や飲みに行っていた>時、彼はすごく嬉しかったはずです。酔い潰れたあなたをおんぶした時、彼は「大好きな彼女の太ももに触れることができてラッキー!」とか「大好きな彼女の胸の感触を背中に感じられてラッキー!」と思ったことでしょう。そして、友達の車にあなたを乗せてドアを閉めたとき、彼は大きなため息をついたことでしょう。彼女はなぜ、いつも僕の気持ちをわかってくれないのか、と。

先月のこと

<先月、私が夫との関係で悩んでいて、世の中の旦那さん側の意見を聞いてみたくなり、私から飲まない?とメールしました>とありますが……ここ! ここがもう、男からすれば超ヤバいんですよね。

女性から飲みの誘いが来るとか、女性から相談があると言われると、男は「俺に気があるんだ」と思うんですよ。つまり彼は、あなたからの飲みの誘いを受けた瞬間から、「彼女は俺のことが好きなんだろな」と思っていたんです。

だから彼はきっと、あなたと飲みながら、あなたが<うっかり>終電を逃すことを願っていました。そして、ホントにあなたがうっかり終電を逃してしまった時、彼は心の中で大きくガッツポーズをとりました。

でも、運悪く、ホテルは満室で、マンガ喫茶へ……。

――というのが、男から見た、彼の心理です。

彼はあなたのことが好きだということです

つまり彼は<性欲が理性に勝った>から、あなたを押し倒して抱きしめたわけでもなければ、何度も何度もキスをしたわけではないんですね。マンガ喫茶で胸を触るのも、太ももを触るのも、性欲が勝ったからじゃないんですよね。

彼はあなたのことが好きだということです。

<このままフェードアウトで正解なはず>と思っているのは、理性的なあなただけですよ。理性的じゃないあなたは、きっと彼に恋してますよね。言うまでもなく、彼もあなたに恋しています。さて、困りましたね、不倫の幕開けです……みたいな感じです。

結果を教えてください

<漫喫でのこと、あれは何だったのでしょうか><彼の気持ちがわかりません>という2つの質問にはすでにお答えしたので、もうこれ以上、何も書かなくてもいいかなと思ったのですが、ここで終えてしまえば、他人の恋に火をつけたまま消さんのかい! 的なことになると思うので、もう少し書きます。

地元で同窓会があって、そこで彼と会ってしまえば、きっと同窓会のあとの二次会終わりにふたりでホテルに直行……というパターンが目に見えていますもんね。きっと彼はそうなることを見越して、事前にホテルを予約しているはず。

この原稿が掲載になるのは2019年の2月らしいので、同窓会はすでに終わっていますね。

結果を教えてください。

そして、不倫に悩むことがあれば、また相談メールを送ってください。優先的にお答えしたいと思います(編集部がどう判断するのかは僕の範疇を超えていますが、僕としては優先的にお答えしたいと思っています)。

今回は、シンプルな2つの質問でしたが、あなたの中では、壮大かつ切ない物語における、とりとめのない質問をした、みたいな感覚じゃないですか?

恋するって、そういう気持ちになることだから、よくわかります。そして、次回、あなたがどのような相談メールを送ってくるのかも、だいたいわかります。

どうして他人の恋の行方って、こうもよく見えるんでしょうね。品よく応援しています。

(ひとみしょう/作家)

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