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美のリーダーに聞く、彼らの考えるサステナブル。

  • 2019.1.24
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美のリーダーに聞く、彼らの考えるサステナブル。
2019.01.24 08:00
これから先の未来のために、持続可能な環境、そして社会への取り組みを掲げるサステナブルなビューティーブランドが増えてきた昨今。『VOGUE JAPAN』2月号「今こそ、美容もサステナブルに。」では、国内外のビューティーブランドのこうした取り組みを特集した。


日本にも、サステナビリティへの強い意識で進化している美容ブランドが。熱い想いとこだわりを持ってプロダクトと向き合う3人の美容界のリーダーたちの話に、耳を傾けてみよう。

世界を動かすのは女! 美容から食まで網羅。 - AMRITARA代表 勝田小百合


「夫の影響でオーガニック生活を始めたのが26歳くらいの頃。それを続けていたら、普通に体質だと思っていた時々胃痛になるという症状があっという間に良くなって『オーガニックってすごいな』と(笑)。時を同じくしてオーガニックコスメを使い始めるようにもなったのですが、33歳のときに初期老化の兆しを感じたんです。ナチュラルな方法で若々しくいるにはどうすればいいのだろう、と思ったのがこの世界にハマった大きなきっかけです」とアムリターラ創業者の勝田小百合さん。


最初は“若々しい肌づくり”という見た目の美しさを保つことが目的だった勝田さんだが、あらゆる書物や文献に触れるうちに、「美容を実現するには環境から変えないとダメなんだ」という結論に行きつく。そして、私たちが毎日口に入れる“食”という大命題にも取り組み始めた。


「現在の日本の仕組みは“見た目がキレイなもの”を応援するという制度。国が農薬を使っていない食物を応援するという考え方はまったくできてないわけです。それならば、私たちが正当な価格で作物を評価して購入し、それを製品にするしか方法はありません。結果、販売価格にすると一般の製品よりも高くなってしまうのですが……。遺伝子組み換えとか、法の網の目をくぐって正しくない表示をしているもの、ミツバチ大量死の原因といわれるネオニコ農薬など体にも環境にも良くないものには一切加担したくない、というのが私の信条なんです」


勝田さんがオーガニックによる内外ケアを提唱するのは「それが一番健康美への近道だし、女性がいいと思うものが世の中を変える力があるから」だそう。「女性は大きな影響力を持つ一家の太陽的存在。女性が支持すれば、世界全体を変えるほどの波を起こせるんです」


〈右〉新発売のクリームは糖化に着目したもの。エイジソリューションクリーム 30g ¥9,600

日本古来の植物「ムラサキ」の根の紫根を使って描き出したピンク色。赤ちゃんリップに。ピュアトリートメントリップグロス〈ボタニカルピンク〉 10g ¥2,381/ともにアムリターラ(0120-980-092)
勝田小百合

アムリターラ代表。2008年にアムリターラを創業。真の美容と健康は環境問題と切り離すことができない、という理念のもと、誠実なものづくりを行う。

体や環境と向き合うことの大切さを日本中に伝授。 - ビーバイ・イー代表 杉谷惠美


「サステナブルという言葉がメジャーになる前から、私たちの会社は“モノを売ること”が目的ではなく、100年後の日本や未来の子どもたちに“安全と安心を残していきたい”という考えを軸にして活動を続けています。サステナブルであるということは、それらのミッションを成し遂げるための手段のひとつ、なんです」と杉谷惠美さん。


杉谷さんの前職はファッション誌のライター。仕事が楽しいあまりに働きすぎてしまい、自分の身体が悲鳴をあげているとは思いもよらず、突然倒れてしまったそう。検査の結果、重度の子宮内膜症が発覚した。


「かなり重度だったので入院や手術が必要で長期間身体を治すことに専念せざるを得ない状態に。基本は西洋医学に頼っていましたが、根本的な改善も必要だと思い、東洋医学的なアプローチも行うことに。そこで植物療法と出合い、実践するうちに身体も心も変わっていくことに気づいたんです。誰しも病気にかかる可能性とは隣り合わせなので、ならばこの経験を生かして身体の声を聞くことや食生活、ライフスタイルなどの大切さを生涯伝えていく仕事を選ぼうと思いました」


最初は小さなアロマテラピーのサロンからスタートし、今ではサステナブルを実践する企業の中でリーディングカンパニーになるほどに成長。「私が作っていきたいのは人生のライフステージに合ったコスメ。ネロリラ ボタニカも“40代の私たちが本当に使いたいスキンケア”を国産原料で作ろう、それが地方を元気にすることにつながればいいね、という考えのもとに誕生したものです。肌の再生、心の再生、土地と地域の再生の3つを掲げて活動した結果がサステナブルな取り組みと認識される─。軸にある信念を大切にしていきたいです」


〈左〉一部の製品は障害者の社会活動を支援する施設で作られている。浄化作用もあると注目のブルーミングシャワー 100ml ¥3,600  同 インテンシブ ビューティセラム 32ml ¥7,000/ともにネロリラボタニカ(ビーバイ・イー 0120-666-877)
杉谷惠美

ビーバイ・イー代表。2004年にビーバイ・イーを設立。06年にはオーガニックのあるライフスタイルの提案として「シンシア・ガーデン」をオープン。

植物の“香り”で地域活性と循環を。 - キャライノベイト代表取締役 清水 篤


「大量生産できないため農協に扱いを断られたり、オーガニックのため皮も見栄えが悪く捨てるしかない─。石川県能美市で作られている『国造ゆず』は、まさにそういった状態だったんです」と清水篤さん。能美市のゆずは高知や大分ほどの生産量が少なくブランド化がされていないため販売価格も安い。さらに農家の高齢化や後継者不足も問題になっていたそう。そこで、大学院大学の研究員から清水さんにSOSが届いた。


「当時、国造ゆずからは果汁が搾られたのち皮はすべて捨てられている状況でした。そこで皮を買い取り、皮から精油を抽出するという取り組みを始めました。当時はゆずの“実”のほうも他地域に比べるとブランド力がなかったので、皮から抽出した精油で化粧品を作り、それが注目されることで“実”のほうの価値も上げて、高く買い取ってもらえるようにする─。そんな循環を目指してスタートしました」


化粧品の売り上げの2%は地元への還元にあてている。「現在、ゆずを作っている農家の方々は平均80歳を超えていて、継ぎ手もいない状態。売り上げの一部をPRや継ぎ手の育成などに回すことで、短期ではなく長期的に現地をサポートする仕組みにしています」


「元々弊社は“香り”をつくっている会社なので、その中でできること、という範疇ではありますが、一番大切なのは“地域との密着度”だと思うんです。実際に能美市に何度も足を運び、生産者の方々の生の声を聞きながら商品作りを行いました。単なる“コンサルティング”ではなく、こちらもリスクを背負ったうえで、利益が出たなら生産者にきちんと還元することが重要です。このビジネスモデルでサポートできる地域はほかにもまだまだあるので、活動を広げていきたいと思っています」


〈右〉キャライノベイトが最初に手がけたWANOWAシリーズの「国造ゆず」。貴重なオーガニックゆずを使用。ミルクローション 150ml ¥2,500  ハンドクリーム 30g ¥2,000  マルチバーム 5g ¥1,600/すべてワノマ(キャライノベイト 03-5830-7288)
清水 篤

キャライノベイト代表取締役。大手フレグランスメーカーを経て、2008年に日本製フレグランスメーカー「キャライノベイト」を設立。2017年9月WANOWAを発売開始。

Photos: Eriko Inoue Text: Miho Maeda Editor: Yu Soga

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