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男性ダンサー5名が2019年に昇級。マルク・モローも!

  • 2019.1.24
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オペラ座で年に一度開催されるコール・ド・バレエの昇級コンクール。2018年11月9日(男性)と10日(女性)の2日にわたって行われた結果、10名が2019年1月1日から新しい階級へと上がった。ピラミッドの下から昇級者を写真とともに紹介して行こう。

男性カドリーユ→コリフェ(昇級者2名)

レオ・ドゥ・ビュスロル / Léo de Busserolles

2016年に入団したレオ。課題曲で不安定さが気になった前回のコンクールと打って変わり、今回は12名の参加カドリーユの中でひときわ精彩を放っていた。コリフェの2空席を1位で射止めたのももっともである。今回彼が選んだ自由曲はテクニック的に難しいと評判の『ラ・シルフォード』のバリエーション。つま先までエレガンスを感じさせるパフォーマンスだった。仕事熱心なダンサーに違いない。彼のように長身・細身でクラシック作品に秀でた若手は少ないので、これからどう配役されてゆくのかが興味深い。12月は『椿姫』のコール・ド・バレエだったが、コリフェに上がった今年のステージ上での活躍に期待しよう。

レオ・ドゥ・ビュスロル。ヌーヴェル・ヴァーグのモノクロ映画に少年役で登場しそうな雰囲気。photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

コンクールの自由曲に選んだのは『ラ・シルフィード』のジェームスのバリエーション。いつか彼がこの役を踊る日が来るのを祈ろう。photo:Sébatien Mathé/ Opéra national de Paris

アンドレア・サーリ / Andréa Sarri

彼も2016年の入団だが、学校公演でもすでに優秀な踊り手であることを証明した彼は、入団以来とりわけ配役に恵まれているダンサーといっていいだろう。2017年12月にはエクマンの『Play』で、先輩でプルミエ・ダンスールのフランソワ・アリュとデュオで舞台を共にしたほどだ。かつてのジェレミー・べランガールを彷彿させる猫科系の強さとしなやかさの持ち主。すでにオペラ座のコンテンポラリー作品には不可欠な存在となり、今シーズンの開幕作品であるオハッド・ナハリンの『デカダンス』でも活きのいいダンスを見せていた。もっともコンクールでは自由曲にマニュエル・ルグリ振付けの『ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ』を選び、ピュアなクラシックにおいても十分なテクニックの持ち主であると審査員を納得させた。今年は2月に公演のあるポンタス・リドバーグの『結婚』の創作に参加。イタリアのパレルモ出身の彼は“オペラ座のイタリア人ダンサーたち”というグループの一員として、ガラ公演も多く行っている。同世代のダンサーに比べて舞台経験が豊富というのも彼の強みだ。

アンドレア・サーリ。photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris

しっかりとしたテクニックを見せたコンクールより。photo:Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

男性コリフェ→スジェ(昇級者2名)

アクセル・マリアーノ / Axel Magliano

前回のコンクールでコリフェに上がり、今回はスジェに。2014年に入団というから、同期にはたとえば、前回のコンクールでプルミエ・ダンスールに上がったポール・マルクがいる。アクセルは ピナ・バウシュの『春の祭典』、クリスタル・パイトの『Seasons’Canon』といった作品で大勢の中のひとりだったのだが、最近は『リーズの結婚』でアラン役に配役され、ナイーヴすぎて超ぶきっちょで滑稽な若者役を好演。今シーズンに入ってからはジェローム・ロビンスの『ファンシー・フリー』では3名の水兵のひとりとしてコミカルな役にも挑戦し、さらに昨年末の『椿姫』ではガストン・リリユウ役を得ている。これはかつて、ジョジュア・オファルトやカール・パケットといったエトワールが踊っていた役だ。彼の世代のダンサーたちはクラシック作品を踊る機会にあまり恵まれていないので、ポルテは誰もが苦心している様子。経験を積めば優れたパートナーになれる可能性を秘めている彼は、この調子で次回はプルミエに上がってゆくのだろうか……と外野としては興味津々である。もっとも前回のコンクールでスジェに上がったフランチェスコ・ミュラとパブロ・レガザ、さらに経験豊かな先輩たちもいて、スジェのクラスはとても層が厚い。空席数にもよるが、来年のこのクラスのコンクールは熱い戦いとなることだろう。

アクセル・マリアーノphoto:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

『白鳥の湖』よりプリンスのスロー・バリエーションをコンクールの自由曲に選んだ。photo Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

アントワーヌ・キルシェール / Antoine Kirscher

2013年に入団し、2015年にコリフェに上がったアントワーヌ。オペラ座では『リーズの結婚』のアラン役、『真夏の夜の夢』のパック役などすでに観客にその名を記憶させる見応えのある仕事をしている。今季の開幕公演の『デカダンス』では、華奢な体のどこに貯めていたのかと驚かせるほどのエネルギーを見せたかと思えば、翌月のコンクールではロビンスの『Dances at the Gathering 』のブラウン・ボーイを情緒を込めて踊って、と幅の広いアーティストぶりを発揮。彼の次回のステージは2月の『ゲッケ/リンドベルグ/シェルカウイ』。リンドベルグの『婚礼』の配役に彼の名前が見られる。

アントワーヌ・キルシェール。昨夏、京都バレエ団特別公演にゲスト出演し、『パキータ』の第二幕のパ・ド・トロワを踊った。photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

コンクールより。photo:Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

男性スジェ→プルミエ・ダンスール(昇級者1名)

マルク・モロー / Marc Moreau

2004年に入団したマルク。NHKで放映された『スーパーバレエ・レッスン』でルグリに選ばれたダンサーのひとりだったので、この時代から日本でもおなじみである。2011年からスジェで、今日に至るまでドゥミ・ソリスト、ソリストに配役された作品は数知れず。クラシック作品もコンテンポラリー作品もこなす彼。バンジャマン・ミルピエにとても気に入られていて、オペラ座における彼の作品にはすべて出演した。前回のオペラ座来日公演の『ダフニスとクロエ』でもダフニス役とドルコン役だったので、覚えている人も多いだろう。年末の『椿姫』ではデ・グリユゥに配役され、劇中劇に現れる表現を誇張したデ・グリユゥと主人公マルグリットのヴィジョンに登場するマノンに翻弄されるデ・グリユゥを見事に演じ分けていた。2月はガルニエ宮でシェルカウイの『Faun』に配役されている。デ・グリユゥから一転し、ジュリエット・イレールを相手に獣のように踊る姿が楽しみだ。そして早くも発表された4月の『レオン、ライトフット/ファン・マーネン』ではレパートリー入りするソル・レオンとポール・ライトフットの『Slieght of Hand』を踊るようで、オペラ座のコンテンポラリー作品に彼は不可欠なダンサーなのだ。

マルク・モロー photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

2月に公演のある「ゲッケ/リドベルグ/シェルカウイ』で踊るシェルカウイの『Faun』より。photo:Julien Benhamou/ photo Opéra national de Paris

同公演では、ゲッケの新作『Dogs Sleep』の創作にも参加。リハーサルで振り付け家(右)を刺激している!photo:Ann Ray/ Opéra national de Paris

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