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國分功一郎が選書。自分と向き合いたいあなたへ贈る3冊。【読書家に聞く、悩み別本のカルテ】

  • 2019.1.7
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國分功一郎が選書。自分と向き合いたいあなたへ贈る3冊。【読書家に聞く、悩み別本のカルテ】
2018.12.26 10:00
悩みを解決するには、深く考えなければならない。そのためには、勉強と読書が必要だ、と國分功一郎さん。自分自身と上手に向き合えないことにまつわる3つの悩みそれぞれに、オススメする本のカルテを出していただきました。

行き当たりばったりの人生を変えるために。

Q. いつも行き当たりばったりの人生。どうしたら、ちゃんと自己実現できるようになるのでしょうか。

A. まず「自己実現」のように抽象的なことばを使わないで、より深く考える習慣をつけましょう。自分は何を悩んでいるのか、どうしたいのかを具体的にするためには、ことばに敏感にならなければ。それを千葉雅也は「言語偏重の人になる」と表現しています。深く勉強するとは、言語を重んじてことば遊びに長けた人になることだというのです。この本を読めば、一つ一つのことばを丁寧に選んで適切に使えるようになるとはどういうことか学べるでしょう。実はそれが、ものを考えたり、自分の悩みと向き合うときにいちばん大事なことなのです。

会話上手になるためのコツとは?

Q. 胸を張ってこれが得意ですと言えることがなく、本当の意味で会話をできる自信がないのです。空っぽな私が会話上手になるにはどうしたらいいでしょうか。

A. 自分は人に話すべきことを持っていないと感じている人は、僕も含め少なくないでしょう。でも、「単に黙っているのが不安だから喋るだけというときほど、うまく喋るのが難しいことはない」と言うのは17世紀フランスの文筆家ラ・ロシュフコー。この本に集められた教訓的なフレーズは、考えるきっかけをたくさんくれます。相手の話を聞いて質問すれば、自然と会話は成り立ちます。自分の考えばかり主張せず、相手の発言にきちんと返事をせよ、とラ・ロシュフコーも言っています。まずは聞き上手、質問上手になってみては?

熱い気持ちやモチベーションを持続させたい方へ。

Q. 熱しやすく冷めやすい性格で、やりたいことを見つけてもパッションが長続きしません。どうしたら気持ちやモチベーションを持続させられるでしょうか。

A. この本を読めば、熱中するとはどういうことか、自分が好きなことは何かをもう一度考え直し、もう一度それと向き合うきっかけになるはずです。というのも、僕自身が自分を悩ませる退屈の苦しさについて考え、新しい認識を得るまでを振り返って書いたものなので。あなたのように「なんとなく退屈だけれどもどうしたら熱中できるのか」といった、もやもやした悩みや苦しさを抱えた方々に向けられているのです。『勉強の哲学』の千葉雅也くんも僕も、そういう気持ちで書いたところがあるので、手前味噌ながらぜひご一読をお勧めしたいですね。

國分功一郎 さん


東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。主な研究対象は17世紀哲学とフランス現代思想。『中動態の世界─意志と責任の考古学』(医学書院)、『哲学の先生と人生の話をしよう』(朝日新聞出版)、『民主主義を直感するために』(晶文社)など著書多数。

Text: Yoshiko Yamamoto Cutout Photo: Daigo Nagao Editor: Mihoko Iida, Airi Nakano, Anna Togashi

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