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ココなら合法! ストリートミュージシャンが路上ライブできる場所2つ

  • 2015.3.11
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【ママからのご相談】

18歳で大学生の息子のママです。母親に何でも話してくれる年齢ではないので本人からではなくネット動画で確認したのですが、息子は9か月ほど前からストリートミュージシャンをやっており 、新宿駅や中野駅、渋谷駅付近などの路上でアコースティックギター1本で自作の曲を歌っています。親バカですが声が良く、ライブはいつもかなりの数の人達が聴いてくださっているようです。

ところが最近、夜遅く帰ってきた息子の表情が冴えないので思い切って聞いてみたら、「風当たりが強くなってきた」と言うのです。素人考えでも無許可の路上ライブが法に抵触しそうなことはわかりますが、自分の感性で快く思わないからといって若者のささやかな夢まで攻撃するのはどうかと思います。路上ライブを合法的に堂々とやれる場所があるかどうかぜひおしえてください。

●A. 東京の井の頭公園か千葉の柏駅周辺なら登録すれば堂々と演奏できます。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

路上ライブ、いいですね。私もストリートミュージシャンたちの音楽を聴くのが大好きで、心に響くような歌声に出遭ったときには本当に幸せな気分になります。

これまでに何人かの有名になったシンガーソングライターたちがストリートで歌っていた時代に出遭い、話をしてきましたが、最近では新宿駅の東南口で出遭った女性シンガーで、“路上から武道館へ”という夢に向かって歌いつづけ、その夢を実現させた人が印象に残っています。

ご相談者さまがおっしゃるように、許可を得ないストリート・ライブは、道路交通法をふまえた各都道府県ごとの道路交通法規則に抵触する場合がほとんどであるため、違法行為と言えます。

ただし憲法が定めた“表現の自由”がありますので、違法だからといって全部が全部警察官から演奏の中止や撤収を強制されるわけではありませんが、息子さんのように、行政そのものからのプレッシャーではなく路上ライブを快く思わない一般の通行人からの“通報”が以前より多くなってきたと感じているアーティストは、“不寛容”が増殖する昨今は確かに多いかもしれません。

ここでは、私が知っている2つの“自治体公認で路上ライブができる場所”として、東京都の武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭公園と千葉県柏市の柏駅周辺を紹介させていただきますが、究極的にはどんなにお巡りさんに怒られても、認可の下りない路上で歌いつづける強い思いが大切ですので、そういった精神面の問題については都内でメンタルクリニックを開業する精神科医師にお話を伺ってあります。

●路上ライブを合法的にやれる場所2つ

●(1)井の頭公園アートマーケッツ

若者が“住みたい街”として人気の高い吉祥寺駅(JR中央線・京王井の頭線)からも近い東京都武蔵野市と三鷹市にまたがる都立井の頭公園では、公園を核とした賑わいを創出して周辺地域にも波及させ、公園から新たな文化を発信していくことを目的として、“井の頭公園アートマーケッツ”というストリートパフォーマンスや手作り作品の出展を登録制で実施する事業を2007年1月から開催しています。

アートマーケッツでは登録者のことを“アートキャスト”と呼び、アートキャストたるストリートミュージシャンたちは、公園管理者である“東京都”、事業主催者である“井の頭恩賜公園100年実行委員会”とともにアートマーケッツ事業の協働運営主体者となります。

アートマーケッツで歌いたい(出展したい)希望者は、毎年12月上旬に公表される次年度の募集概要に基づいて応募しますが、ご相談者さまの息子さんの場合満16歳以上で最少年齢基準は満たしているものの20歳未満でもあるため、親権者の同意が必要となります。応募結果は翌年2月に届きますが、審査に通った場合は12,000円の年間登録料を支払って登録を完了します。

全国でもあまり前例のない画期的な試みであるため、1日の活動定数よりも登録者数が大きく上回ってしまっているとか、募集期間が終了したら次に応募できるチャンスが1年近く待たなければ来ないとか、いろいろな問題点はあります。しかし、合法的に堂々と屋外ライブをやりたいというストリートミュージシャンの希望に応えるひとつの試みではあり、息子さんに、「こういうのがあるよ」と情報だけでも伝えることには、意味があろうかと思います。

●(2)柏駅

次にご紹介するのは、多くのストリートミュージシャンたちを輩出してきた千葉県の柏市が、柏の街のイメージアップにも貢献してきたアーティストたちが一部の配慮の足りないパフォーマーのせいで世の中から排除されてしまうことのないように、いつまでもストリートに歌声が聞こえる柏の駅前であり続けるためにという理念に基づいて作られたストリートミュージシャン認定制度“柏ルール”です。

【柏ルールの概要】

・(a)URLからのダウンロードも可能な“認定申請書”の全項目に記入

・(b)メンバー全員の現住所が明記された身分証明書のコピーを添付

・(c)かしわインフォメーションセンターで手数料180円とともに(a)と(b)を提出

・(d)約3週間程度で、柏駅前イメージアップ推進協議会から認定書が郵送で届く

・(e)アンプやドラムスは使用しない。活動時間を守る。CDを含め“販売行為”をしない

・(f)認定を受けた者がルールを守ってする限り、路上ライブ活動を妨げない

だいたい、このような感じです。

井の頭公園アートマーケッツのように募集期間が終了したら1年近く待たなければならないといったこともなく、登録手数料も僅かであり、活動定数枠もなければ土日祝日以外の演奏活動もOKということで、場数を踏みたい若いストリートミュージシャンにとっては大変ありがたい、おススメの制度であると言えます。

なお、柏市の制度に興味を持ち同様のシステムを作っている自治体が最近はあるという話もちらほら耳にしますので、ご相談者さまも息子さんに話して、地元の自治体にそういった趣旨の制度があるかどうか調べてみることを奨められたらよろしいかと思います。

●最後は“歌いつづける情熱”。制度がなくても歌えるかが全ての鍵を握っています

『若いストリートシンガーのために2つの制度を紹介しましたが、井の頭公園の方は演奏を開始できるようになるまでの期間が長すぎると言う人もいるでしょうし、柏市の方も自分の住んでいる場所からは遠すぎると言う人もいるでしょう。そうです。最後は用意された制度があるかどうかではなく、ご相談者さまの息子さん自身の中に、少々のことがあろうと“歌いつづける情熱”があるかどうかの問題なのです』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医師)

冒頭でちょっとだけふれた“路上から武道館へ”の夢を実現させた女性シンガーソングライターと私が出遭ったのは、2012年1月14日の夜で、雪が降りはじめた東京・新宿駅東南口の路上でした。

当時まだ世の中は、東日本大震災の影響もあって夜の繁華街の人通りもそれほどではなかったのですが、彼女の歌声にふと立ち止まり、そのまま聴き入ってしまう人は私だけでなく、寒い雪の中にもかかわらずかなりの数にのぼっていました。彼女の歌声は透き通っていて、普通の20代女性の日常の感性をそのまま表現した内容の詞を、とても大切にしながら歌っているなと感じたものです。

キーボードの弾き語りを終えてCDの手売りをはじめたとき、私は少しお話を聴いてみたくなって行列の最後に並びました。“路上から武道館”を目指していること。私が卒業した大学の後輩だが一般企業に就職するのでなく大好きな歌で生きていきたいこと。“名前フェチ”で、ステキな名前は絶対忘れないこと(私の筆名や子どもたちの名前を、「とってもステキ」と言って、買ったCDにサインして書いてくださいました)。などなど、いろいろとお話しさせていただきました。

彼女によると、「路上ライブの許可は、基本的にはまず、取れない」そうです。それはそうでしょう。交通への影響や通行人への迷惑といったことを考えれば、行政側には行政側の言い分があることは納得できます。だから通行人の通報で警察官が飛んで来て、「はい。ここまでだよ」とストップさせられてしまうことは、日常茶飯事だということでした。

『問題は、そこで諦めてしまうか。それでも諦めきれずに次の場所に行ってまた歌いはじめるか。ということなのです。諦めきれずに歌いつづける人は、世間一般からはよく“変わり者”と呼ばれます。変わり者と呼ばれたっていいではありませんか。若い時期は二度と来ませんし、人生も一度しかありません。声は加齢でおとろえます。

用意された制度もなく、お巡りさんからたびたび怒られて、それでも歌いたいか。歌いつづけたいか。全てはそこにかかっているのです。息子さんのことを、「迷惑な路上シンガーがいますよ」と通報する人たちは、おそらく“変わり者”と呼ばれることを何よりも怖れるようなタイプの人たちです。そして今、そういうタイプの人が増えています。息子さんが50歳・60歳になったとき、「あのとき諦めないでよかった」と思えるようになるためには、今、“変わり者”と呼ばれることを怖れない勇気を持つことができるかどうか。その点にかかっているのです』(前出・精神科医師)

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「路上ライブを合法的に堂々とやれる場所があるのか」というご相談でしたので2つの具体例を挙げてご回答いたしましたが、いちばん大切なものはご相談者さまの息子さんが“歌うことで生きていきたいかどうか”という点であることを申し上げて、しめくくりたいと思います。息子さんのご活躍を、陰ながら応援しております。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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