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不健康ポップバンド“スカート”って何者?「不健康は脱したいんですけど…」

  • 2019.1.25
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不健康ポップバンド・スカートの澤部渡がインタビューに応じた
KADOKAWA

2018年に映画「恋は雨上がりのように」「高崎グラフィティ。」、連続ドラマ「忘却のサチコ」(テレビ東京系)など、メジャーデビュー1年でセンスある作品群のタイアップに次々と採用された“不健康ポップバンド”のスカート。

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インパクトある見た目をいい意味で裏切る美しい楽曲と切なくも優しい歌声で、スカートをソロプロジェクトとして率いる澤部渡に、1月25日(金)公開の映画「そらのレストラン」の主題歌・挿入歌としてリリースされる2ndシングル「君がいるなら」について話を聞いた。

――早速ですが、「スカート」という名前の由来を教えてください。

単純に短く簡潔なグループ名にしたかったんです。ザ・フー、キンクス、スパークスみたいに(笑)。では数ある単語の中でなぜスカートを選んだのかと言うと…後付けになってしまうんですが、僕は女性的なものへの憧れが強くて。

かといって自分が化粧したり女装したりで成就できる気持ちではないというのは分かっていたので、バンド名として名乗るくらいならいいんじゃないかと!

――後付けだけど、うそではない憧れが込められているんですね。

はい。スカートは男性に似合わないけど、女性はスカートもズボンも似合う。もちろん背景には社会的な問題もあると思うのですが、その面だけ見ると女性には選択肢が倍あっていいなぁとうらやましくて。

女性として育てられたことで見える世界って絶対にあると思うんですよ。大島弓子さんや萩尾望都さんの少女漫画を読むと、自分はその視点を持ち得なかった、すごくうらやましいなと思います。

――“不健康ポップバンド”というキャッチも印象的ですが、不健康であることにこだわりが?

全然! こだわりたくないですそんなこと!!(笑)

このキャッチはインディーズ時代、本当に暗い男4人がギュウっと集まって、アルバムを出すたびに宣伝文句まで自分で考えなきゃいけなかった時期に作ったんですが、全員どこかおかしくて、それを端的に表そうとしたんです。

まさかメジャーデビュー後にも使われるとは…。まぁ内臓脂肪が多くコレストロールが高いとか、自分が文字通り不健康だということもあるんですけど(笑)。

――スカートの特徴である、切なさ、悲しさ、寂しさ、甘さを感じるメロディーラインと歌詞の源はどこにあるんでしょうか。

自分でも分からないです。友達もいたし、学校生活も楽しかったんですけど、どこかで寂しいと思う瞬間があったんでしょうね。ささいなことですが、教室から見えていた給水塔がある日なくなっているとか、帰り道のちょっとした景色の違いに、よく圧倒的な悲しさや寂しさを覚えていました。

「あるもの」に注目するより「ないもの」に注目する目線があったのかもしれません。

――スタッフさんは「いい意味で自信がなく、自分を客観的に見られる」と澤部さんを評価されていましたが、少しずつ売れてきている今も「ないもの」に注目する部分は変わらないですか?

変わらないですね…数字を周りと見比べて「売れてきている」と思うことは簡単なんですが、実感としては「スカートって誰が聴いているんだ?」です。

もちろん、ライブ会場に集まってくれる方に対しては「ありがとうございます!」と思いますが、「…それにしても誰が聴いているんだ?」っていう気持ちは常にあります(笑)。

――その矛盾した疑問や不安はどこから?

本来、音楽には機能性があるので、ターゲットとシチュエーションを想定するアーティストさんが多いと思うのですが、スカートの場合はそれがすごく曖昧なんです。

自分が音楽という方法でやりたいことをやらせてもらっているので、「みんなで盛り上がりましょう」「明るく楽しい気持ちになってください」といった用途がない。そういう意味でも、スカートって誰が聴いているんだろう…。

少しずつ右肩上がり

――語弊があるかもしれませんが、 “ただの自己満足”が意外なほど共感を得ているという…。

そうなんですよ。本来は高円寺の小っちゃいライブハウスとかで、20~30人が膝を抱えて聴いているような楽曲なんです。ないものねだりですが、もっと格好良い理由や機能性のある曲を書けたら違う人生を歩めたとすら思います。

でも、自分も開けたポップミュージックが好きなので、その要素も自分に内包されているんだろうなとも思っていて、そしたら少しずつ、本当に少しずつですが今、右肩上がりで…ありがたいですね。

――そんなシャイな心持ちの楽曲たちが、メジャーデビュー1年強で既にこれだけのタイアップを得ている現状をどう分析されていますか?

…ね! 全然分からないです。健康な方が前提な社会の中で、僕らみたいな音楽はやりづらいはずなんですけど…逆説的に言うと、もしかしたら今は陰りのある曲が必要とされる世相なのかもしれません。

自分としては、矛盾とかコンプレックスを嗜むことが、大げさに言うとある種の報復にもなると思うので、自分の中に飼い込んだそれらをうまく楽しむのが生きやすい暮らし方の一つの形なんだろうなと思います。なりわいですね。業です(笑)。

――今回収録された映画「そらのレストラン」の楽曲について、もし今までと違う感触があれば教えてください。

この映画がなかったら、この曲、この歌詞、この演奏というのはできていなかったと思います。

挿入歌の「花束にかえて」は映画に引っ張られつつ自分の内面が出ているのですが、主題歌の「君がいるなら」は、自分でもこういう歌詞を書いていいんだ…と思ったくらい、新しい世界観の曲になりました。

――つまり、ある意味で先程の“自己満足”から脱した要素があると。

そうですね。もちろん、今まで自己満足として作っていた部分を重要な要素として映画に求めてくれたんだ…と、良いように解釈して書いたので、完全にスカートの世界観がなくなったわけではないですし、そこを求めてくれたこと自体がうれしかったです。

――澤部さんが曲を作る上で大切にしていることは何ですか?

やっぱり自分が「これはいい曲だ」と思うものを聴いてもらいたいし、自分が「う~ん」と思うものを出すのは誠実じゃないと思うので、なるべく「自分がこういう音楽を聴きたい」「こういう歌詞の世界を提示したい」というものを世の中に問うて行きたい。

自分も音楽好きなので、こういう音楽を聴きたい人がどこかにいるんじゃないかという気持ちがまだあるんです。自意識がとんでもないことになっていてお恥ずかしいんですけれど。

――では、生きる上で大切にしていることは?

難しいですね…。とにかく生きづらいってずっと思っているので。行くも地獄、戻るも地獄です(笑)。

年々その気持ちは増えていて、でもだからこそおいしいものを食べる、好きな音楽を聴く、好きな漫画を読むことに重点を置いて生きているかもしれません。

しんどいストレスを交わすため、細く長くというよりは貪欲に生きようと…何せ、不健康ポップバンドなので!(笑)(ザテレビジョン・取材・文=坂戸希和美)

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