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医師に「物申す」は難しい…“新米”薬剤師の葛藤描いたマンガ

  • 2019.2.3
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数少ない病院勤務の薬剤師に焦点を当てた作品『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』について、作者・荒井ママレさんにお話を聞きました。

縁の下の力持ちの誇りと葛藤。病院で働く薬剤師の日常とは?

医者にかかると薬剤師には大抵お世話になるものだが、「薬を出してくれる人」というイメージしかない人も多いだろう。本作は日本の薬剤師のなかでも2割弱という、病院勤務の薬剤師に焦点を当てている。

「薬剤師は『医師の出した処方箋に唯一疑義をかけられる存在』であり、治療に欠かせない薬の専門家であることに物語としての可能性を感じました。患者側は『病院にかかって薬を飲めば治る』と考えがちですが、薬が正しく服用されて初めて効果が出るので、薬剤師も直接ではなくても治療に大きく関わっているのだと思います。そしてそういう面が知られていない、あくまでも縁の下の力持ちである薬剤師の視点でしか描けない物語があるとも思っています」

しかしながらこの「疑義照会」はなかなか厄介らしく、主人公のような新米薬剤師がベテラン医師の判断に物申すことは歓迎されにくいという本音と建前があるようだ。ほかにも医師や、ときには患者からも下に見られたり、膨大な調剤を正確かつスピーディに行う必要があるため、患者とのコミュニケーションに多くの時間を割けなかったりなど、薬剤師の葛藤が立体的に描かれていく。

「医療に関する専門知識が自分にはまったくないので、不安は常についてまわるのですが、葵みどりは作者が勝手にかけてしまうブレーキを無視して、突っ走ってくれるようなキャラに育ってほしいですね」

医療原案を担当する富野浩充さんは、現役の病院薬剤師。さらには取材に基づいた数々のエピソードも、リアルな描写の一翼を担っている。

「薬剤師さんに取材をすると『自分たちの仕事は地味だから、マンガにならないのでは?』とよく言われるのですが、話を聞くとやはり面白く、みなさんプロフェッショナルで、医療を支えている誇りが感じられます。医療現場のさまざまなドラマもそうですが、お金のことや病院という職場の日常など、いろんなエピソードを描いていきたいですね」

荒井ママレ『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』 1 医療原案/富野浩充 総合病院の新米薬剤師・葵みどり(26歳)が奮闘する様を描いた、異色の医療ドラマ。タイトルは「縁の下の力持ち」を意味する「アンサングヒーロー」から。徳間書店 580円。©荒井ママレ/NSP 2018

あらい・ままれ マンガ家。小学館新人コミック大賞に入選してデビュー。著作に『おもいでだま』『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』。本作の第2巻は、4月20日に発売予定。

※『anan』2019年2月6日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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