1. トップ
  2. 名脇役はあのカクテル。新年は、銀幕スターを気取って乾杯しよう!

名脇役はあのカクテル。新年は、銀幕スターを気取って乾杯しよう!

  • 2018.12.27
  • 1293 views


名脇役はあのカクテル。新年は、銀幕スターを気取って乾杯しよう!
2018.12.27 12:00
名作と呼ばれる映画やドラマには、いつもストーリーを象徴するカクテルの存在があった。『セックス・アンド・ザ・シティ』のコスモポリタンから『ティファニーで朝食を』のホワイトエンジェルまで、スターたちが愛した一杯で、新しい年の幕開けをお祝いしよう。


ダンディーな名スパイ、ジェームス・ボンドがひと息つくときの相棒といえば、辛めのマティーニ。あるいは、『カサブランカ』のリックとイルザを結びつけたのは、フレンチ75という名のカクテルだったし、失恋に嘆くキャリー・ブラッドショーの傍らには、いつもガールフレンドたちとコスモポリタンがあった。


そう、カクテルはいつだって、歴史に残る映画やドラマの登場人物たちの心情や今後を暗示する、重要な名脇役だ。新しい年の幕が開けようとする今、私たちが愛してやまないあの作品のアイコニックな一杯をプレイバック。映画のような運命に導いてくれるかもしれない、あなただけの一杯を見つけよう。

『セックス・アンド・ザ・シティ』と「コスモポリタン」。


キャリー、ミランダ、サマンサ、シャーロットの4人といえば、薔薇色のコスモポリタン。ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』では、6シーズンを通して、物語の重要な局面に必ずといっていいほど登場していたカクテルだ。フレッシュライム、クランベリージュース、コアントロー、ウォッカシトロンが織り成す甘酸っぱいテイストは、ヒロインたちの彩り豊かな人生を象徴しているかのよう。キャリーたち4人の登場人物はもちろん、「セックス・アンド・ザ・シティ」の舞台となったニューヨークに思いを馳せながら、家族や友人、そして恋人と一緒にグラスを傾けよう。

『007』と「マティーニ」。


スクリーンに登場した幾多のカクテルの中でも、おそらくもっとも有名な1杯は『007』シリーズ(1965〜2015年)の主人公、ジェームス・ボンドが愛するマルティーニだろう。「ステアではなく、シェイクで」という有名な台詞が初めて映画に登場したのは、ショーン・コネリーがボンドを演じた『007 ゴールドフィンガー』(1964年)だった。原作者であるイアン・フレミングは、シリーズ第1作の『カジノロワイヤル』(1953年)で、ボンド流の正しいマティーニの楽しみ方を紹介している。


「ゴードンジンを3、ウォッカを1、キナリレーを2分の1」をよく冷えるまでシェイクし、「大きな薄いレモンピールを加えて」マティーニグラスでサーブする。


このカクテルは、小説の中でボンドが追い求めた女性の名前にちなみ、「ヴェスパーマティーニ」と名付けられた。このように、マティーニとボンドの間には、揺るぎない絆があるのだ。シリーズを通じてマティーニをこよなく愛するボンドだが、2006年の『007 カジノ・ロワイヤル』では、ファン心をくすぐる一風変わった反応を見せている。ダニエル・クレイグが扮するボンドは、マティーニをシェイクするかステアするかを聞かれた際に、「そんなどうでもいいことを気にするような男に見えるのか?」と返答。こんなふうに、半世紀以上も愛され続けてきたキャラクターを見事にアップデートしていく手腕も、シリーズの人気が衰えない秘密なのかもしれない。

『ビッグ・リボウスキ』と「ホワイトロシアン」。


コーエン兄弟が手掛けたカルト的人気を誇るブラックコメディー、『ビッグ・リボウスキ』(1998年)では、主役のジェフリー・リボウスキ(通称、ザ・デュード)が、とにかくホワイトロシアンを飲みまくる。氷、ウォッカ、コーヒーリキュールと共に欠かせない材料の一つが、ミルク。ストーリーの最初の登場シーンから幾度となく、ホワイトロシアンを作るためにミルクを購入するジェフリーの姿が描写されている。

『お熱いのがお好き』と「マンハッタン」。


アメリカの禁酒時代を舞台とした、マリリン・モンロー主演の名作モノクロ映画『お熱いのがお好き』(1959年)。元祖ロマンチックコメディーとも評される本作の鍵となるシーンには、必ずといっていいほどカクテルのマンハッタンが登場していた。


物語は、ジャズデュオを組むジョーとジェリーが経営する「Speak Easy(秘密酒場の意)」が摘発を受け、ギャング抗争に巻き込まれてしまうところから始まる。身の危険を感じた2人は女性のふりをして逃亡するのだが、マイアミに向かう汽車の中で、マリリン演じるブロンド美女のシンガー、シュガー・ケインと出会い、ともに彼女に恋してしまう。そして、二人の男を夢中にさせる愛らしいシュガーが得意とするのが、カクテルがマンハッタン。シュガーがお湯のボトルにウィスキー、スイートベルモットとビターを混ぜるお茶目なシーンは、世の男性だけでなく、女性をも魅了した。

『マッドメン』と「オールドファッションド」。


60年代ニューヨークの広告業界の全盛期を描いたテレビシリーズ『マッドメン』(2007年〜2015年)は、その時代背景から、アルコールそのものが重要なテーマの一つとも言える。だから、劇中には数々のドリンクが登場するが、中でも視聴者をクギ付けにしたカクテルが、オールドファッションドだ。


「オールドファッションドを1杯」と言い放ったのは、すらりとしてミステリアスなハンサム広告マン、ドン・ドレイパー。このセリフをきっかけに、バーボン、デメララシロップとビターズを混ぜた「流行遅れ」と呼ばれた一杯は、新たな人気を獲得したのだった。

『カサブランカ』と「フレンチ75」。


不朽の名作『カサブランカ』(1942年)といえば、あのセリフ。「君の瞳にカンパイ」を合図に、リックとイルザが見つめ合いながら祝杯をあげるシーンは、誰もが一度は観たことがあるのではないだろうか。そんなアイコニックな瞬間の名脇役を務めたのが、フレンチ75と呼ばれるカクテルだ。その名の由来は、フランス軍が現在も使用する野砲モデル、M1897 75mm(通称、フレンチ75)。一説によると、第1次世界大戦中に、わずかに残っていたロンドンのドライジンとシャンパンを使って兵士たちが作ったのが始まりだとか。

『ティファニーで朝食を』と「ホワイトエンジェル」。

オードリー・ヘップバーンが演じたホリー・ゴライドリーのレディなファッションと小悪魔的なアティチュードは、女の子の永遠の憧れ。かなりのカクテル好きでもあるホリーは、シャンパンカクテルやマンハッタン、強めのミシシッピパンチだって、何でもいける口だ。そんな彼女がもっとも愛したのが、ホワイトエンジェル。


「ウォッカを2分の1、ジンを2分の1、ベルモットは抜いてちょうだい」とホリーがオーダーしたように、いつもとは少し違った自分らしいマティーニを楽しんでみるのも一興だ。

『華麗なるギャッツビー』と「ミントジュレップ」「ジンリッキー」。


F・スコット・フィッツジェラルドによる1925年の小説と、レオナルド・ディカプリオが主役を演じた2013年の映画に欠かせないのが、こちらのカクテル。ニューヨークで夫のトムとジェイ・ギャッツビーの2人と言い争いながら、デイジー・ブキャナンがちびちびと口にしていたドリンクが、ミントジュレップだ。バーボン、水、クラッシュした氷に、フレッシュなミントを加えた爽快な1杯。


実は、デイジーとギャッツビーの恋のキューピッドとなったのもカクテルだった。2人との口論の末に、デイジーは「何か冷たい飲み物を用意してちょうだい」と言ってトムを部屋から追い出すのだが、トムがスパークリングウォーターとライム果汁、ジンをミックスしたジンリッキーを作っている間に、デイジーはギャッツビーに愛を囁くのだった。もっとも、トムにとっては不運のシンボルかもしれないけれど。

『北北西に進路を取れ』と「ザ・ギブソン」。


映画史に残るアルフレッド・ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』(1959年)に登場するカクテルが、ザ・ギブソン。ケーリー・グラント演じる広告会社重役が、列車の食堂車でエヴァ・マリー・セイント扮する運命の女性と出会った瞬間に飲んでいたのが、このカクテル。


ザ・ギブソンは50年代に人気を誇ったカクテルで、第23回アカデミー賞作品賞を受賞した映画『イヴの総て』(1950年)でも、ベティ・デイヴィスのお気に入りのカクテルとして登場している。

『三つ数えろ』と「スコッチミスト」。


うっとりするような美しさのローレン・バコールとハンフリー・ボガートが、ともに銀幕を飾ったサスペンス映画『三つ数えろ』(1946年)。劇中、この美男美女の駆け引きをバーでそっと見守るのが、スコッチミストだ。官能的なバコールがボガートを誘惑するために注文したこのカクテルは、本作がきっかけで一躍脚光を浴びることとなった。


余談だが、ミストという呼び名は、ショートタンブラーの中のクラッシュされた氷に由来しているとか。

『ラスベガスをやっつけろ』と「シンガポールスリング」。


1998年のロードムービー『ラスベガスをやっつけろ』で、映画のサイケデリックな雰囲気づくりに一役買っているのが、カクテルの存在だ。その重要な役割はオープニングの回想シーンで、ジョニー・デップ演じるアンチヒーロー、ラウル・デュークが明らかにしている。


「ビバリーヒルズホテルのポロラウンジの中庭にいたんだよ。メスカルを片手に、やっぱりシンガポールスリングを飲んでいたな」


ジン、チェリーブランデー、ベネディクティンをミックスしたアルコール度数高めのカクテルは、この映画のクレイジーさを象徴するようなドリンクだ。また、テキーラと同じ原材料で作られるメキシコのリキュール、メスカルをチェイサーにしてしまうデュークの酒豪ぶりには、どんな大酒家も歯が立たないはず。

Text: Orla Pentelow

元記事で読む
の記事をもっとみる